第13話 情勢
第四位階上位
混沌とした状況はアランが昼食を用意するまで続き、皆がスライムを堪能していた様だ。
僕も、いい加減暑くなって来た所だったので二人を押し退けて離脱した。
その際に、僕の小さくて細い指が二人のクッションに想定以上に沈み込んで、驚きの余りその指をじっと見詰めてしまった。
二人に抱き着かれるのは大体一年ぶり位になるが、その間に随分と成長した物だ。
……僕はここ5年余りでほんの僅かにしか成長していないのに。
恥ずかし気に、しかし嬉しげに、口角を上げて頰を赤く染める二人。
一体何が嬉しいのやら。
◇
早めの昼食を食べ終え、次はリアルでの昼食である。
それを終えてログインする頃には、王都近郊に到着している予定だ。
その後は、各自各行動に別れる事になっている。
僕は直ぐに地下水路の皆を迎えに行き、ゴブリンの殲滅に向かわなくてはならない。
「クローズゲート」
意識がブツリと途切れた。
目を覚ますと、直ぐに部屋を出てリビングに向かう。
今日の昼食はお弁当。
食べる量が少ない僕とアヤに合わせた小さめのサイズの弁当は、野菜に肉にとバランスが良く、タクがぐんぐん成長したのも頷けると言う物。
まぁ……僕とアヤは親が長く家を空ける事が多いので、よく宮代家にお世話になっていた。つまり、食べている物も量もタクとそう変わらなかったのである。
遺伝とは言え成長にここまで違いが生じているのが解せない。
……単純な疑問であり特にコンプレックスがある訳でも無いのだがね。
愛情溢れるお弁当を食べ終え、雑事をこなして直ぐにでもログイン出来る様に準備する。
後はいつも通り、タクメールを確認するだけである。
南側は特に問題無し。
畑にいる案山子が襲い掛かってくる原因が判明した他は何の進展も無いらしい。
北側も特に無し。
出現する魔物を調べて対策する為に、プレイヤー全体の動きとして魔物の情報を収集している様だ。
……死に戻り前提の突撃で。
本を解読して読めば直ぐにでもわかる事なのだけれどね……。
スキル屋の情報は、掲示板に貼られて誰にでも見れるらしい。
一部のプレイヤーが町中に置かれた立札とそれに関係する言語スキルを話題に出したが、アイテムボックスや鑑定なんかのスキルで掲示板が加速して流れてしまった様で、本が読まれる様になるにはもう少し時間がかかりそうだ。
東の浜は何も無く、今日は海が荒れているとの事。
一人のプレイヤーが銛を持って海に飛び込んだらしく、しかし海の魔物に敢え無く撃退されたのだとか。
今日は海が荒れていると言ったのはそのプレイヤーで、今も海に潜って水泳スキルと潜水スキルのレベリングをしているのだとか。
西の森は探索隊だが、物資の補給と報酬の分配を終え、今は王城で開かれるパーティーに参加する為に各パーティー毎に王都周辺の草原や砂浜で狩りをしているらしい。
今回の遠征は、最終的には壊滅したものの総合的な判断では成功となっている。
大量に手に入ったゴブリンの素材自体は、王都の大商店で二束三文で買い叩かれたらしいが、幾らかのゴブリン以外の魔物素材がそれなりの値段で売れて、大量に手に入った魔石も森の街で物資と交換して貰い、補填が効いたらしい。
余った分の魔石やお金は均等分配、レベルは少ない者でも2つ、多い者で4つ上がったらしく、概ね成功と相成った訳だ。
大剣士は、王城でのパーティーイベントが終わったら直ぐにもう一度探索隊を結成し、今度こそゴブリンの大群を退け西の森を攻略する。と宣言しているらしい。
それに対するタクの見立てによると、
次の探索隊は更に規模を増大し、本当に西の森を攻略出来るだろう。との事。
まぁ、当然と言えば当然だろう。
此処2日で探索隊に参加せずにレベルを上げていた者は良くて2レベル分。
獲物の取り合いも屡々見られ、数が稼げない分レベリングは頭打ち。
獲物を求めて北の森に行けば、出てくる魔物は猛獣であったり逃げ足が早かったりして討伐出来ない。
森の歩き方や獣の倒し方を誰かが教えなくては話にならないのだ。
対する探索隊は、西の森で霧の森に入らないギリギリまで部隊を展開し、ローラー作戦で森を攻略した。
その為、取り零しも少なく、逃げ足の速い獣型の魔物も仕留める事が出来たのだとか。
言うなれば、十分な成果を上げているのだ。
人が集まるのも道理と言えよう。
現在のレベル帯は、一般プレイヤーがレベル20以下、最前線組が24〜27。タク達が30〜32、となっている。
吸血鬼や悪魔の軍勢を相手にするならば些かどころか全く足りていないが、特に滞っていると言う訳でも無い。順調と言って差し支え無いだろう。
軍勢に対してプレイヤーで対抗出来るならそれが一番だが、明日にでも襲って来るかも知れない連中への備えとしてはあんまりにお粗末だ。
プレイヤー以外を鍛える道も模索しなければなるまい。
目下の問題はゴブリンの軍団。
早めに対応しないとね。
「オープンゲート」
意識がブツリと途切れる。




