第7話 天使の荘園
第四位階下位
良い情報だ。どちらも。
一つは、シャンディリア教国には、フィールド制限が無いらしいと言う情報。
より正確に言うと、ほぼ無い。いや無くなっているが正しい。
その理由は、シャンディリア教国内の状況が関係していた。
シャンディリア教国は、大国である王国や帝国と隣接しているが、そう大きくない国である。
では何故帝国の侵略を受けなかったのかと言うと、自然の要害による所が大きな理由だ。
王国からは分かりやすいが、S級魔境翼竜の巣が、帝国からは、連なる山々とそこに生息する魔物達が、要害となって他国の侵略を防いでいた。
唯一山が無いのは、三国が隣接する場所のみ。
そこに軍団を動かせば、必然的に王国と帝国が臨戦する事となり、どちらの国も武力による侵略は困難だった。
おまけに関所も鉄壁であり、何十年、何百年に渡って入国そのものが困難と言う状況だった。
それでも、山や僅かに隣接する海を渡って、侵入した者もいるだろうが……そう言ったスパイは消されるか取り込まれるかしたのだろう。
そう、教国は、それが出来る生物達の、縄張りだった。
情報が殆ど漏れない鉄壁の陸の孤島、シャンディリアには——天使の群勢が根を下ろしている。
それにより、強力な魔物がひとたび発生すれば、天使の群勢によって速やかに駆逐される。
フィールド制限が無い理由は、フィールド制限のボスが生存出来ない環境にあった訳だ。
教国内は常に天使がパトロールを行い、魔物や侵入者、迷宮さえも駆除しているらしい。
まぁ、フィールド制限が無いのは一向に構わない。
僕にとっては神の壁として、察知範囲が狭まる邪魔者だったから。
問題は、天使がパトロールしている点だ。
上への報告体制がしっかりしていると、派手な動きが出来ない。
パフィニョンの時の様に、徹底した隠密行動が必要になるだろう。
注意すべき点はパトロールしている天使以外にもある。
国中のあちこちの町や村に天使達は暮らしており、主に警戒や村などの発展の手伝いをしているのだ。
その警戒網を潜り抜けるには、並の人間では不可能である。
因みに、なんで天使達が人間にそこまで協力的なのかと言うと、実際コレが逆だったりする。
確かな実力と、心が少し読める能力を利用して、信仰を勝ち取った天使達が、それを利用して人間達を働かせていると言うのが実情だ。
そしてその目的が、主に食糧の確保である。
天界の天使達は、ほんのり甘い石の様な物を削った粉を食べている。
実の所その石は、天使の卵であるエルクーンが発生する土台な訳だが、ともあれこれが天界の食糧事情、共喰い事情である。
それらエルクーンの元は有り余る程確保されており、それと食糧を交換する様な形で、天使達は食糧を得ている。
それ即ち、外敵が減り、人が増え、村が多くなれば、食糧の生産が増える。
食糧が増えれば、その献上も多くなり、天界はあんまりいらない粉の在庫処分が出来るし、人々は信仰する天使達に食糧や一部服、装飾品なんかを捧げられる。
正しくWin-Winの関係。
この教国と言う名の天使達の穀倉地帯に、不幸な者はいないのであった。
まぁ、強いて言うなら、働かされている人間とか、下働きさせられている天使総軍の連中とか、もしくは駆逐されている魔物とかが不幸かもしれないが、まぁどうでも良い。
要約すると、食いしん坊天使達の食糧庫、シャンディリア教国は、ネズミの侵入を決して許さない。だからフィールド制限を受け持つ魔物もいない。迷宮も殆どない。
それが、シャンディリア教国の現状であった。
それに対して僕が取るべき行動は、隠密行動でじわじわと侵食する事。
万が一熾天使か何かがいてバレても……まぁ、殲滅すれば良いだけの話だ。
その時は天界が警戒状態に移行するだろうが……まぁ、殲滅すれば良いだけの話である。
これは別に脳筋では無い。結果的に戦って雌雄を決する方が、皆のレベル限界を上げられるし、お得なのである。
続けて、2つ目の情報。
此方は凄く端的で……このS級魔境、翼竜の巣の教国側に、古城があるとの事。
そして、その古城に隠密系結界が幾重にも張られており、その中に何か強力な個体が潜んでいるらしいとの事。
それの何が良い情報なのかと言うと、強力な何かが仲間になると言う事だからである。
天使達にバレない様に、こっそりと回収しに行こう。
ディアリードの罠だったら? それすらも凌駕して見せよう。




