第30話 星辰炉を作ろう
第八位階下位
ベロベロなんて擬音では到底言い表せない程にべちょべちょにされて何度か口に含まれたりもした後、ウルル達の修行と休憩を終えて帰還した。
次の休憩所までのおよそ1時間半、取り掛かったのは新アイテムの製造である。
と言う訳で、僕もシャルロッテに倣い、神殿を建立する事とした。
材料は、大量に確保してある神霊金属と、追加で確保した大精霊金属。
コレにより作られた6属性の巨大な神殿は、純結晶を生産する施設である。
純結晶はエネルギー量こそ大した物では無いが、何より質が極めて高い代物。
コレを生産するには、最低でもレベル600前後の壁である霊験門を越えている必要があり、尚且つ属性適性が極めて高く、神気を受け止められる器が必要である。
僕は複数を同時に受け止めるのは少々難儀するが、どの属性でもよっぽど適性が無い物以外は純結晶を生成する事が出来る。
だが、アレフ君は氷の純結晶を作れないし、白雪は火の純結晶を作る事は出来ない。
まさしく、神性の欠片と言うに相応しいレアアイテムである。
今回作ったのが、そんな貴重なアイテムを作る為の工場、神殿。
大精霊金属により魔力の収集と保存、属性変換を行い、神霊金属によってそれを限界まで練磨させ、少し鍛えた神霊金属で純結晶を生成する。
高質のエネルギーを運用する為負荷も大きく、場合によっては破損の恐れもある為、全体的に僅かに鍛えたので消耗は激しいが、良い物を作れた。
完成した神殿は、精霊神教の各浮遊都市の中枢に埋め込み、都市全体を若干アップデートして、大気中の魔力をより吸収する様にした。
ルベリオン王国周辺の魔力濃度が若干低下する事が見込まれるが、そもそも迷宮と地脈の活性により周辺の魔力濃度は徐々に高まっていたので問題は無い、寧ろ使っていった方が良いだろう。
コレにより、精霊神教は多少強化される。
完璧なソレでは無いが、これも一応は星辰炉。将来性と言う点で期待は大きい。
精霊神教は六神+3と神域の番兵と精髄の使徒、カーレスタの合計22名+α程度の戦力しかないが、リソースを上手く分配して+αの方を1人として数えられる様に鍛えて行って欲しい。
なに、高質エネルギーと言うのは時にその数百倍の凡百エネルギーよりも高い滋養を持つので、基礎トレーニングをみっちり熟した者には素晴らしいレベリングフードとなるだろう。
……僕の血を暴飲しているサンディアが異常にレベルを上げて行っているのがその証明である。
飛び散った血を啜るのを良しとしたのは僕だが、このままだと他の子達に骨の髄までしゃぶり尽くされそうなので、どうにかエネルギーを分配しなければならない。
◇
と言う訳で、主に我慢が効かなさそうな順にいろんな子達のお相手を務めている訳である。
ペルセポネにドルス達や他の悪魔達を迎合させて世話をしたり、他の悪魔ことリムやルムを強化して世話をしたり、シスターアルメリアに甘やかさせてあげたり、シャルロッテを踏んだり、クラウを撫でたり、サンディアを戦わせたり、狐達を戦わせたり、白雪を戦わせたり、レイエルを鍛えたり、楽園のリアム達を労ったり、精霊神教の子達を取り敢えず撫で回したり。
そして今は、休憩所でアトラのお相手だ。
おまけでミスティもいる。
2人は同期なのとミスティが極めて無害なのもあり、アトラ的には居ても問題無いと言う認識の様である。
そんなアトラと、指を絡める。
星辰炉の神殿を6つも作った後なのでかなり眠いが、手をにぎにぎするぐらいの事は出来るので、されるがままである。
「……ユキ、寝てはいけませんよ」
サマーベッドに横になる僕に馬乗りになって、両手を押さえ付ける様にしてにぎにぎするアトラが、何か言っている。
「ネテナイ」
寝てはいない。本当だ。頭の上でミスティがビチビチしている。寝てはないない。寝てない。ねてぬい。
「……Zzz」
「……寝ると言う事は何をしても良いと言う事ですよね」
「手をちぎるまでナラヨシ」
そんな言葉を残し、僕は眠りに着いた。
明けた翌朝。
目を覚ますと、昨日と変わらぬ位置にアトラがいた。
一晩中手をにぎにぎしていたらしい。
ちぎられた様子は無かったが、混じり合った魔力は境界を無くし、僕の手とアトラの手が歪に癒着していた。
「ユキ、起きましたね、ふふ」
満足気に手を蠢かせた彼女に、僕は肩を竦めて見せ、腕をちぎった。
まぁ取り敢えず動き辛いからね。ちょっと特殊性癖過ぎて僕には理解出来ないと言うのもあるが。
切り離した僕の腕を、アトラはじわじわ見せ付ける様にして吸収した。
それなりに僕の因子も吸った事だろう。褒美としては十分な筈だ。
一方ミスティは、僕の中に入っていた。
まぁ、精霊みたいな物だし、然して問題は無い。
切った腕先からにゅるりと追い出し、再生させた手で頭を撫でた。
さて、じゃあ鍛えた2人の実力を見せて貰おうか。
◇
島全体を覆う様に、ミスティが蔓延する。
英雄達は直ちにミスティを払うべく攻撃行動を開始するも、蔓延した時点で既に遅いのだ。
十分な情報を獲得したアトラは、アグリールとミネロラ、魍魎丸、6属性の手を派遣して、厄介な強者3人を潰させると同時に、その他の300の手で雑兵を蹴散らし、本体は後衛の英雄5体を瞬く間に殲滅、追加で2体の厄介な剣士を始末し、休憩に入った。
未強化の英雄ではこんな物か。
アトラ配下の9体の幹部は、過剰戦力により瞬く間にトップ3体を始末後、追加で6体の英雄を狩り、僅かな余力を残して撤退。
他300の手達は、残る8体の英雄、エランとゲッシュ5体とゼンとゼムを排除し、島の7割の雑兵を駆除して帰還。
そして最後に、残された門番や小隊長やはぐれ、砦の将や近衛等の、ちょっと強めな雑兵を前に、なんか面倒なのだけ押し付けられたのでは? と2頭身ボディで首を傾げたミスティが、その力を遺憾なく発揮し殲滅した。
蜃やニベルと言う模範解答から学んだミスティは、強化したミスティックドラドラを変幻自在に出現させ、ちょっと強い雑魚に一切の抵抗を許さず、爆散させたのだった。
まぁ、ね……未強化英雄なんて今更こんな物だ。
流石にアガーラ程の相手なら20体いれば十分な脅威だが、特に獣型のゲッシュなんかは、総合的には下手をしたらアガーラの半分程度の戦力にしかならないのである。
奥の手である千手巨神を切る程の相手では無かった。
残った2日は、資源回収とその錬磨、アトラ達の徹底的な修行、ミスティの術式研究や運用理論の突き詰めに費やした。




