第29話 楽園がアップデート
第八位階下位
楽園産の素材をふんだんに使い、アダムス達用のレベル300相当程度の武具を量産していると、程なくしてアム達が帰って来た。
持って来たのは、2枚のカード。
「……報告する」
膝を着き、真面目に話し始めたアムの報告を聞く。
先ず、門の道中で現れた敵について。
なんでも、ベートとギーメルを名乗る、アダムカドモン程の戦闘力の暗い影と戦闘になったとの事。
コレらを撃破した先には、アレフの時と同じ様に、新たな世界が広がっていたらしい。
差し出されたカードは、0のカードと同じ性能のアイテムだった。
1のカード 品質S レア度8 耐久力S
備考:才覚と想像の象徴。資格ある者に神の祝福を与える。
2のカード 品質S レア度8 耐久力S
備考:知性と直感の象徴。資格ある者に神の祝福を与える。
うちには230人しかいないので、資格ある者、固有因子が適合する者がいるかは不明だが、アムならば固有因子を識別して資格ある者を探し出す事は容易い筈だ。
戦力増加は早い方が良いし、本日中にも適合者を探して貰うのが良いだろう。
「門の報告は以上」
「うむ、ご苦労様」
「……続けて、門を開いた事により発生した異変を報告する」
「ふむ」
まぁ、門が開いた事で、流入するエネルギーは増加しただろうが、生産した核の強度を考えると特に異変は起きていないと思う。
「……先ず……この世界の何処かに……良さげな薬草と泉とりんごと牛と蛇が……出る予定だった」
「成る程」
それなら取り敢えず生成命令を通して良さげなモノを生産して貰い、品質を見て判断しようか。
リュカとアンジュを向かわせて、新たな生産品を持って来させる。
その間に、アムの報告の続きを聞いた。
「……後は、出現する魔物の力が上がる」
「処理出来る範疇かな?」
「……過剰」
不足よりは良いだろう。
「……それともうそろそろ神気が必要……かもしれない予感」
「属性とかは?」
「……この世界の民の信仰かもしれない」
「……」
……それ先に言って? いやネタバレはダメなのかもしれないが。
然らば、神域を盛り立てたり、それとは別の祈りの場を整えたりする必要があるだろう。
民はたかが230名とは言え、質が高いので得られる信仰も多い筈だ。
「……取り急ぎ神話を形成する必要があるか」
「……祈りの時間を設けさせるのは有効。礼拝堂も有効。神像を等身大で作るべき。サイズは道具が無いから手で測る。服を脱ぐべき」
「等身大じゃなくて良いんじゃないかな」
捲し立てるアムにやんわり言うと、アムは十分な間を置いて、首をゆっくり大きく振った。
「はぁ……これは芸術。大事な事。服は脱ぐべき」
「じゃあ僕が作るから飾っといて」
「…………現地人である私が作るべき」
「はい、出来た」
「………………現地人である私が作るべき」
「これ見て作ってね」
「……………………承知」
仏頂面やめな? あと石像に抱き付くのもやめな? 力入れようとするのもやめな?
仕方ないので、石像へうっかり破壊工作を仕掛けようとしているアムに手を広げた。
「……良い判断」
抱き着いて来たアムを締め上げた。
やりたい放題やめてね。
◇
その後、それはそれとしてアムを労い、ついでに物欲しそうに見ていたエイミーも労い、帰って来たリュカを労い、甘え下手な所のあるアンジュを労った。
リュカ達が持って来た新たな特産品は、どれもおおよそレベル100クラスの、上級ポーションに直ぐ使える様な素材だった。
薬草は、白い釣鐘型の花で、蜜、花粉、花弁の順で薬効が高い。
あまり大きな花では無いが、群生するので数は取れる。
蜜蜂の導入を検討した。
りんごは、金色、もとい黄色のひめりんごだった。
甘くはあるがりんご。しかし若干の若返り効果がある為、薬の材料として品種改良して行くのが良いだろう。
次に、泉。
これは、魔力を多分に含み、聖属性を内包する聖水の一種であった。
コンコンと湧き出る物であり、飲料水として使うには十分な量なので、おいしいみずとして3食提供し、残りは全てポーション等の薬材として投入する事とした。
続けて牛だが……戦闘力の低いレベル100程度の乳牛が10頭湧いた。
取れる牛乳は成長補助と健康維持に効果的なので、お子様と老人を中心に3食提供して行くのが良いだろう。
最後に蛇だが……敵として定期的に青味がかった黒い大蛇が出現する様になった。
レベルは100とそう強くない個体だったが、アムに曰く不死身の蛇であり、倒されても同じ個体がリスポーンし、レベルも上がって行くとの事。
現在は蠱毒の様相を示す処理場で他の魔物を襲い、レベルをじんわり上げている。
折角のレア個体なので、アムに捕獲させる事とした。
それら細かい処理を終えた所で、アム達には新たな3つのエリアを安全重視で探索する様に伝え、今回の所は分体を置いて楽園を去る事とした。
去り際にアムが意味深に、中央の門の世界は私に任せると良い事がある……かも? と言っていたので、そこはアムに特別に頼んでおいた。
内訳は、左右がリュカとアンジュ、中央がアムとエイミーだ。
エイミーは庭以外では1人にさせる事は出来ないのである。
万が一の防衛力が無いので、アダムカドモンレベルの外敵が侵入して来たら、鍛えられたアダムス達が命を散らしながら撃退する事になるだろう。
まぁ、その時は僕本体に直ぐに連絡が行き、神域をぶち壊して外敵をすり潰す事になるだろうが。
◇
楽園での諸業務を終え、次に向かったのは休憩所。
ウルルの狼軍団による徹底的な蹂躙を援護し、慣れた作業で英雄達を格上げ&増殖、もふもふの激流を撫で捌き、涎の海に沈んだ。
かつてはリターニァとアガーラの連撃に沈んだウルルは、圧倒的な速度と技量でもって2人の連撃を柳に風と捌いて見せ、その成長をコレでもかと見せ付けた。
最強格の英雄2体の全てを出し切らせて倒したと言うのに疲れた様子を見せないウルル、そのアルティメットスタミナを心の赴くままに使い、ウルルは一晩中僕をベロベロした。
僕は1日に2度、涎の海に沈んだのだった。




