第6話 翼竜
第八位階下位
グラシアの悪魔達の教育状況。
皆のイベント会場を利用した成長状況。
そう言った現状を見回し、早めの昼食を摂り終えた所で、早速教国に分体をけしかける事にした。
取り急ぎ、ルベリオン王国と隣接している所からシャンディリア教国へ侵入するべく、僕の分体を送り込む。
◇◆◇
麗らかな陽気の中、ちょっとした山道を歩む。
場所はルベリオン王国、首都より北東部。
海に面したそう高くも無い山脈で、それはシャンディリア教国まで続いている。
取り敢えずするべきは、フィールド制限の解除だ。
分体としての僕は、レベルにして30以下程度の力しか付与されていないが、コレは一種の擬似餌である。
何か強力な個体の襲撃を受ければ、僕と僕との縁を辿り、莫大なエネルギーが送信される仕様だ。まぁ、爆弾とも言うかな。
ともあれ、察知能力に演算を割り振り、獲物を探す。
程なくして、獲物は見つかった。
ワイバーン LV58
ワイバーン LV52
グレーターワイバーン LV83
亜竜。ワイバーン。
ほぼ竜の形をしたそれは、しかし腕が翼の役割を持ち、猛禽の様に発達した脚部や鋭い牙の生え並ぶ顎門、また火属性のブレス等で獲物を狩る魔物。
竜達からは空飛ぶ蜥蜴等と言われていたりもするが、ワイバーンロードクラスにもなると並大抵の若竜と互角になる為、竜達の舐めた視点からもちゃんと脅威である。
ちょうど竜寝殿の戦力に欲しかったんだよね。
「ぐる?」
「だから、ごめんね、モルドのじゃないんだ」
当たり前の様にやって来た小型化して隠密を纏うモルドを撫でて、送り返す。
過剰戦力だからね。
しかし、国境まで来ると、フィールド制限のボスもレベル100近いか。
取り巻きとしてレベル50代のワイバーンも30体はいるし……正直この戦力なら、王都に深刻なダメージを与えられるだろう。
魔物の巣窟としては、かなりの戦力である。
まぁでも、王国もこの地の事は把握していた様で、冒険者ギルドにもこのエリアの事ははっきりと記述されている。
——S級指定魔境、翼竜の巣。
シンプルで分かりやすい危険地帯だ。
ギルドとしても薮を突いて竜を出す羽目にはなりたくない様で、S級以下の冒険者や同等の兵士、騎士、傭兵は侵入さえ禁止されている。
そんなエリアも今日で終わりだが。
早速現場に乗り込むと、先ずは取り巻きから襲撃を行なった。
体高はざっと5メートル、翼長は10メートル近い、巨体。
巨体はそれだけで脅威だ。
同レベルの人間と戦った場合、ワイバーンの方が大体勝つだろう。
レベル的にちょうど良いトッププレイヤー達と比較すると、装備的にプレイヤー達の方が勝つだろう。
そんなワイバーンの首をちょんと刎ね、魂を回収。
高速で移動しながら、弱い順に首を刎ねて行く。
「グルォ!?」
「キュオォン!」
「ケェァァン!」
突然の襲撃を前に、ワイバーン達は羽ばたき空へ逃れるが、僕もそれを追い掛ける。
流石に首チョンパの連続に加えて空歩の維持だと、レベル30の肉体では魔力量が足りないが、そこは殺したワイバーンの肉体から吸収するので補い、次また次とワイバーンを墜落させて行く。
そして最後、この群れの長、グレーターワイバーンとの一騎打ちだ。
空中で器用に舞い、放たれたのは単純な火球タイプのブレス。
ばんばんばーんと連続して飛んで来たそれをスルスル避け、接近。
首を狙われる事を恐れたワイバーンが身を翻し、逃走にシフトするのを、翼を刎ねて妨害する。
「ギュオォン!?」
落下するワイバーン。
木々をめりめりと破壊し、大地へ激突して血を吐いたそれへ、一息に接近、首を刎ねた。
《【探索クエスト】【街クエスト】『翼竜山の悲劇』をクリアしました》
クエスト名がワイバーン側なのには取り敢えず目を瞑り、入手アイテムを確認する。
どうやら、単なるフィールド制限ではなく、一つの大規模クエスト扱いだったらしく、報酬もそこそこに豪華だ。
先ずは、スキルポイント32P。それから、武器『翼竜牙の槍』。防具『翼竜の鞍』。そして、魂の全確保からエクストラ報酬で、防具『翼竜の翼』。
前者の武器防具は大したアイテムでは無く、気になると言えば鞍が乗員の快適と安全を確保する中々に高性能なアイテムと言う点くらい。
より気になる後者の防具は、換装スキルが前提の紋章型の装備で、光背の様な翼を顕現させる事が出来る、ちょっとおしゃれな飛行装備であった。
性能としては、所持者の魔力を消費して滞空、飛行出来る物で、言わば飛行スキルの付与装備な訳だが……飛べる装備はあんまりプレイヤー達に配りたく無いので、分解して処分と言う事になる。
まぁ、自力で飛べる者からしてみれば、いらない代物なのは至極当然であった。
さて、本体にワイバーンの死骸と魂を回収して貰い、教育を受けさせる。
それとついでに……。
僕はワイバーン達がいた巣へと戻った。
そこにあったのは、無数の小枝で作られた、ワイバーンの産卵場。
回収した卵の数は、ざっと30。
ワイバーンが如何に強力な種でも、卵を破壊される事はあり、他色んな理由で、生まれて来るのはざっくり25匹になるだろう。
そこから弱い雛の内に色んな理由で死に、飛び回れる様になる頃には15。
更に、まだ弱いのに飛び回る物だから、成体になる頃には6〜7匹と、数が中々増えない種だ。
その代わり成体になったら概ね敵無しな訳だが、それでも死ぬ時は死ぬ。今日の様に。
取り急ぎコレも本体に回収して貰い、ワイバーン軍団の増強に使う。
何、ウルルやうさーず達だって、今やトップクラス戦力だが、生後1ヶ月少々なのだ。
ワイバーン達だって生まれて直ぐロードクラスになっても大して問題あるまい。
取り敢えずの目標は100匹で、レベルは500〜600程度。
それぐらいあれば、竜寝殿一大種族として迎え入れられるだろう。
コレで竜寝殿の種族は、ドラゴン。ルナマキア。トルティガン。ラオヴィクス。ヴォルガイユ。ザントマス。クレヴィドラグ。ハミリオン。ワイバーンで、九大種族だ。
勢力が増すのは良い事である。
僕は微笑みながら、改めてシャンディリアへ視線を向けた。
「さて……どうしたものか」
本体から届いた2つの悩みの種に、僕は少し、苦笑した。




