第28話 楽園を魔改造
第八位階下位
休憩から帰還し、万全な状態でレイエルの杖を強化した後、次に向かったのは、楽園。
大した能力も無い分体を置き、行なったのは失楽園の開拓と開発だ。
手始めに行なったのは、エリアの把握。
楽園がどの程度の規模なのかを調べた。
それによると、概ね上位環境迷宮と同程度である事が判明した。
ドーム状の結界が張られており、その先は果てない濃霧に覆われているのだとか。
そんな楽園は規模としてはそこそこ広いと言って良いが、楽園と言うには箱庭に過ぎる規模である。
また、その過程で邪魔になる山の部族と湖の部族を迎合し、総合的な頭数はアム達を除けば230名となった。
尚、まともに運用できるのは200名である。
続けて、資源の確保。
人的資源は、例によって200。後はアム達4名。
楽園の開拓および開発は、アム達4人で十分に回して行ける。
鉱物資源は、迷宮にある自動で湧いてくる鉱脈とほぼ同じ物があちこちに設置されていた。
生産速度は極めて遅いが、湧きスポットがそれなりにある為、大規模運用に問題はない。
食料資源は、野菜や薬草が各地にリポップする仕様、家畜等はランダムな湧き穴からリポップ、果樹等もフィールド全体にリポップする仕様だ。
湧き条件は簡単で、何らかの理由で対象が喪失された時、湧き上限までリポップする。
野菜や薬草なら加工や補食された時、家畜なら処理された時、果樹は伐採された時にリポップする。
確保出来た食料資源の種類は、野菜や穀物ならばじゃがいもらしき物とトマトらしき物とナスらしき物に、かぼちゃっぽい物とメロンらしき瓜と大根に似た根菜に何らかの豆と粟。
薬草は多肉の物と葉が大きい物と根が大きい物と水性植物。効能はまぁ、大した物では無い。
果樹は、小さなりんごの様な物に、やたらと大きなザクロの様な物、やや小振りなイチジクの様な物が採れた。桃が無いのは大変遺憾である。
家畜は、牛、豚、鶏、山羊、羊、ザリガニ、魚の7種が最終的に確認出来た。
また、コレらの種等により増加した分は、湧き上限に関与せず、永遠に増加して行く。
その他で確認出来た物は、水源として森には泉、山には小川、その下流としての湖の3箇所。
石材にリポップは無いが、木材は伐採による個体数の減少でリポップが発生する。
最後に、外敵だが……レベル100前後の複数種がリポップ上限まで発生する事が分かった。
上限はちょうど100に設定されており、1日経過後にリポップする。
資源量としてはそこそこである。
それでは、その運用の確認だ。
取り急ぎ全ての人的資源を酷使し、エリアの全資源回収を行なった後、このエリアにエネルギーを供給している通路を捜索した。
判明したのは、十中八九と言うべきか、4箇所。
一つは、僕がいる王城。
神域とも皆が言うこの場所から、そこそこの量のエネルギーが楽園に注ぎ込まれていた。
供給源は、おそらくだが下位から中位までの環境迷宮だと考えられる。
そして残りの3つが、アム達が発見した門だ。
アダムカドモン2体程度の戦力を送り込むべきと進言されているそこから、これまたそこそこの量のエネルギーが流れ込み、また同時にリポップ命令も送られている事が分かった。
コレは、その先の果てに、迷宮核の様なナニカが存在している事を表している。
と言う訳で、アム達に命じて現地の資源を大量に消費、門を覆う大規模術式を構築し、命令を上書きする支配核を設置して、供給されるエネルギーを全て有効活用させて貰う事にした。
全てを支配するのは消耗が大きくなるので、資源のリポップ地点の変更に留め、自動で生える植林場や鉱山、種毎の原生植物農場や牧場……と言うか屠殺場を設置、家畜も魔物も屠殺出来る様にした。
コレにより脅威が完全消滅したので200人のハイレベル人材を全て開拓に運用、山を切り崩し、湖を埋め立て、楽園を平地化した。
それから、各種加工場や品種改良の研究所、貯蔵庫、他各種訓練場等を建設し、取り敢えずの開発を終えた。
特段の成果物は、植物魔法により急速に品種改良を行ない、強化した薬草と果実を用いた、若返りの薬である。
若返りと言っても大した事は無いが、現状無理の無い範囲で用意出来る効能としては、一錠でおおよそ10日程度全盛期に近付く薬である。
老いに効くこの薬を、労働出来ない老人を最優先に毎食投与し、動ける者でも老いが見え始める者にも少しずつ投与して行き、労働力として十分に利用出来る位に若返ったら、後は成長薬を赤子や子供に投与する事を考える。
現状では不要だが、今後次第では選択肢として用意しておいて良いだろう。
他は、魔物の中でも有用な者を使役したくらい。
そんな訳で、十分な開拓と開発を終えたアム達には、取り敢えず全員で門の一つへ向かう様に命じた。
◇
程なくして無事帰還したアム達は、一つのアイテムと情報を持ち帰った。
開かれた門の先には道があり、その道中でアレフを名乗る黒い影と遭遇、戦闘になる。
アダムカドモン1人分の戦闘力のそれをギタギタにすると、1枚のカードを残して消滅、その道の先には、新たな世界が広がっていたのだとか。
まぁ、門だし新たな世界が広がっているのは然もありなん。
肝心のその世界は、此方の世界同様に森や山が広がっている様だったとの事。
「ふむ……ご苦労様」
「……労いを要求」
頭を差し出しつつそう言うアムを撫で、同じく差し出したエイミーも撫で、おまけでリュカとアンジュも撫で、改めて差し出されたカードを見た。
0のカード 品質S レア度8 耐久力S
備考:始まりと希望の象徴。資格ある者に神の祝福を与える。
白地に金で縁取られた0とだけ書かれたこのカードは、見たところどうやら、一定の固有因子を持つ者1人をアダムカドモンに進化させる力を持ったカードらしい。
星珠並みの莫大なエネルギーを秘め、神性によって保護されている強力な進化アイテムだ。
まぁ、保護されていると言っても、僕ならば内容を書き換える事など容易だが……まぁ楽園は喫緊の問題も無いし、長い目でゆったり見れば良いだろう。
取り急ぎやるべきは、他の門の攻略とその先の世界の支配。
差し当たって最初に取り組むのは、各門の攻略だ。
「……他の門にも同程度の敵が?」
「……黙秘」
口の前でバッテンを作るアム。
リュカはウインクしながら同じ様にバッテンを作り、アンジュは微笑みながら同じ様にバッテンを作った。
お口が緩そうなエイミーはと言うと、髪の毛をばさっとやって顔を隠した。
まぁ、良かろう。
「それじゃあ2人でペアを作り、十分な戦力で門の攻略に当たる様に」
そう命令すると、4人はさっと跪き、頭を垂れた。
「……仰せのままに、我が主」
代表のアムが応え、立ち去る4人を見送った。
……10分くらいしたら帰って来るだろうし、何か作りながら待つとしよう。




