第1話 神の見守る村
第八位階下位
魔界から帰還し、早速教国支配に向けて準備をしようかと思ったら、問題が発生した。
場所は、王国から北西、帝国からは南西に位置する、人類領域からはまぁまぁ外れた、魔境の奥地。
そこで、小規模だが光の柱が観測された。
なにぶんディアリードに攻められた直後の事なので、此方としては調べざるを得ない
と言う訳で、昼というにはまだまだ全然早い時間。その地点の調査に赴く事となった。
探索に赴くのは、念の為僕だけ。
身軽な方が、引くも攻めるも自由である。
◇
《【探索クエスト】『蛙も鳴かずば撃たれまい』をクリアしました》
7回のフィールド制限を解除し、スキルポイントを40P稼いだ所で、そのエリアに到着した。
僕はそこで、直ぐに全てを看破して、俯いた。
そこには村があった。
ちょっとした規模の村だ。
森は広域に渡って開かれ、木の柵で覆われている。
その門前には、老いた衛士がいた。
彼は僕に気付くと、槍を構えて此方に迫る。
「旅人さんか、悪い事は言わね、この村には入んね方が良い。元の場所さ帰んな」
槍を向けての親切な忠告に、僕は首を振った。
まさか、こんな近くに、こんなやばい物があるだなんて、流石は神の敷いたフィールド制限七重の壁、まったく感知出来ていなかった。
僕の態度に、老兵は残念そうに視線を降ろした。
「そうか……訳ありかの……入ったらもう2度と出る事は出来ぬやもしれぬぞ」
「大丈夫、委細把握している。僕も神だ」
「む……」
僕の目を見詰め、老兵は槍を降ろした。
「森からいでくるに、異様な軽装と思っておったが、まさか神様とはの。ようこそ神の見守る村へ」
「君ならば多くの事を知っていそうだ。話して貰うよ」
そう言って僕が机と椅子を出すと、老兵は少し驚いた後、椅子に腰掛けた。
この、境界線の一歩外であれば、この地の神も会話を監視する事は出来ない。
◇
この地に村が出来たのは、今から100年程前の事だったらしい。
階級差別の激しい帝国から逃れて来た民が、この地にいた神に救われ、森を開いて築かれた村だったとか。
山に住まうとされる神は、人々に知恵を与えて暮らしを豊かにし、外敵が現れれば雷を降らせてそれを打ち払い、村はゆっくりと発展して行った。
状況が変わったのは、10年程前。
急に神様が代替わりしたとかで、妙な法が敷かれ、若者達が村から出られなくなったり、村の美女やうら若き乙女が急に呼び出されたと思えば特に何も無く帰って来たりと、不自然であったり不便な事が続いた。
特に、若者が一切村の外に出られ無くなった件が大きく、不満が貯まり続けているのが現状だとの事。
かつては神と祀り上げていたそれは、今は畏れの対象として祀られている様だ。
「代替わりしたと言うんがどう言う事かも分からんが、かつての、先代の様に戻って欲しいと思う者は多い」
「僕が解決して来てあげる」
「そう出来たら、ありがたい話だなぁ」
そこまで話すや、僕は椅子と机をしまい、領域へ踏み込んだ。
数歩歩くと、声が響く。
『汝、我が元へ参られよ』
その声に従い、村の中を通り過ぎる。
確かに発展した村だ。
人の頭数が少ないながら、村のあちこちに風車なんかがあり、色々と自動化が施されている。
道もしっかりと整備され、サスペンションの付いた馬車なんかも走っている。
不自然に発展した村である。
ざっと見た所、三つくらいの村が合流している様で、その規模と発展度はもう町と言っても良いくらいの代物だ。
そんな人の数だけが少ない町もどきを抜けて、辿り着いたのは山の麓。
——大きな山だ。
森が繁茂し、小川が流れ、花々が咲き乱れる。
虫は飛んでるしウサギやら熊やら狼やらが蔓延っている。
まさかこれが擬態の末などと、思う者はそうは居まい。
僕は妖しく開かれた大きな洞窟の入り口に踏み込む。
整備されたその道を進む事暫く、見えて来たのは、扉。
鋼で出来た大きな、近未来的な扉だ。
今年最後の投稿です、良いお年をお迎えください。




