第11話 突然のボス戦闘 vs.冬将軍一号
第四位階上位
メロンシャーベットを食べ終え、思った事が一つ。
『——暑い……どうして?』
『——常に冷気を出してないと溶けちゃうわ!』
『成る程!』
白雪も苦労しているらしい。
春麗の暖かな陽気は白雪にとって辛い物の様だ。
……ならどうして送還されるのを嫌がるのかはよく分からないが、何時迄経っても白雪が元に戻らないのはこれが原因だろう。
取り敢えず、冷気を身に纏う事で暑さを和らげた。
氷雪の宝珠は白雪に持たせよう。
さて、次の標的だが、バルコニーで寝転がっているウルルを弄ってみようか。
ウルルへ近付きそっと頭を撫でる。
「ウ?」
瞼を持ち上げて此方を見たウルルは、暫く瞳を丸くして穴が開くほど見つめて来たが、何やら困惑した様な間を置いて、寝に戻った。
良く分からないが多分気付いていないと思う。
続いて訓練をする皆。
剣術スキルのレベリングの為に素振りをしていたり、軽く立ち会いをしている所に歩み寄る。
此方に気付いたらしいアヤは、剣を鞘に収めてニコッと微笑んだ。
「ユキねちゃん、どうしたの?」
……どうしようか?
……取り敢えず手伝ってみよう。
「訓練の手伝いをしてあげるわ!」
そう言って僕が作り始めたのは人型の即席アイスゴーレム。
雪原ではないので複数体を同時に作るには魔力が足りないが、強めのを一体作るのなら可能である。
球体状に猛吹雪を吹かせ、その中で人型を形作る。
和風の鎧を着せて腕を6本にし、其々に刀や棍棒、盾に槍、と複数の武具を持たせ、オプションで氷のブレスを吐ける様にする。
込めた魔力の殆どは修復に使われる様調節し、刃を潰したり中を空洞にしたりして殺傷能力を低下させる。
名付けて、冬将軍一号
猛吹雪が音を立てて弾け飛び、中から異形が歩み出る。威圧感溢れるその偉丈夫が歩く姿は圧巻の一言。
「さぁ、暴れなさい?」
冬将軍の瞳に赤い光が灯った。
「っと」
振り下ろされた棍棒の一撃を、アヤは余裕を持って避ける。
続け様の槍撃も、バックステップで大きく距離をとって回避した。
ちゃんと多腕は機能しているらしい。
僕は一つ頷くと、幾らか減少した白雪の魔力を回復するべく、僕の本体があるリビングへと戻って行った。
配下操作を解除し、ログインやログアウトの時と同じ様な意識が途切れる感覚を受け、ソファから起き上がる。
白雪は体の操作権が急に戻ったからか、床にへたり込んでいた。
「白雪、大丈夫?」
「……大丈夫に見える?」
「『魔力譲渡』」
「にゃぁぁあああーーー!!?」
大丈夫そうだけど、大丈夫に見えなかったと言う事で、直ぐに魔力を補充する。
魔力保持容量は僕より白雪の方が多いので、魔石から魔力を補充しつつ白雪の中へと流し込む。
大体僕の魔力総量と同等くらいの量を流し込んだら終わりにした。
「白雪、これ、あげるね」
「はぅ…………」
床に崩折れてしまった白雪に氷雪の宝珠を渡した。
氷雪の宝珠は白雪の上をふわふわと漂い始めたので、受け渡しには成功したらしい。
これで白雪が復活するまでの時間を短縮出来るだろう。
白雪の方は放って置いても大丈夫そうなので、バルコニーの戦闘を確認する。
タク達は訓練中だったので鎧を着ていなかった。
なので冬将軍の攻撃は、避けるか武器で防ぐしかなく、相当に不利な状況だが、されど複数人で囲む事で戦況を維持していた。
冬将軍一号 LV50 状態:眷属《白雪》
冬将軍一号は、インスタントなモンスターと同じで生存時間に限りがあるゴーレムだ。
掘削機兵よりもレベルは高いが、先のヴァンパイア程では無いので勝てないと言う事は無いだろう。
タク達が戦ったレッサーヴァンパイアはレベルこそ60と高めだったが、見た所それだけ。戦闘技術がなってない。
高い生命力と腕力に任せた獣染みた戦い方では対人戦闘に秀でたタク達に勝てる筈も無く、その上タク達が使うのは不浄を祓う聖なる武器。ヴァンパイアが勝てる要素は何処にも無かったのだ。
対する掘削機兵は、聖なる武器等の属性魔力は殆ど意味を成さず、多腕で一撃が重い。
その変わりに、重量がある攻撃は避け易く、タクのレベルになると無傷で勝利出来た訳だ。
今回の冬将軍一号は、一撃こそ比較的軽めだがスピードがあり、何より小回りが利く。
常時発している冷気は、長期戦になれば体温を奪い動きを鈍らせる事だろう。
まぁ、適度に苦戦して勝てる筈だ。
と言う訳で、僕は魔物生成の研究に入る事にする。
頑張れ、皆。




