第4話 スパニエルの堕天
第八位階下位
イヴを仲間に加えて帰還した。
昼食には些か以上に早い時間なので、取り敢えずやる事は、僕の分体に甘えていたスパニエルの教育だ。
そんな訳で、本体である僕は色々と見に行くとして、分体の僕には休憩所でスパニエルの調きょ……じゃなくて教育をして貰う事とした。
送り出すのは、そう言うのにちょうど良い、サキュバス僕。
ついでだからイヴとエヴァも連れて、どれかの挑戦者達に混ざって行こう。
◇◆◇
所変わって休憩所もといイベント会場。
僕は、家の建設を進める黒霧の様子を見守りつつ、甘えてくるスパニエルを撫でた。
「よしよーし」
「お母さん、くぅーん」
どうやらこの子、ちゃんと僕が本物のお母さんでは無い事を認識している様だった。
と言うより、お母さんと言う物の認識が、自分を教え守ってくれる女性と言う認識なのだ。
僕の性別には諸説あるが、信じたい物を信じるのが人情である。
さて、スパニエルに抱きしめられつつ向かったのは、エヴァとイヴの所。
「それじゃあ例によって3日間、ボスは倒さないように過ごしてね」
「エヴァはスパニエルとの交代を希望します」
「イヴはユキとの交流を期待します」
「イヴの基礎訓練が終わり次第考えても良いよ」
いぇーいと手を合わせる母娘を置いて、次に向かったのは、空間湾曲で小型化すると言う大技を行なっているイェガ。
その様は、ドールハウス系のアイテムと同じだ。
手を伸ばした所で触れられはしないので、念動力の手を伸ばして撫でる。
最近は神血を見習い、投入される資源をイェガの神血化しているらしい。
そんなイェガから飛び出て来たのは、クラウ。
「ますた」
「よしよーし」
頭を差し出したクラウを撫でる。
僕の即応にクラウは無表情に御満悦である。
暫し撫でて、クラウが満足する頃を見計らった様に、ロニカとセロ、リーンの3人が現れた。
「それじゃあ4人とも、頑張ってね」
「ん、がんばる」
「はい〜、任せてください〜」
まともにコミュニケーションが取れる唯一の存在、リーンがニコニコと微笑み、諸々任せろと言ってくれるのを安心して見送った。
機装人類となった4人なら、イヴ達と共に先行しても問題はあるまい。
続けて出て来たのは、アルフ君。
『げっ』
『まぁ、ユキ様』
「げとは?」
僕の事が少し苦手なレティが驚き、セラが微笑む。
アルフ君は指で剣を弾き、レティを嗜めた。
そうとしてる間に、ルクス君も現れる。
「……」
『ルクスはユキ様の帯同を喜んでいます』
「ふふ、アルフ君もルクス君も頑張ってね」
ざっと膝を付いた2人を激励し、戦場へ見送る。
2人の戦闘力は、イェガ配下の中でもトップクラスだ。
先行した6人を容易にカバー出来るだろう。
さてさて、次はと出て来たのは、人サイズに体を縮めた三巨像さん。
「おや? ユキ様、ご機嫌麗しゅう」
「ちっこいの、いやユキ様か」
「我等に何か御用が?」
「見送ってるだけだよ、行ってらっしゃい」
同じく膝を付く3人を激励し、戦場へ見送った。
聖なる神霊金属セルケディアの3人は、特に悪魔系や死霊系に相性が良いので、厄介なナハトロンや死霊使いのゼンとゼム、リッチのタリジャ、シャドーのタンブラなんかを追い込めるだろう。
そうと思った次の瞬間、コロコロ現れたのは宝石ゴーレム君達。
『ユキ様』
『ユキ様ダ』
『ユキ様!』
『ユキ様ー』
『ユキ様ゴ案内?』
『ユキ様オ仕事?』
『ユキ様ー!』
「見送りだよ〜」
わらわら集って来るそれらを撫で回し、戦場へ見送る。
彼等は最初から合体して行く様だが、そうなるとさて、下手をしたら神級魔導鎧クラスの出力だ。
止められるのはアガーラやリターニァクラスしかいないだろう。
続けて、現れたのはディザイア。
「あら? ユキ様、ご機嫌麗しゅう」
「見送りだよ、頑張ってね」
カーテシーをして見せるディザイアに、僕は微笑む。
エヴァの様にしっかり武装を準備し、ペルセポネの様に術式の準備をしているディザイアならば、誰が相手になっても問題ないだろう。
更に続けて、オルメル含むドールナイツの面々を見送り、出動した神造の弓兵を見送り、ゴレムや機鋼人の面々を見送って、最後にイェガの出動を見送った。
イェガ軍団の戦力ならば、このイベント会場も容易に突破出来るだろう。
イベント会場を制覇出来るのが、一つの神群の条件にしても良い。
「お母さん……しゅごい人?」
「しゅごくしゅごい人、って言うか神だね。僕こそ神」
「……成る程、これが真理」
スパニエルはあっさり堕天した。




