掌話 燦然と戦果 十三
第四位階中位
拳で抵抗するキングを張り倒し、撃破する頃には雑魚ネズミ達も殲滅されていた。
急ぎ死骸を回収し、奥の通路前に集まる。
「手早く行こう」
そう言って、兄貴は話し始める。
「大根君は召喚可能時間が限界だから此処で撤退。ぱんきちとドールはあと少しだけ行ける。俺は継戦可能、カイは?」
「十二分に行ける」
「アイゼン」
「魔力ゼロ、雑魚専用かね」
ふむと兄貴は少し頷いた。
「じゃあ作戦通り、カイはエンペラー。俺はキングがいたらキング。ドールとぱんきちはキングがいたらキングで、そうで無かったらアイゼンと一緒に雑魚殲滅。カイに近寄らせないのが目標ね」
最終確認が終わった所で、ボスがいるであろう最新部へと歩みを進めた。
◇
少し進み、見えて来たのは、広間。
そこに立つ影はたった一つだった。
「エンペラー単体……の場合は?」
そう問う間に、奥に聳える玉座からエンペラーが立ち上がり、横に立て掛けられていた大剣を手に取った。
「……白ドールとぱんきちが一撃うって離脱、その後俺とカイで必殺切ってから接近戦、アイゼンは待機で」
「「了解」」
まぁ、MP無いから役に立てんしな。
最悪、イベント用に残してある虎の子の上級ポーションを飲めば戦力にはなるが……兄貴かカイトがやられたら参戦するか。
そうこうしている内に、キングは大剣を軽々振るって、此方へ構えた。
装備は、豪華な金色っぽい金属と革の鎧に王冠の様なデザインの兜。大剣も柄の方に黄色の宝石っぽいのが付いているのが見える。
玉座の間とも言うべきこの空間には、あちこちにマークの描かれた旗らしき布が垂れており、それらを照らす様に光る石が並べられていた。
よく見ると天井や床にもそこはかとなく線が走り、労力の掛かってそうな空間に仕上がっている。
その中で1番目立つのは、やはり玉座だ。売ったらそれなりの金額になりそうな金属と宝石が付いている。
後は、玉座で良く見えないが、その後ろに何かあるっぽい。
それらを観察している内に、前を行く白ドールが仕掛けた。
白ドールの腕甲が光を放ち、その光が剣を覆う。
剣は白い光の巨剣へと変わり、振り下ろされた。
対するは、同じく赤っぽいオーラを纏ったエンペラーの剣。
——衝突。
同時にオーラがバチバチと弾け、白と赤が乱舞する。
一見して白ドールの方が得物がデカいから有利かと思ったが、そこは流石にレベル的な差があったか、白ドールの巨剣が押し負けた。
弾かれたドールがバックステップで後退し、そこに変わって高速で飛び出したのがぱんきち。
白ドールに比べれば灰っぽいオーラを纏い加速したぱんきちは、そのオーラを口にも纏い、剣を振り下ろしたエンペラーへと牙を剥いた。
しかし、そこは流石のイベントボス。
エンペラーは大剣から片手を離し、拳でぱんきちを迎撃する。
しかしぱんきちも流石の精鋭とあって、頭部を狙ったエンペラーの裏拳を首で受けながらも、その腕に牙を突き立てた。
牙による出血にしては多い血がぱんきちの口元からこぼれ落ちる。
即座にエンペラーは大剣からもう片方の手を離し、ぱんきちへ打ち付けた。
「ギャンッ!」
吹っ飛ぶぱんきち。
そこへ、兄貴達が仕掛けた。
「スパイラルオーシャン!」
渦巻く猛威がエンペラーを襲い、水が赤く染まる。
コレで相当なダメージになった筈だが、果たして——渦が弾けたその先にあったのは、傷付きながらもオーラを纏い、大剣を握るエンペラーの姿。
流石に一撃とは行かないか。
そうと考えた次の瞬間には、兄貴の必殺が放たれていた。
「アサルトストリーム!」
もはや龍の様なウツボの突撃。
対するエンペラーは、オーラを爆発させ、大剣に纏わせてそれを振るった。
——衝突。
白い巨剣の時と同じ様にそれぞれのオーラが弾け、次の瞬間、兄貴の必殺が両断される。
それでも水の勢いは止まらず、エンペラーを大きく後退させた。
兄貴の投げた銛は、エンペラーの兜を弾き飛ばし、洞窟の壁に突き刺さる。
兄貴の必殺と共に駆け出していたカイトが、エンペラーの胴目掛けて銛を打ち込んだ。
対するエンペラーは、オーラを纏って大剣を振るい、カイトの銛を逸らした。
オーラを纏った返す刃に、カイトは銛を引き戻して受ける。
「うぉ!?」
洞窟に響く金属音。
カイトは大剣に押しやられ、大きく後退した。
——そこへ兄貴の銛が滑り込む。
流石のエンペラーも大剣を戻す余裕は無かったか、肩辺りを狙った銛の一撃を大きく体を逸らして避ける。
その体勢を更に崩す様に、兄貴は銛を振り下ろした。
ぐっと抑え込む兄貴。エンペラーはオーラを纏ったまま大剣を戻し、切り上げる様にして兄貴の銛を弾いた。
次の瞬間——血飛沫が舞う。
カイトの一撃だ。
エンペラーはそれをバックステップで回避するも、突きを完全に避ける事は出来ず、手傷を負った。
逃げたエンペラーへ、カイトが追撃。
突き込まれた銛の一撃を、先と同様に大剣で払い、続けて兄貴の銛を返す刃で払う。
流石のエンペラーも更なる追撃に対処するのは困難の様で、カイトの突きを大きく身を逸らして掠める様に回避。
そこで兄貴が手札を切った。
「ラッシュストライク!」
放たれたのは槍術の武技の一つ、ストライクの上位武技、高速でストライクを3連発するラッシュストライク。
一撃目、それに対抗してオーラを放ったエンペラーが、大剣を引き戻して受け切った。
二撃目、更に防御を固めるエンペラーの大剣が大きく弾かれる。
そして最後の三撃目、無防備なエンペラーの胴体へ、ストライクがぶち込まれた。
「ヂュァァッ!?」
脇腹に風穴開けられたエンペラーが悲鳴を上げ、そこへ追撃、カイトの正確な一撃がエンペラーの肩に突き刺さる。
更に悲鳴を上げながらも、エンペラーはオーラを放ち、大剣をカイト目掛けて振るう。
カイトは後退しながらも、武技を放った。
「シャークジャベリン!」
出現した青い鮫がエンペラーの肩を腕毎噛みちぎる。
鮫が消え切る前に、技後硬直が解かれた兄貴が更に武技を放った。
「アサルトファング!」
先のウツボと比べて大分小さなウツボは、左肩へと直撃、その肩を喰いちぎる。
両腕を失い、抵抗の術を失ったエンペラー。
大剣が重い音を立てて地面を転がり、アポートで銛を召喚したカイトが構える。
「クイックランス!」
僅か数メートルの距離は瞬きの内にゼロへと変わり、エンペラーの胸のど真ん中に風穴が空いた。




