第9話 見えて来た敵の全容
第四位階上位
展開した血のオブジェを元に戻しつつ、今回の戦いでの皆の活躍を振り返る。
先ず、シスターアルメリアと白羅さん。
接敵した次の瞬間には首を落として心臓に剣を突き立てていた。
何方も聖属性の魔力を自在に操れる様で、僕が感知した範囲ではシスターの聖属性の方が質が異常に上だった、やり過ぎである。
その後は物珍しそうに血のオブジェに触れたり、周りの皆の戦いぶりを見に行ったりしていた。
その二人に続く様にヴァンパイアを瞬殺したのは白雪である。
氷のレーザーでオブジェごと凍らせてからバラバラに割り砕いて終わらせ、後は全員が終わるまで暇そうに氷を操っていた。
次いで狼と犬の御三方だ。
炎を吐いたり氷を吐いたり首を噛みちぎったりと無残にも惨殺された。
ウルルは特殊な属性攻撃は持っていない様だが、その代わりに身体能力が高いらしく踏み砕いたりもしていた。
ゴーレム達は、相性故かヴァンパイアでは相手にならず捻り潰していた。
戦士像さんと騎士像さんを召喚した時、先ず最初に謝罪をされた。
騎士像さんからはドラゴンにやられてしまった事を謝罪され『次こそは何者にも屈さず、必ずや我が君を守り抜いてみせましょう!』と誓いを立てられた。
戦士像さんからは『良く直せたな……迷惑かけた、恩に切る』と感謝されたので、本をペチペチと叩いて、これのおかげさ。と言っておいた。
修復されて復活したゴーレムガーディアンとゴーレムスカーレットナイトは、特にバグも無く起動した。
ガーディアンの方は元々意志が無いのか薄いのか、あまり感情がある様な反応を見せる事は無く。
対して、スカーレットナイトの方は、言葉こそ喋らないものの僕の話に戯けた仕草を返して聞いていた。
何処と無くアランに似た雰囲気があり、タクを見付けるとお互い拳を突き合わせていた。
戦い方は、戦士像さん、騎士像さん、ゴーレムガーディアンは元々が光の属性を持っていたり不浄に良く効く真銀であったりするので、終始有利に叩き潰していた。
ゴーレムスカーレットナイトの方は、得物である二本の大剣に炎を宿し、碌に対抗出来ていないヴァンパイアを斬り伏せた。
殺し方としてはイェガが一番恐ろしく、左の手でヴァンパイアを掴み動きを封じ、悲鳴を上げるヴァンパイアの心臓部へ右手のミキサーを突き込んでいた。
魔力を伝って、ヴァンパイアが聞くに耐えない絶叫を上げたのが分かったが、心臓部にある魔石を抉り出し、体を握り潰して終わらせた様だ。怖い。
他も特に滞る事なくヴァンパイアを捻り潰していた。
おかしい点と言えばレイエルだろう。
カエルから魔法使い系統へ進化したレイエルは水の魔法が使えるのだが、どうにも自由度が低い様に見える。
白雪の様に自由に魔法を使えると言う訳ではなさそうだった。
苦戦していたのはヴェルツさんとタク達。
タク達は、最適化されている武術の心得と聖属性を帯びる武器を用いて、互いに連携しつつ四方八方から攻撃を浴びせ掛けヴァンパイアを撃破した。
一方ヴェルツさんはと言うと、種族としての格上相手に単独での戦闘だった為、強化スキルの支援があってもしばらくは苦戦していたが、後半はヴァンパイアの戦い方を見切って圧倒した。
中々に綱渡りな戦いだったので何時でも援護出来る様にしていたが、本人は笑いながら戦ってヴァンパイアを怯えさせていたので、特にフォローは必要無いだろう。
ゼルニー男爵から得られた情報の編集もしなければなるまい。
先ず、ヴァンパイアの居城だが、場所はこの大陸から南西に少々、海を越えた場所にあるそこそこの大きさの島で、地下に巨大な都市があるらしい。
戦力は非常に多く、フェイリュア・ヴァンパイアはほぼ無限。ヴァンパイアと人間のハーフであるダンピールが1万程。血の薄いレッサーヴァンパイアが30万程。ヴァンパイアが10万程。ヴァンパイア・ノーブルは1000前後で。ヴァンパイア・ロードは30程。
更にその上に、公爵と称されるヴァンパイア・エンペラーが3人いるらしい。
そして、王。
ヴァンディワル陛下。
世界各地に散らばっていたヴァンパイアを纏め上げ、全てのヴァンパイアの王として君臨した化け物なのだとか。
正直言って、強烈な情報である。
歴史書や魔物図鑑をみて知った情報であるが、一般的な一個分隊とレッサーヴァンパイアが同格。ノーブルクラスを仕留めるには師団規模の戦士がいる。
ロードクラスともなると大国の戦力を掻き集めて事に当たる必要があるらしい。
更にその上のエンペラークラスなど、お伽話の怪物である。
ヴァンディワル何某はその怪物を上回る力があると言う事だ。
少なくとも、今持てる全ての戦力をつぎ込んだとして、魔力が切れればそれまでだ。
幾らかの魔法兵器を所持しているらしく、その上強欲の魔王と呼ばれる悪魔と同盟を結んでいるらしい。
シスターアルメリアの仇敵、それと同盟を結んでいると言う事は、戦力的には両者が拮抗している可能性を示唆している。
つまり、最悪の場合シスターアルメリアは吸血鬼の軍団の倍の戦力と事を構える事態になるだろう。
シスターアルメリアは強い、しかし単独では話にならない。
戦闘時の感覚から言ってシスターアルメリアの戦力は爺様やザイエと同じかそれ以下だと思う。
能力の相性を考えると何とも言えないが、僕とシスターが共闘してもヴァンパイアの軍団にすら勝てないだろう。
旧友の白羅さんは、純粋な戦闘力ならザイエ以上かもしれない。
ザイエは打属性に特化して肉体を武器に戦うが、白羅さんは斬属性に特化して刀を武器に戦う。
斬の闘気法を自在に操れるだけでなく、僕から見ても完璧に近い刀術を使い、地の身体性能も非常に高い。
白羅さん一味の協力が得られれば勝てるかもしれないので、それとなく好感度を稼いでおこう。
「皆様、お疲れ様です」
血刃を回収し終え、全員と合流した。
ヴェルツさんやタク達は怪我をしているので、下級のポーションを配って回復させ、暫しの休憩時間を取った。
その間にやっておかなければならない事がある。
「ヴェルツ様、お疲れのところ申し訳ございませんが此方へ。早急に今後の対策を練る必要があります」
「お、おう、分かった」
皆から少し離れた場所へ歩き、虚実織り交ぜた話しをする。
「此度のヴァンパイアによる襲撃を、我々は重く見ています——」
まるで何かの組織に所属している様な言い方で喋り始め、口八丁手八丁でタク達をCランクへ昇格させる確約を得る。
市民の混乱を抑える為と偽って今回の襲撃を、タク達がCランクへ上がらせるに足る功績、レッサーヴァンパイア二匹の襲撃と言う事に変えた。
ついでに、万が一同じ事があった時へ備えてギルド登録者達を鍛えておく様にも指示を出しておく。『疾風』の冒険者二人は特に目を掛けておく様に伝えた。
配下を送還してから街へ戻り、タク達をギルドへ向かわせて昇格の手続きをさせる。
その間に僕は、領主代行のアスィミさんに今回の一件の説明をし、領主代行として礼をしたいと言うアスィミさんへ『密命があります故』と意味のわからない嘘をついて躱した。
まぁ、色々と準備して強くなれ、と言う僕から僕への密命であるが。
その後、アスィミさんから依頼を受けて瓦礫の回収と半壊した家屋の解体を行った。
怪我人は全て治療院へ移送してあり、その場に居たのは昨日の解体おじさん達と兵士さん達で、中には僕が最初に治療した兵士さんもいた。
家族を救われたと涙を流して感謝する人や、ヴァンパイアを討伐し被害を抑えた事を感謝する人など、概ね好意的である。
全ての瓦礫を撤去し終わり、ギルドカードの更新を終えたタク達と合流した。
想定外の事件に遭遇して時間をくってしまったので、早めに王都へ向かおう。




