第17話 夜猫神
第八位階下位
「ゴロゴロ……」
猫を撫でていたら塵になって消えた。
そして新たに塔屋の上に気配が現れた。
「……」
「……」
伏せて頭の上半分と猫耳を晒して此方を見下ろしているのは、猫獣人らしき少女。
夜猫神の残影 LV300
姿形はよく目視出来ないが、後ろの方で5本の尻尾がゆらゆらと揺れている。
彼女は暫し僕と視線を合わせると、不意に立ち上がった。
改めて、装備を目視する。
髪留めは特に無く、肩までの黒髪。頭部に装備は見られず、満月の様な金眼が此方を見下ろしている。
服は所謂和ロリと言う物で、黒を基調として月や星をあしらったドレス。効果も夜と星々から力を得る物の様だ。
立ち上がった彼女は、カッと口を開く。
「……なんにゃ! 何見てるにゃ! あちしに用があるなら口で言うにゃ!」
「……」
口で言うなと言う事なので、両手を広げた。
「ごろにゃん!」
ぴょいーんと飛び掛かって抱き付いて来た猫を撫でる。
「ゴロゴロ」
「……」
うーん、中身同じ。
◇
猫を撫でていたら塵になって消えた。
闇に分解され、あるべき所に帰っているのだ。
そんな事を思いつつ見上げた塔屋には、黒猫の美女が立っていた。
わりかし派手な月と星をあしらった和装、長い髪には簪が差し込まれ、金細工が月光を反射する。
まるで夜空に輝く黄金の月を切り取った様な黒と金細工の煙管から、僅かに煙が天に昇り、切れ長の瞳が静かに流れて僕を見下ろした。
先の美少女と同一人物とは思えない、研ぎ澄まされた刃の如き気配。
夜猫神の影 LV780
2本の尾が月光を受け、揺らめく影が僕の頬を撫でる。
そうかと思った次の瞬間には、黒猫は僕の背後にいた。
ぽふっと大きめのクッションに抱かれ、頭を撫でられ、2本の尾が足に絡み付く。
今のは影をマーキングした転移術だろうが、少し不思議な魔力の動きをしていたな。
「お初にお目見え申しいす」
しっとり張り付く様な魅了を纏い、黒猫は僕に囁いた。
「今宵はわっちがお相手致しんしょう」
そう言いつつ、黒猫は僕へ煙管を渡す。
それなりに歴史あるアイテムのレプリカの様。燃えているのは少々の薬草とハーブで、爽やかな香りが漂っていた。
「僕タバコは吸わないけど」
「……」
表情を変えずに僕を見下ろす黒猫に煙管を返すと、黒猫はするりと僕から離れた。
ほんの一歩の距離で、黒猫は煙管に口を付け、月を見上げる。
ふいっと横目で僕を見て、肺いっぱいに煙を吸った。
「……」
「……」
僅かな沈黙。彼女はゆるりと僕へ振り返ると、ふーっと煙を吹き掛けて来た。
甘く、爽やかな香りが僕を包み込む。
「……」
「……それで、わっちのお相手はどなたでありんしょう」
少しの沈黙の後、黒猫はそっぽを向いてそう問うた。
気を引きたい猫かな?
取り敢えず猫を背後からキュッと抱き締め、腰に巻き付いて来る尻尾を感じながら頭を撫で回してやった。
◇
さて、この黒猫、何故か甘えただが、正真正銘神級の武人である。
義体スペックは780とそれなりに高めであり、防具も中々の物。特に強力なのは腰に履いた刀だ。
月下星霜・レプリカ 品質S レア度8 耐久力SS
備考:神霊金属月心を用いて作られた刀のレプリカ。
元々の黒猫の性能やこの刀の力により、金月の光を一身に受ければそのスペックは850相当に至るだろう。
準亜神級の戦力である。
戦闘スタイルは剣士系の武人なのは間違いないが、どうもそれだけではなさそうだ
相手は、同じ黒猫なのでレイーニャを入れたい所だが、それだけでは正直彼女の足元にも及ばないだろう。
下手をしたらシャルロッテでさえ足りない。
と言う訳で、同じタイプの剣士系の白羅を投入する。
白羅をベースにレイーニャを憑かせて能力の底上げをすれば何とか……後は黒霧に神権を降ろさせれば互角に持ち込めそうである。
「ゴロゴロ……」
「よしよし」
降ろす神権はさて、戦はマストとして、雷と刀かな。
後は……聖の神権も降ろしておこう。幸い白羅は聖獣としてそれなりに信仰を受けているし、雷は神聖と切っても切れない縁があるから、受容自体は可能だ。
確実に勝つにはこれでも不十分だろうが、五分五分かそれ以下くらいがちょうど良いのでこれで良いだろう。
それにしても……改めて黒猫をよく見ると、朱珠とかルーミラは良くも悪くも相当に黒猫の事を意識してたんだと分かる。
まぁ、端的に言えば性癖を捻じ曲げられた感じだ。
黒猫は強く、気高く、美しく、君臨し続けて来たのだろう。
「ナァーオォー! ゴロゴロ……」
「ごろにゃんごろにゃん」
いつまでごろにゃんしてれば良い?




