第8話 あまりにも試練
第八位階下位
気を取り直して、制作を続ける。
先ずは熾天使級ドール。
ドールを万単位で消費し、その魂を搾り尽くして肉体と魂魄を整形。
基礎を仕込み、追加で幾らかの武術に光や聖系統の魔法と戦術を入れて完成だ。作った数は15体。
続けて、セフィロタスがやたらと作った樹木獣。
折角のドールの魂にあるスキルを殆ど再利用する事なく作られたコレらの命は、はっきり言って塵芥である。
まぁそれも当然で、セフィロタスの護衛の為の奴隷なのだからセフィロタスに成り代わる様な力を持たせる訳にも行かないと言う事である。
ではどうすればセフィロタスに迎合出来る強力な個体を生産できるのかと言うと……セフィロタスの種子をコピーして植え付ければ良いのだ。
ただし、種を作って植え付けたからと言って即座に他のゲッシュと同格になる物では無い。
勿論、システムの都合上種を持つ個体は良い駒なので優先的にエネルギーの供給を受け、宝珠に類似する種の発芽によりレベル限界もウルティムスやイニティウムを優に越えて650くらいにはなるだろう。
だが、エネルギー総量がどうしても低いので、一度樹木獣にした個体からエネルギーを抜き取って再分配する必要がある。
無駄が多くて時間も掛かり、セフィロタスの負担にもなる。
と言う訳でここも僕が骨を折り、種を植え付けた樹木獣に他の樹木獣の魂と肉体を解いた魔力を延々流し込んで強化、ついでに色々と細かく整備も行い、ステージ2セフィロタス、仮称セフィロタス・ガーディアンを10体生産して寝た。
熾天使級15体とセフィロタス・ガーディアン15体にセフィロタスとゼンゼム。コレだけいれば1日は保つ筈……。
◇
ぐっすり休んで目覚めた昼。
てきがみんなしんでた。
「……」
いや、正確には万全のセフィロタスとゼンゼムが残っている。
だが、全ての熾天使級ドールとセフィロタス・ガーディアンが殲滅され、ドールは残り少数、樹木獣ばかりが増えて蔓延っていた。
まぁ、出来ない事も無いだろう。
ギリギリまで連戦し、全員の残った力を振り絞れば29体までは何とか行ける。
30体目を倒せたのなら、その分の皆の成長があったと言う事だ。
それにしても無茶をさせる。
チラリと見下ろしたそこでは、シャルロッテが跪き、僕に祈りを捧げていた。
どうやらアウラを酷使した様で、萎んだ2頭身アウラがシャルロッテの頭の上を堪能している。
まぁ、この2人はいい。
チラリと床を見下ろすと、そこにはリブラリアが転がっていた。
帽子で顔を覆い、休息に努めている。
パンテオン内の状況の観測からセフィロタスの凡ゆる行動の先読みまで、激しく酷使されたのだろう。
シャルロッテは容赦なくそう言う事をして来るんだよね。必要とあれば自分を使い潰す事も出来るからね。
取り敢えず可哀想なリブラリアをハンモックに上げて添い寝する。
皆も持てる力の限りを尽くした結果、深い眠りについている。今日はもう目覚めないだろうね。
さて、ここから更に皆に試練を課して行きたい所だが、資源的に出来る事は限られている。
取り急ぎ地面と海を分解して魔力を確保、数少ないドールを全部消費して熾天使級ドールを3体生産し、樹木獣を全部消費してセフィロタス・ガーディアンを10体生産。
続けてセフィロタスを少し補強し、ゼンゼムのハチャメチャな魂を整理、万色の鎧を改造強化した。
天命獣や天使達はおやすみと言う事になるが、構わないだろう。
◇
皆を万全にしたり敵を万全にしたりとだらだら過ごし、明けた翌朝、結界から出陣した皆は、全霊を持って敵と衝突した。
三巨像さんと三天使、熾天竜が熾天使級ドールやセフィロタス・ガーディアンと激突する中、先ずは飛翔したローネリアがセフィロタスと戦闘を開始。
放たれた無数の閃光が次々にセフィロタスを削る。
一撃一撃が中々に高出力なそれを受け、セフィロタスは反撃の為に樹木の巨腕を振るうも、大気を震わせただけに終わり、流石にこのまま受け続けるのは危険と見たか防御態勢に入った。
樹木の壁を何重にも纏う様な防御、そんな大きな隙に、ローネリアは翼を広げ、光輪を輝かせる。
生じたのは、光り輝く重複魔法陣。
たっぷり数秒も掛けて展開されたそれ、放たれたのは、光の柱。
刹那、世界は白に包まれた。
光の果てに現れたのは、直上から幹をぶち抜かれたセフィロタスの姿。
セフィロタスは大地から力を延々吸収し眷属を作ったり肉体を成長、その質量を持って攻撃力と防御力とするタイプであり、質量ブンブンが効かない相手には防御に徹するしか無い。
となると、防御をぶち抜かれれば終わりである。
あくまでも未完成のステージ3の状態ではと言う話だが、このイベント会場にはセフィロタスをステージ5に押し上げるだけのリソースが無いので、言っても栓無き事である。
ローネリアはよろよろと飛翔しながら、ゆっくり墜落している。
セフィロタスが破壊されたので、その分の魂と肉体リソースを全部ゼンゼムに投入し、改めてゼンゼムを整備、解放した。
大地を突き破り、出現したのは青白い霊体の巨人。
セフィロタスの魂と肉体リソースを得た事で、セフィロタスと同等の巨人となったそれには、腕を6本生やした。
装備は、剣が2本に魔法触媒として短杖、本、玉、鈴を持たせてある。
鈴と言っても小さな鐘だが、それでも僕が関わってるせいで質が高い。
対するは、シスターアルメリア。
此方も、ローネリアと戦闘スタイルは同じで、閃光が雨霰と降り注いでゼンゼムを削る。
一方ゼンゼムは、エブラィジュの力を操り鈴でバフとデバフを掛け、アルベルトの力が宿った玉で防壁を生成、それを鎧として纏い、ギランの力を持つ本で無数の火弾を放って閃光を迎撃すると共に攻撃、多数の英雄のマナ吸収能力を統合した短杖で大気中の魔力を吸収し続ける。
ステージ3セフィロタスと比べて明らかに強力なゼンゼムに、シスターアルメリアも負けじと間隙を突いて術式を構築する。
立ち昇る火球と降り注ぐ光の乱舞は中々に壮麗で見応えのある物だが、お仕事である。
残存していたセフィロタス・ガーディアンと熾天使級ドールが倒れたのでゼンゼムに統合した。
ぐぐっとゼンゼムの圧力が増し、打ち上がる火球の数が増大する。
対するシスターアルメリアも、打ち下ろす閃光の数を増大させた。
激しい闘争の刹那、それは放たれる。
ローネリアが撃ったのと同じ、極大の閃光。
勝負を決するに十分な力を持つその輝きに、ゼンゼムは剣を振るった。
二振りの剣から放たれた斬撃と閃光が衝突する。
——轟音。
世界を覆う閃光が弾け、次の瞬間——シスターアルメリアが一条の光と変じた。
爆発的な光の中にあって尚輝くそれは、残光。
閃光を切り裂き、斬撃を打ち砕き、即座に展開された防壁も、防御に交差された霊体の剣も、強靭な鎧も、重厚な霊体部さえも貫いて、大災霊ゼンゼムを両断した。
後に残ったのは、フィールド制限、神の結界に突き立てられた剣と、着地の勢いで結界にビタンとへばり付くシスターアルメリア。
精霊体化していた為肉体の欠損は無かったが、もし生身だったら赤い花が咲いていたかもしれない。
そして最後が、強化型万色の鎧。
対するはクラウリア。
光の糸を操り、ボス部屋の扉を開くと、それがトリガーとなって万色の鎧が動き出す。
得物は直剣。
即座に袈裟懸けに振られた斬撃が天守を吹き飛ばし、1番近い獲物目掛け飛び出した虹の騎士が、空舞うクラウリアへ迫る。
即座に展開されたのは、幾重にも張られた光の糸。
虹の騎士は剣を高速で振るい、その尽くを斬り捨てる。
勢い緩めず迫る騎士を前に、クラウリアは敢えて一歩も引かない。
——糸が張られて行く。
次へ、次へ、また次へ。
騎士の斬撃はそれに伴い早くなるも、ある時、糸が騎士の体に掛かった。
それは即座に斬り捨てられたが、また次の糸が掛かる。
速度だけでは追い付けないと見たか、騎士の斬撃の威力が増大する。
魔力に物を言わせて威力を増大させた斬撃は、複数の糸を同時に断ち切った。
だが、それも束の間。騎士の体にまた、糸が掛かり始める。
流石に不利を悟ってか、騎士が背後に意識を向けたのを感じ取った。
だが、残念ながら、そこにあるのは糸の森だ。
コレが神血の面目躍如。
背後に無数に張られた糸は、神血によって生成された簡易的な光糸であり、断ち切るのに今程の労力は掛からないだろう。
だが、時間稼ぎにはなる。
——最早手遅れ。
突破する以外に勝ち筋は無し。
騎士は一層死力を尽くし剣を振るった。
その果てに、騎士は糸に絡め取られる。
無数に巻き付く光の糸が、騎士の体を縛り上げ、動きを完全に封じる。
仙気のオーラを噴出させて糸を引きちぎらんとするも、身動ぎ一つ取れはしない。
クラウは騎士へ指先を向け、放たれた光糸が騎士の胸へ突き刺さる。
「おわり」
そんな一言と共に、まるで根を張る様に、枝分かれした糸が騎士の鋼鉄の体を貫いた。
送り込まれたクラウの魔力が騎士の肉体を蹂躙する。
——此処までだね。
「お疲れ様」
僕はクラウの背後に移動すると、頭にぽんと手を触れる。
「ますた」
「よしよし、偉いね」
バカ魔力の万色の鎧の防勢魔力を貫くにはそれなりに演算力を消耗した様で、疲労を滲ませていたクラウの顔に花が咲く。
クラウはそのまま騎士のコアを抉り取り、魔力を抜いて僕に差し出して来た。
コレを砕けばイベントクリア。
まだ時間はあるし、それまできっちり休むとしよう。
クラウの腰に手を回し、抱き着くクラウを支えながら、ゆっくり地上へ降り立った。




