第8話 古城のラビリンス
第四位階下位
ふわりふわりと空を駆け、古城へ舞い降りる。
降り立ったのは、古城の噴水跡地。
ざっと見回したその古城には街等は無く、ただポツンと城だけが建っている。
人の手が離れて久しいその古城は、森に侵食され、もはや遺跡と言うに相応しい様相を呈していた。
真昼の太陽に照らされたその遺跡は、時代で言うなら、ルベリオン帝国時代の工法が見られる為、少なくとも900年以上前の代物だ。
見渡した色んな場所に、魔法陣や術式の導線が見られ、魔石が埋め込まれていた痕跡がある事から、建築者や住民は相当に高度な魔術への理解があったと見られる。
このレベルならそれこそ、時代的に見ても、賢神グリエルの孫弟子くらいの実力者が深く関わっているだろう。
まぁ、僕も孫弟子だが。
僕は特例と言う事で良いだろう。
ともあれ、それほど高度な術を施せるとなると、位置的にもバーチスが関わっていそうな物だが、バーチス・アルディにはこの地に何かを施した記憶は無い。
そう言った手掛かりを得る為にも、早速古城の中に入ってみる事とした。
入って早々に見えて来たのは、壊れたドール。
あちこちに転がっているそれらは、触れれば崩れる程に風化していた。
どうやら、長い年月で盗掘の被害にもあっていた様で、城内の装飾品は根こそぎ引っ剥がされ、残っているのは石とボロクズのみ。
魂や残留思念すら無い程に朽ちたその城は、もはや抜け殻の様な物だった。
だが、それも上層のみの話だ。
書斎らしき場所に入る。
まだ生きている隠密結界により、立てかけられた割れた大鏡の裏に隠されていた不審なレバーを回すと、ゴゴゴッと音を立てて、木製の本棚が朽ち果てながらも移動する。
そんな簡単なギミックにより、地下への道は開かれた。
早速入った地下にあったのは、無数の朽ちたドールだ。
どうやら、ドールの素体置き場らしく、数百体のドールの木片が丁寧にパーツ毎に分けられて置かれていた。
そんな広めのドール置き場と作業場を進み、これまた生きている隠密結界で隠されたレバーを回したら、今度は何も起きなかった。
どうやら壊れているらしい。
仕方ないので、壁にあった隠し棚の蓋をゴリっと開けて、そこにあった魔法陣の残骸を見下ろす。
「……」
結界系は長持ちするんだけど、こう言う複雑な術式は時の重圧に耐えられなかったらしい。
こう言うのは表面だけ修復しても無駄なので、直す気があるなら内部構造まで直さないと行けない。
だが、通るのが目的なら、隠し扉をただ開けば良いだけの話だ。
と言う訳で、早速石を組んで作られた大掛かりな扉を念動力でガコガコガコンと開いて行く。
程なくして道は開け、僕は更なる地下へと進んだ。
そこは、人工的に作られた迷宮、ラビリンスだった。
広域に隠密結界が張られたそこには、全盛期には複数のドールが徘徊し、深奥の何かを守っていたのだろうが、今やドールは朽ちて転がり、石製ゴーレムもまた機能を停止していた。
おそらくこの迷宮は、地下空間に広域の隠密結界を施すついでに作られた物だろう。
厄介な事に、隠密結界があるが故に、察知系スキルの探知範囲が狭く、迷宮を一層迷宮足らしめている。
製作者がおそらく僕の先輩であるが故に、多少迷ってあげても良いが、まぁ何百年も前に亡くなっているであろう人にそこまで配慮してやる必要もないか。
そこらに転がっているドールやゴーレムを分解し、魔力を増大させて行く。
それを広げては、転がっているドールやゴーレムを分解し、更に魔力を増大、物理的に探知範囲を増やして行く。
程なくして、次の階層への入り口は見つかった。
次の階層は、またもやラビリンス。
範囲が上層より狭い代わりに、配置されているゴーレムの質が高い。
早速魔力に分解して、更なる探知を行う。
これを5度程繰り返した所で、突如大広間に到達、それは現れた。
鉄の守護騎士 LV45
鉄の守護弓士 LV46
かつて、遺跡となった元ルベリオン王国王都、その塔を守護していたのと同じゴーレムだ。
それ等は塔のゴーレム同様に朽ちた様子を見せず、侵入者である僕に攻撃を仕掛けて来た。
20体のゴーレムは隊列を組み、ナイトを先頭に、アーチャーが鉄の矢を放つ。
僕は潤沢な魔力を操り、その全てを打ち払う。
本来であれば、天使達にバレたく無いので派手な攻撃は出来ないが、この上には五重の隠密結界がある。
僕はそれでも尚、隠密を意識して行い、伸ばした魔力の腕で20のゴーレムを捻り潰した。
さて、ここまで来れば、もう強力な気配は直ぐ側に感じられる。
相手も此方に気付いているだろう。
小さな歌声が聞こえる。
僕は、大広間の門を押し開いた。




