第15話 謎の戦士 うさレンジャー現る
※70万PV達成
第四位階上位
森を駆け抜ける事数分、フィールド制限があった場所から少し奥へ入った所に兵士さん達は居た。
四方八方を上位種ゴブリンの群れに囲まれ、全体的に満身創痍。ボロボロである。
大きな傷こそ見当たらないものの、激しい戦闘の後だからか皆疲弊している。
では、何故誰も倒れて居ないのかと言うと……六人の人型がゴブリンから兵士さん達を守っているからである。
その人型達は、身長が僕と同じくらい、体型も僕と同じくらい、髪の長さも僕と同じくらい。
顔は起伏があって目の場所には結晶っぽい物が付いているが、多分目を少しだけ再現した物だろう。
頭の天辺にはうさぎの耳らしき突起物が付いており、色はそれぞれ、赤、青、緑、黄、黒、白、の六色……どう見ても6人揃ってうさレンジャーである。
炎を纏った赤い人型は、手の先が肥大化、と言うよりもクローの様な物を装備しているらしく、4本の巨大な炎の鉤爪が、盾や武器によるガードなんて御構い無しにゴブリンを焼き切っている。
どうやら炎を上手くコントロール出来ているらしく、木や草は表面こそ焦げているものの燃え上がる様子は見えない。
水を纏った青い人型は、周囲に拳大の水球を五つ浮かべ、四方八方に水の弾丸を飛ばしてゴブリンを仕留めている。
その他に、五つの盾の様な物が兵士さん達の周りに浮かんでいて、時折射かけられるゴブリンの矢を防いでいた。
風の様な緑の粒子を纏った緑の人型は、両手にそれぞれ剣を持ち、一振り毎に風の刃を飛ばしている様だ。
残念ながら剣術の心得は全く無い様で、剣を振るう様はロリな見た目と相まって不恰好だが、其処から飛ばされる風の刃はゴブリンを纏めて引き裂いている凶悪な代物だ。
土煙や土塊を纏った黄の人型は、重そうな大剣を振り回してゴブリンを薙ぎ払っている。
接近は危険と判断してか矢を射かけられているが、全て鎧らしき土塊に弾かれている。
この4人が兵士さん達を守っており、後の2人は遊撃。黒の靄を纏う黒い人型と白の靄を纏う白い人型はそれぞれ直剣を持ってゴブリンの中を縦横無尽に辻斬りしている。
それだけの猛威を受けてゴブリン達が怯えて逃げようとする所へ、一際に巨大な上位種ゴブリンが怒声を上げて纏め上げて突撃させている。
前門のうさレンジャー。後門の鬼上司。最早ゴブリン達は恐慌状態に陥り、遮二無二に剣を振り回す者がいたり、後頭部に矢を受けて絶命する者がいたりと、もはや勝負はついたと言っても過言では無いだろう。
それでも、取りこぼしが無い様にアイへ命令する。
現在、ゴブリン達は兵士さん達を囲む様に展開しており、形はドーナッツ状。アイにはそれを更に囲むドーナッツになって貰い、後は穴を収縮させて行くだけである。
徐々に小さくなって行くドーナッツは中の人から見れば、逃げ場の無い中押し潰そうと迫る壁に見える事だろう。
と言う訳で実践。中で戦っているうさレンジャーはどう考えてもうさーずなので、図らずも背水の陣となったゴブリン達が兵士さん達に襲い掛からない様に徹底して守護する様に命令した。
「な、なんだあれは!?」
「か、囲まれてるぞ!」
「クソがっ! どんどん迫って来てやがる!!」
即座に状況に気付いた隊長らしき人と冒険者の人が叫び、大慌てしながらも無意味に武器を構えている。
「ギャギャ!」
「ギャ? ギャァァアアーー!!?」
「ギ、ギャギーーゴボゴボ!?」
ゴブリン達はと言うと、アイに接触して腕が溶け悲鳴を上げてのたうち回る者や、飲み込まれて必死に藻掻きながら仲間へ手を伸ばし窒息死する者が現れ、狂乱になりながら穴の真ん中へ向かってうさレンジャーに撫で斬りにされている。
ゴブリンの指揮官と思わしき個体は、最もうさレンジャーから遠い最外殻に居た為、背後から忍び寄るアイに気付かず声を上げる事もなく窒息死した。
消化と窒息を上手く使い分けてゴブリンを虐殺するアイは多分……Sだ。
ゴブリンの惨状を見ている兵士さん達は、命乞いをする者や、涙を流しながら神に祈る者等と様々で、戦意を保っているのは隊長さんとCランク冒険者の人達。
冒険者の内の男女2名は、剣を構えて迫り来る壁を見据えながら、愛の告白をして手を繋ぎ合った。
『生まれ変わっても一緒だよ』『うん……絶対だからね……!』と。
……いや、ごめん……一言声を掛けてからやれば良かったかな……いや、寧ろ僕が愛のキューピッドだったと考えるべきだろう。流石僕! 気付かない振りをすれば大丈夫。
迫る壁は、全てのゴブリンを飲み込んでも止まらず、うさレンジャーと兵士さん達をも飲み込んだ。
勿論息が出来る仕様で、である。
窒息させて殺したゴブリン達は全てインベントリへ仕舞われている。側から見ると一瞬で溶かされた様にも見えるが……それも兵士さん達の絶望の原因ではなかろうか?
まぁそもそも考えてみれば僕は彼等に対して責任を取る立場では無いので、気にしなくて良いだろう。
ともあれ、アイには兵士さん達を抱えたまま僕の方へ来る様に命令する。
人型状態からうさぎ型に戻ったチビうさちゃん達は、アイの中をスィーと泳いで兵士さん達の隙間を縫って僕の方へと飛び出した。
スチャッと整列するうさーず。その顔は心なしか誇らしげに見える。可愛い。
アイには、小型化して全員を吐き出した後、うさーずの横に並ぶ様に命令した。
「あいたっ」
「うわ! え?」
「な、なんだ! どうなった!?」
「嘘……生きてる……」
「た、助かったのか!?」
それらの声を無視して、整列した7匹を一撫でした。続いて声を掛ける。
「御苦労、貴方達のお陰で死者を出さずに済みました、ゆっくりと休みなさい」
そう言って、7匹を送還。
演出はバッチリである。
「おぉ! あのお方は……!」
「な、何で子供がこんな所に」
「さっきのは一体……? あの狼は……!?」
「従士様だ! 従士様が助けてくれたぞっ!」
さて、一定の信頼はある様だし、ささっとお帰り願おうか。




