第10話 スキル実験in白雪
第四位階上位
ヴァンパイアの襲撃と言う唐突なハプニングを終えて、ある程度の後処理もこなした。
ようやく王都へと出発したのは、午後も終盤。
リッド便の速度と立地から考えると、昼食を終えてログインする頃には王都へ到着すると予測できる。
と、言う訳で。
今から王都へ着くまでは自由時間である。
「——各自でやりたい事をやって過ごしてね」
そう伝えると、やはり皆はバルコニーへ向かった。
アランは変わらずキッチンだが、他のメンバーは生産系スキルを取得していない様なので、当然と言えば当然である。
僕は、取り敢えずポーションの補給から始めようか。
「ふふん♪」
ポーションの生産をオートパイロットで進めつつ、スキルの確認をする。
主スキルの錬金術、召喚術、従魔術のレベルが50を超えたので、新しい能力を解放出来る様になった。
錬金術は『錬金術の極意』と『生命創造』の二つ。必要スキルポイントは合計で90P。
錬金術の極意は錬金術をより使いやすくなる。
生命創造は偽装生命の上位。
召喚術は『儀式召喚』のみ。必要スキルポイントは50P。
供物召喚の上位で、立地や月の満ち欠け、太陽の位置を利用するらしい。つまり、地脈や星の魔力を使う様だ。
従魔術は『上位契約』『配下操作』の二つで、必要スキルポイントは100P。
『上位契約』は『中位契約』の上位で、魔力の感じから相当に強力な支配術式だ。
『配下操作』は中々に面白そうな能力で、配下の体に憑依する様な形で操る事が出来るらしい。
これで合計240P。残りスキルポイントは50Pである。
やはり、必要なポイントが物凄く高い。
続いて新しくスキルを取得していこうと思う。
いくつかのスキルがレベルMAXになったので、新しいスキルが解放されている。
例えば『画像』スキル。
新しいスキルは『動画』である、取得待った無し。10P。
他は、武術スキルの『体術』。
鑑定して確認すると武技と言う物が取得可能で『殴打』『貫手』『脚撃』『硬化』『連打』『連脚』『怪力』と種類が多い。特に魅力は感じないので取得はしないでおく。
上昇系のスキルも取得しておくべきだろう、『腕力上昇』『防護上昇』『敏捷上昇』で締めて15P。
後は『視覚強化』『聴覚強化』『嗅覚強化』『触覚強化』『味覚強化』を取得する。25P。
合計で50P。これでスキルポイントはゲーム始めて以来初めてのすっからかん——
《レベルが上がりました》
——なのは2秒くらいだった様だ。
吸血鬼戦でかなり経験値を稼いでいたらしい。
或いは配下が強い魔物を仕留めたのかな?
まぁとりあえず、スキルについては此処までにしておこう。
ポーションの補充も終わったので、新しく取得した能力を試してみようと思う。
「白雪、おいで」
「っ! ……きゅ、急に何よ?」
現状試せる物と言えば配下操作だけである。
発動するには接触が必要らしいが、それは接続も同じ。つまり、本に接触していれば問題無いと言う事だ。
とは言え、1回目は接触してやってみよう。
とりあえず、此方へやってきた白雪の頭に手をおく。
「な、何するつもり?」
「『配下操作』」
呪文を唱えた瞬間、意識がブツリと途切れた。
気が付いた時には、頭に暖かく柔らかい何かが置かれている感覚があり、目の前に銀髪の美少女が!? まぁ……僕だけど。
鏡を見ているのとは少し違うが、それにしてもどうしてか物凄く美しい物に感じる。
ふらっと倒れ込みそうになった僕の体を支え、恐ろしく軽いその体を抱き上げてソファに寝かせる。
観察してみると、眠っているのとは異なる様だが、概ね似た様な状態である。
魔力の消費スピードは思っていたより大分少ない。
疑問があるとすれば一つ。
白雪は何処?
自我が消えたと言う訳では無いだろう、飽くまでもコントロールである。
呼び掛けてみようか?
『白雪?』
『——事っ!!? っユキ!? こ、これ何!?』
どうやら、呼び出すと反応する仕様らしい。
何か慌てて喋っていた事から、声が聞こえない間も白雪の意識はあり、体が勝手に動いて大慌てしていた様だ。
取り敢えずかくかくしかじか説明し、軽く検証をしてみた。
どうやら、僕が部位の操作権限を白雪に渡すと、その部位を白雪が動かす事が出来る様になるらしい。
全身の操作権限を渡せば、接続と同じ様な状態になった。
つまり、片手の権限を渡せば、側から見れば一人じゃんけんにしか見えない事が出来る様になるのだ。
配下操作状態では僕の所持スキルは受け継がれていないらしく、完全に白雪の身体性能のままらしい。
せっかくなので白雪が仙術を使いやすい様に魔力回路を調節してしまおう。後悪戯をしよう。
「ふふん。人間、あたしはお腹が空いたわ! 何か美味しい物を用意しなさいっ」
『——ちょ!? ユ、ユキ!?』
キッチンで謎野菜を調理してスープを作っていたアランに、踏ん反り返って命令をして見た。
白雪は僕がログアウトしている間は殆ど僕から離れず、話し掛けないとずっとくっ付いたままらしい。
僕が寝ている状態の時に白雪から動き出すのは大変珍しい事なのだ。
「ん? お、おう……えーと、あったかい物は……駄目なんだよな?」
「見ての通りよ。ふふん」
「そうか……うーん……氷魔法が使えないからな……冷え物は出来ねぇな」
「なら私が凍らせるわ。それで出来るでしょう?」
「それなら出来そうだ」
白雪に話し掛けられて困惑気味のアラン。さて、何を作ってくれるのやら。
アランが取り出したのは、何やらウリ科らしき薄緑色の植物。
それを二つに割ると、中は緑色と白色で種が沢山入っている、と言うかまんまメロンである。
それを手早くカットして、リッドの中からミキサーらしき物を取り出し、カットメロンをそこに入れた。
いつの間にかリッドを使いこなしているアランよ。
ミキサーを回しメロンを粉々にすると、インベントリから茶色い甕を取り出して、その中にある牛乳の様な液体をミキサーに入れた。
「その白いのは何よ?」
「ん? 馬乳」
成る程、牛はあんまり見かけなかったけど馬は結構いたからね。道理である。
続いて取り出したのは、小さな瓶。中には白い粉が入っている。どう見ても砂糖だ。
「これは砂糖っつってな、白いのは矢鱈と高いんだが……まぁ他のは雑味が酷くてデザートには使い辛いんだわ」
「ふーん、そう。美味しいなら何でも良いわ」
それらの材料を入れた後、しばらくミキサーを回し、完成したらしい中身を底の深い木皿に流し込んだ。
「それじゃあ凍らしてくれ」
「任せなさい!」
白雪の体で使う氷魔法は僕のそれよりもずっと使いやすく、見事なメロンシャーベットが完成した。勿論全員分と予備分が用意されている。
「よっし、取り敢えず完成かな。お一つどうぞ」
「頂くわ」
シャーベットの入った器を貰い、氷でスプーンを作ってバルコニーへ向かう。
アランはデザートが溶けない様にインベントリにしまっていた。昼食の時にでも出してくれるだろう。
果たして悪戯と言えるのかは分からないが、取り敢えず正体がバレなかった。まぁ、当然の結果と言えよう。
リアルでは夏だが、アナザーのルベリオン王国は春の陽気である。
暖かい陽射しの元バルコニーの椅子に座り、デザートを食べつつ皆の訓練風景を見る。
『——案外人間の作る物を馬鹿に出来ないわね……』
どうやら白雪はメロンシャーベットを気に入ったらしい。
さて……次は誰に試そうか?




