第16話 ゴブリン殲滅戦
第四位階上位
——足手纏いは帰ってね。
と、言う言葉をオブラートに何重にも包み込んで伝えながら、おまけで怪我人を下級ポーションで回復させてあげて帰還させた。
御武運を! と言って立ち去った兵士さん達。
どうやら、ティアが直々に見出した侍女が物凄く強かった。
と言う事がこの信頼に繋がっているらしい。
王宮では何故か隔離されている様だが、民からの信頼は厚いらしい。
思えば、僕が王城に連れて行かれた時、兵士や騎士さん達は僕を素通りさせていた。それもまた信頼なのだろう。
人払いは済ませたので、此処からは殲滅戦に移ろうと思う。
つい今しがた遭遇したゴブリン集団は、殆どが上位種であった。
これが意味する所は、探索隊がゴブリンに与えたのは武具や兵糧だけでは無い。と言う事だろう、探索隊を退け、レベルが上がり進化したと考えるのが妥当か。
更に、今の兵士さん達の戦力から分かる通り、もしゴブリン達が王都まで進行して来たら、厳しいと言わざるを得ない。
敵の規模は未知数だが、少なくとも百人以上の完全武装した人間が、なす術も無く負ける程の規模である事は間違い無い。
プレイヤーが参戦するなら勝てるかも知れないが、王都の常駐戦力ではお話しにならないだろう。
とりあえず配下の皆を召喚し、取りこぼしの無い様に潰して行こう。
この森は北と南を霧の森に囲まれ、また、森の密度も霧の森と比べると低い。
この森を三分割し、ウルルを筆頭にした新参アニマルズとワンワン軍団、アイとレイエル、僕とその他、でローラー作戦でいく。
空を飛べる鷲君とミルちゃんは、取りこぼしが出たり、万が一苦戦する様な所があったら其処の増援に行く様に命令した。勿論、うさーず爆撃隊は鷲君が持っている。
では、パパッと終わらせようか。
◇
ゴブリンを、上位種だろうと更に上であろうと駆逐しながら進む事暫く。
森を抜け、だだっ広い草原へ辿り着いた。
遠くには高い崖があり、洞窟らしき物が見える。
その草原では
今正に——
——戦争が繰り広げられていた。
妖精魔法使い LV32 状態:疲労
呪われし妖精騎士 LV65 状態:負《小》
ゴブリンジェネラル LV48 状態:
ゴブリンキング亜種 LV82 状態:迷宮化《小》
妖精女王 LV? 状態:疲労
? LV?
目に付く物を粗方鑑定して見た所、多少状況が理解出来た。
其処にある集団は二つ。
先ず、妖精軍は南側に陣を敷き、北側から襲い来るゴブリン軍と戦っている。
ゴブリン達に混じって黒い妖精がゴブリン軍を援護しており、それらの猛攻を1人の女性が単独で防ぎ続けている。
妖精達はかなりミニマムなサイズなので、草原を埋め尽くす程の数のゴブリン軍と比べると、やたらと少なく見える。
ざっと数えて10分の1以下、サイズ差で分かりにくいが、もっと少ないかも知れない。
そんな妖精達は、魔法を放ち続けてゴブリンを打ち減らしているものの、数の差は如何ともし難く多勢に無勢。
妖精達を守っている女性は、糸の様な物を草原一帯に張り巡らせてバリケードを作り、黒い妖精の魔法を防ぎながらゴブリンをバラバラに斬殺、更に黒い妖精達を糸で捕縛している。
状況から考えて、この黒い妖精がネックだ。
一番強いであろう糸使いのお姉さんが黒い妖精達を殺さずに捕獲している事から、黒い妖精がいるせいでゴブリンを一気に殲滅出来ないのだろう。
そうなると僕が取るべき行動は一つ、配下を率いて北側へ回り込みゴブリン軍を挟撃する。
ゴブリン軍を中央へ押し固めた所で、東の森に潜ませたアイで一気に呑み込む。
と言う訳で、バレずに北側へ回り込む必要があるのだが……どうやら特に心配は必要無いらしい。
両軍共に戦いに夢中であり、此方に気付いているのは糸使いのお姉さんと妖精女王さんだけである。
その2人に分かる様にウインクをして森の中へ戻り、続いて配下に命令を出して森の北側へと集結させた。
ゴブリン軍は、北側から敵が来るとは全く想像すらしていないのか、背後を誰も見向きすらしていない。
音を立てない様に気を付けながら素早く移動し、敵の背後を取った。
後は攻め過ぎ無い様に気を付けてゴブリン軍をサンドするだけである。
僕は声を潜め、全員に命令した。
「『命令』全軍突撃」
勿論、ノーライフは起動済みである。




