第4話 ユキの教育
第五位階下位
さて、一頻りの確認が終わったので、王都へ帰る前にあの子と話を付けておこう。
早速召喚する。
「『召喚吸血姫』」
魔法陣が現れ光を放ち、それが収まると、金髪ゴスロリの美少女が現れた。
少女はゆっくりと瞼を持ち上げ、そして——
「……ん?」
——土下座した。
「こ、殺しゃないでぇっ!」
「んん?」
「ぴっ!?」
◇
ガクガクと震え、涙を零して本気で怯えている少女から話を聞き出した。
その際に、『にゃんでもするかりゃ殺しゃないでくだしゃいぃー!』と懇願されたので、ついでに僕の話とテイム云々の話もしておいた。
指先を動かしただけでビクッと震える彼女から情報を聞き出すには苦労したが、上手くお話しする事で何とか聞き出せた。
どうやら一定以上の力があると、魔典内部から外の情報を取得する事が出来るらしい。
おそらくは白雪にも出来るのだろう。
そしてこの子は、僕がちょっと過激なお話しをしている所をピンポイントで目撃してしまったらしい。
『誰にも見られない様にしていたのに……どうしようかなぁ?』と、意図して口元だけを笑顔にして彼女を弄ったら、ガタガタと震えて粗相をしてしまった。うん、イヂメイクナイ。屋外でよかったよ。
ともあれ、しっかりと従ってくれる様なので問題無い。問題があるとすれば、彼女の存在だろう。
何せ彼女は吸血姫。今の弱り切った王国なんて簡単に滅ぼせる連中の姫だ。
僕の配下として表に出すのは少々不味い。
ゼルニー何某の話によると、彼女は欠陥品らしい。
詳しく聞いた話を纏めると、どうやら彼女の姉が特別優秀だったのが欠陥と言われる事になった理由の様だ。
姉は王に期待され育てられ、妹は箱入りで何不自由なく放置されていた。
その結果、元々離れていた実力に更に差が付いて、欠陥品と陰口を叩かれる様になったのだろう。
話から推測して、ヴァンディワル何某がこの子を取り戻す為に大軍を率いてくるとは思えないが、態々災厄の引き金を引く様な真似をする必要は無い。
この子には悪いが、本の中に引きこもっていて貰おう。
差し当たってやる事は……彼女に名前をつけようか。
…………うむ、レミアと呼ぼう。
「取り敢えず——」
「わんわん」
「あぁ、それ、もう良いから」
「は、はい! ご、ご褒美、ご褒美ください!」
「はいはい、よしよーし。お前の名前は今日からレミアだ。よしよーし」
「はひっ、私の名前はレミアでしゅ! ……く……ぅん……♪」
……うむ、我ながら完璧なお話しだったな。
「〜♪ 〜〜! 〜〜〜♪」
「流石は麗しの我が君……」
「……我が主は随分と……こう言う事に手慣れているのだな」
「俺ぁ初めて見たな、魔法無しでの洗の——」
——さて、やる事も済んだし、そろそろ王都に帰るとしようか。
配下の新参組とワンワン軍団に、見本の収納袋の残り二つを持たせ、魔物の駆逐の為に放っておく。
時間が止まる訳では無いので、明日の朝にでも回収に向かおう。
◇
「む?」
王都へと戻る最中、西門前に爺様とザイエがいるのが見えた。
二人は此方に気付いている様で、軽く手を振って来たので、それに手を振り返しながら近付いて行く。
「やぁ、爺様、ザイエ……どうしたの?」
「はぁ……どうしたもこうしたも無いぜ」
「ユキ、何があったのか話してくれるね?」
呆れた様に肩を竦めるザイエと、真剣な顔で僕を見詰める爺様。
……ふむ、あれの事かな?
だとすれば、話すのに吝かでは無い。
「うん、実は——」
図書館に向かいながら、斯く斯く然々説明する。
質問も答えられる範囲で答えたが、生憎と今回の件は幾ら僕でも分からない事の方が多い。
「——ふーん、負の欠片、ねぇ……厄介なもんが残ってやがるな」
「ふむ……取り敢えずユキ、お疲れ様。今日はゆっくり休みなさい」
図書館に着く頃には説明を終え、爺様に頭を撫でられた。そのまま二人は図書館の広間に行き、瞑想をし始める。
……成る程、確かに負の欠片があれ1つだけとは限らない。少しでも早く力を取り戻そうとするのは道理と言えるだろう。
取り敢えず今僕が出来る事は、知識を得てより早く強くなる事。
出来る事は出来るうちに、やれるだけやってしまおう。
その後は、寝る前迄に本をコピーして読み続け、寝る時間の直前にアンデット組とティアに連絡した。
何やらティアの様子がおかしかったが、生き死にがどうと言った気配でも無い。
明日で良いだろう。
僕は寝る。




