第15話 天使のスクウ国
第四位階下位
迷宮を攻略した勢いそのままに、スタンピードがあった都市に向かう。
そこは、応援を寄越すスタンピードの割に、対して被害はなさそうだった。
まぁ、所詮は上層の魔物だし、レベル一桁や二桁前半が相手では、そんな物だろう。
それでも一般市民からすれば、レベル二桁の敵は命の危機な為、天使達や一部兵士達による殲滅や避難が進められていた。
僕はそんなほぼ収まりかけの混乱に乗じて、応援に駆け付けた複数の天使達を籠絡して行く。
程なくして、4人目のアルケーを落とし終え、乗り込んだのは迷宮中層。
此処で再度三天使を召喚した。
目的は、例によって彼女等の訓練の為。
迷宮攻略は中層をあっさり抜けて下層に至り、然程時間を掛けるでも無くボスを撃破して、迷宮を支配した。
◇
5人目、6人目、7、8、と順調にアルケーを落として行き、点在する村落やパトロール中の天使を余さず使役、次々とスタンピードを起こしたり起こしかけたりする迷宮を支配した所で、最後の都市に到達した。
そこは、シャンディリア教国の総本山。
——聖都シャンズ。
旧ルステリア帝国時代の、シャンズ理法国の名を引き継いだ都市である。
同時に迷宮都市であり、その迷宮は天使が支配する以前より存在する大迷宮だ。
勿論、此処もスタンピード発生の予兆として、迷宮の魔力が強く渦巻き、魔物を生成し始めている。
と言うか、異常な数の魔物が広大な迷宮の深くに発生しており、既に溢れ出す予測のラインを越えて魔物が発生し続けている。
そしてまた、この迷宮の魔物は鶏系である。
勿論今まで攻略した迷宮の全てが鶏専門では無いが、鶏が確実に出現していた。
実の所、黒霧によると……迷宮が鶏を出し始めたのは天使が来てからの様で……これ、吸血鬼の時と同じ様に、迷宮が天使の事を煽っていた様である。
基本的に迷宮は意思なき物と見られている為、迷宮達もバレないと思って良くやる物である。
見えてる側からしてみれば丸わかりの煽りに、苦笑を禁じ得ない。
何やってるんだ迷宮。
ともあれ、スタンピード目前のこの状況下では、あまりのんびりもしていられず、急ぎ分身して下位の天使達から落として行く。
外部パトロール隊や門衛、町内パトロール隊に、迷宮方面軍、人が増えれば天使も増え、数百に及ぶ天使達を落として行き、遂にアルケーの座す場所に着いた。
そこは、アルケー以上の権力者しか入っては行けない、聖典の間。
天使達は迷宮の異変を光輪で感じ取っていた様で、そのアルケーもまた、チリチリと焦れる様な緊張感を誤魔化す為、聖典の間を訪れていた。
僕も隠密で気配を塵屑にして、聖典の間に侵入する。
「聖神様……どうか今日も我々に平穏をお与えくだ——」
「ぴぴぴ」
「——さ、い…………ユキ様、私などの為に余計なお手間を!」
「気にしないで、それより」
僕は、祭壇に置かれた聖典に歩み寄る。
何と言う事もない、装丁はやや重厚ながらも、見た目はただの本である。
それは確かな見覚え。
過去の世界で熾天使アシュリアが持っていたのと同じ本だ。
そう、やはり、聖典教に祀られる聖典は、アシュリアの本、アシュリア日記帳であった。
「……」
ぺらりとページを捲ると、書かれていたのは、未知の文字。
おそらく、熾天使アシュリアの主であった、大聖シルフィアーネの元いた世界の文字だろう。
その全く読めない、しかし綺麗な文字と、アシュリアが持っていた事で本に付与された聖なる属性が、この本を聖典たらしめている。
実際に書かれている内容はともかく、長年の信仰により、聖属性や光属性の強化媒体として使用可能な魔典になっていた。
取り敢えず本体がインベントリにしまう。
《【教国クエスト】『天使のスクウ国』をクリアしました》
どうやら、これで判定上、シャンディリア教国は滅んだ事になった様だ。
報酬は、旗系のアイテムとかそこそこの金銀財宝にマジックアイテム、お金くらい。しかしその中にリコードクリスタルのキーがあった。
これで合計4つ目、未使用では2つ目のキーである。
僕は振り返り、アルケーに命じた。
「今日はいつもと変わらない1日だった。そうだね」
「はっ! 仰せのままにございます!」
さぁ、三天使。本日最後の出番だよ。




