第16話 チキン狩り
第四位階下位
一国家を牛耳っていた天使達を牛耳った所で、次のお仕事は迷宮の掃除である。
クルーエル LV598
スパニエル LV597
シークエル LV597
三天使もここ数時間の迷宮殲滅や、経験値供給を受けて、モリモリレベルを上げている。
早速、異常化が発生している迷宮に乗り込んで行く。
このレベルまで来ると、上層の殲滅は速やかに終わった。
所詮はレベル一桁から二桁の雑魚チキン。様々な鶏肉がインベントリの中で山を築いている。
その勢いで、中層に蔓延るコカトリスの群れも瞬く間に殲滅した。
最初と比べると雲泥の差。100レベルの差は大きい。
そして下層に至り、出現したバジリスクを易々壊滅させた。
もはやレベル200〜300代の1匹2匹では、足を止める理由にはなり得ない。
そしてついに、今朝の同格と相対した。
バジリスク・ロード LV488
3人で仕留めた相手だが、果たして——正面から駆け込んだのは、クルーエル。
今朝の倍以上の速度で空を駆け、バジリスクが反応するよりも早くその首を切断した。
同時に、背後に回り込んでいたスパニエルが、その鉤爪で蛇の首をなますぎりにし、シークエルの放った閃光が残った胴体を貫いて、バジリスクのコアを破壊した。
戦闘と言うよりも駆除と言った様相。
下層深部に出現したバジリスクの王、数体は3人の堕天使により殲滅された。
そしてボス部屋。
バジリスク・アークロード LV603MAX
そこに立つは、真の王。
即座に相変わらずの連携を見せ、正面から斬りかかったクルーエル。
そこへ向けられたのは、強力な即死の魔眼。
同時に放たれたのは、シークエルの浄化の光。
「上位種も動きは同じですね」
浄化で目をやられたバジリスクはしかし、嘴でクルーエルと斬り結ぶ。
クルーエルも中々の剣技だが、レベル相当には追い付いておらず、光輪を輝かせて能力をブーストし、幾度もの斬撃で活路を開く。
「はあぁぁッ!!」
血飛沫が舞う。
クルーエルの剣技がバジリスクの攻勢を正面から上回り、その首に傷を刻んだのだ。
一方後方では、光輪を輝かせたスパニエルが高速で空を駆け回り、蛇の首に次々と傷を刻んでいた。
「……首、斬る」
しかしそこはレベル600の竜クラス。
強靭な鱗は容易い首の切断を許さず、莫大な生命力はその傷を瞬く間に癒していた。
——互角。
に、見えるが、実際には完封状態。
強力な魔眼はシークエルに抑えられ、得意の状態異常は防がれる。
前の首はクルーエルとの戦いで押し負けているし、後ろの首は防御に徹する事で辛うじて致命傷を避けている状況。
そんな善戦は長くは続かず、バジリスクは次第に追い詰められて行く。
戦闘開始から程なくして、バジリスクは決死の抵抗に打って出た。
発動したのは、強力な即死の魔眼。
それを最大限に行使しつつ、背後のスパニエルを無視して、正面のクルーエル目掛け猛攻を仕掛ける。
鉤爪の連撃に嘴の一突き、血走った魔眼の睨み付け。
そのことごとくをクルーエルが迎撃し、シークエルが浄化して行く。
一方背後では、蛇の首が少ない演算力で申し訳程度の抵抗のみを行い、瞬く間に血塗れへと変わっていた。
「頑張る……!」
現状を把握しているスパニエルは、自分のマークが外れた事を即座に察して、そんな呟きと共に鉤爪を更に増大、蛇の首へと斬りかかった。
高速で振るわれた斬撃の嵐が、強靭な鱗で覆われた蛇の肉体を切り裂き、その再生力を上回って削って行く。
時間にして僅か1秒に満たない攻勢。
スパニエルは、見事に蛇の首を斬り落とした。
勢いそのまま、スパニエルはバジリスクの背中へ襲い掛かる。
その後、相棒たる蛇の首を失ったバジリスクは、必死の抵抗も虚しく、三天使の斬撃と閃光の乱舞に沈んだ。
「ふぅ、意外と苦戦したわね!」
「えぇ、流石は大迷宮の主と言った所でしょう」
「……ん、強かった」
「お疲れ様」
寄ってきた血みどろのスパニエルを浄化しつつ撫で、3人を労う。
そうかと思えば、3人が光に包まれた。
——進化だ。
光を切り裂いて現れたのは、六枚翼。
堕天せし熾天使の誕生だ。
「3人とも、おめでとう」
僕はにこやかに微笑み、それを迎えると、クルーエルは複雑そうな顔で自分の羽を掴んだ。
「ありがとう……これで熾天使様と同格になった、のよね……?」
「四翼の時も思いましたが、存外あっさりと此処まで来た気がしますね」
「んん、お母さんはしゅごくしゅごい」
天使との決戦に向けて最低限の備えは出来たと言えるだろう。
だが、実際の熾天使達がもっと格上なのは、ローネリアで分かっている。
最低でもあと150はレベルを上げておきたい。
その為には、僕の分体を一人一人に付けてイベント会場でマンツーマンで指導する必要があるだろう。
なに、真気を扱える様になれば、多少のレベル差は覆せるだろうし、そう気負う必要は無い。
三天使を修行の為送還し、僕は微笑みつつ、迷宮最深部、コアルームに入った。




