第13話 vs.タマ&朱珠
第八位階下位
シンプルに強い2人に対し、此方の戦力5名も詳しく見ておく。
まずは睡蓮。
迷宮発生時に死した強力な狐達の新鮮な魂を吸った迷宮核が変質した物が彼女である。
それ故に、配下である狐火の生成とその使役に関しては本来の実力を十分に発揮可能で、溜め込まれたエネルギーを解放すればレベル630程度の狐火を9体生成可能だ。
しかし本体の戦闘力は低く、あまり期待出来る物では無い。
次に茉莉花。
睡蓮の迷宮に囚われた睡蓮達の娘である茉莉花。
長年迷宮の底に監禁され、自堕落に生きて来た彼女は、元の才能も大した事が無い凡夫である。
それでも昨今の修行と睡蓮の献身的なサポートで、一応才能の芽がある狐火系統の技術はそこそこ見れる。
此方もレベル630程度の狐火を9体生成可能だ。
続けて三狐。
物理特化で力こそパワーの菫。
炎特化で火力こそパワーの牡丹。
幻惑特化で安全第一の桔梗。
生成系である狐火の修行は程々にしかしておらず、その使い方はもっぱらタマと同じ、自己強化の補助具としての役割を担わせている。
レベル的にはざっくり580程度で、三狐の総合的な戦闘力はざっくり760程度。
決して誰も弱くは無いが、流石に神の眷属を相手にするには些か足りない。
それでも駒を配置するなら、睡蓮と茉莉花の戦闘力ではタマの戦闘速度に追い付けないので、必然的に三狐がタマ、母娘が朱珠と言う事になる。
即ち、レベル820に対するはレベル760が3体。レベル700クラス10体に対するはレベル700クラスが2体とレベル630が18体。
どこも、エネルギー量的に少し足りない。
そこを演算力でどうにかするのが皆の仕事である。
それでは会戦。
◇
「弥宵久遠」
朱珠が尾を扇状に広げ、妖しい笑みと共に口ずさむ。
尾を触媒に、込められた魔力は形を変え、宿る魂と混じり合い、形を成す。
現れたのは、朱色の炎で形作られた9匹の狐。
朱之火弥珠 LV700
火が灯ったと言うのに、却って夜が深まる。
闇が唸りを上げて、古都を包み込む。
黄金の月は緩やかに、夜を見下ろしていた。
対する睡蓮と茉莉花はこうだ。
帝狐火 LV630MAX
あまり独自性の込められていないスタンダードな上位狐火。
格落ち感が否めないが、うちの狐の中では最上位の狐火使いである。
最低でも義体の朱珠程度の力はあって欲しいんだけどねー?
朱珠と母娘が相対する一方、タマと三狐もまた静かに戦いの火蓋を切っていた。
「流転陽炎」
そう唱えるや、紅蓮の炎が立ち昇り、タマの体を包み込む。
現れたのは、揺らめく焔となって9つの紅蓮を背負うタマの姿。
一種の精霊化だ。
同じ火の霊体存在である狐火の援護をより早く、より強く受けやすくする効果がある。
一方うちの子達は、尾を通して発生させた狐火と繋がっていた。
まぁより早く、より強くと言ったが、実際には本体と狐火は同じ肉体を通し強い縁で結ばれている為、効果総量自体は大した事が無い。
だから精霊化しなくても十分だと言えばその通りだが……やがて神霊化するに当たり精霊化は必須なので、そういう点からもしっかりタマから学びとって欲しい。
強いてデメリットを言うなら、精霊体の維持はエネルギーの損耗が激しく、それを低減するには意志を指先まで行き届かせる必要があるので精神力の消耗も激しいと言う点。
しっかり休める目処が立っているなら何の問題も無い。
初動、朱珠と母娘が燃え盛る狐火を指揮して戦いを任せたのに対し、タマと三狐は激突した。
燃える紅蓮となったタマと正面からぶつかったのは、菫。
爆炎を伴うタマの連打、爪撃に正面から対峙し、一瞬の内に急速に押し負ける。
そこへ迫るは牡丹の豪火。
火そのものであるタマと競り合い、此方も急激に押し負ける。
菫が身体を張ってタマを足止めし、牡丹が火力を叩き付ける。
そんな一瞬の内に繰り広げられる激しい攻防の中、桔梗は何もしていないのかと言う、実は1番桔梗が消耗している。
タマの持つ陽炎の神性から生じる幻惑を看破し、タイムラグ無しで菫と牡丹の動きを調整、タマの火の侵食を誤魔化して菫を守り、牡丹の火がタマに奪われない様に騙くらかす。
桔梗の奮闘が戦場を辛うじて五分に保っていた。
やはりと言うか、タマは強力だ。
高い攻撃力を高い技術力で確実に打ち込んで来るし、僅かに認識をずらす程度の陽炎の神性は、範囲が狭い分強靭で、狭い割に致命的。
たった一つでもミスをすれば、辛うじて保たれている戦場を致命的に傾ける事になるだろう。
一方朱珠と母娘の方は、狐火達が激しく炎を撒き散らして衝突し、古都を火の海に変えていた。
母娘の帝狐火程度では本来3倍の頭数が必要な相手である朱之火弥珠。
奴等は朱珠の指揮により鋒矢の陣で瞬く間に18体の帝狐火を押し退け、母娘に迫った。
押し退けられた帝狐火達も負けじと喰らい付くが、奮戦虚しく2体の朱之火弥珠が抜ける。
睡蓮と茉莉花はそれを迎え撃ち、指揮者を失った帝狐火達はそれぞれがそこそこに協力して残り7体の朱之火弥珠と戦闘を続行した。
朱珠に至ってはさっさと戦場後方の小高い山の社へ移動し、燃え盛る都を肴に一杯やっている。
まぁ、朱珠が参戦してたら戦場が破綻するので、高みの見物結構である。




