第8話 圧倒を圧倒
第八位階下位
次に衝突したのは、ガリオンとペルセポネ。
此方にもディアリードの魔の手は伸び、ガリオンには神降ろしが掛かっている。
一応ペルセポネは独自の神話を用意出来るが、僕も手を伸ばしておきたいのでペルセポネに神降ろしを掛けておく。
初撃は、ガリオンの圧倒的なリーチによる拳の振り下ろし。
対するはペルセポネの冥界展開。
爆発的に広がる黒の領域は、ペルセポネの領域……の筈だった。
交錯——拮抗。
暫しの衝突の末、ペルセポネが冥域に叩き込まれる。
事実上の、押し負け。
そもそも拮抗するのがおかしい。
本来であれば、ペルセポネの冥界に触れた時点で引き込まれ、ペルセポネの領域で優位性を維持しながら戦闘を行える筈。
今回に関しては入って来た腕を領域内で受け止め、それを押し返す事が出来た筈だ。
では何故、そうならなかったかと言うと、ガリオンの持つ神性が、冥界を拒む物だったからだ。
全周警戒している現状では、詳しい事は分からないが、一つ確実に言えるのは、ガリオンはずっとこの魔界にいた訳ではないと言う事。
この巨体とこの戦闘力。ずっとこの魔界にいたのなら、もっとその痕跡が残っている筈である。
即ち、ガリオンはこの広大な冥域を通し、様々な魔界を渡り歩いて来たのだ。
そうなって来ると凄く気になってしまったのでつい意識を向けてしまう。
見えて来たのは、ガリオンと言う個の持つ、神話にまで昇華される歴史。
ドルスが持つ破壊の神話と同じ、何かの破壊に特化した決戦神話。
どうやら、魔界は世界が他世界と地続きになっている様で、それは縁を通して繋がるらしい。
ガリオンは魂の残滓の成れの果てである冥域を渡り、各地に点在する小さな魔界を破壊しては喰らっていた様である。
それ故ガリオンは、魔界を破壊する神話と大地を喰らう神話の代表的な2つを骨肉とした神格を保有している。
対するうちの子、ペルセポネは、冥界を展開する事、その冥界の管理者として君臨する事、この2つが主軸の神格であり……悪魔獣を冥界の住民としている事が明確な欠点となり、魔界破壊のガリオンとは致命的に相性が悪い。
何となく相性悪そうだなと気付いていたが、ここまでカッチリ組み合うと、もはや運命的に相性最悪である。
だが、一方でペルセポネには、それを覆す力がある。
『神話降誕・冥界の女王』
その声と共に新たに展開された冥界は、悪魔獣を使役していると言う事実に基づく、悪魔獣の支配神話。
ガリオンが悪魔獣の類いである事を利用した、悪魔獣への決戦神話だ。
しかし、ペルセポネはそれだけでは止まらない。
『神話創造・冥界の女王』
新たに生み出された神話は、なんと……ペルセポネの尖兵である巨獣が、他の冥界に類似する世界を襲撃し、その力を取り込んでペルセポネに捧げると言う神話だった。
30万+αの信仰する神話は、確かな形となって誕生する。
そう、これはペルセポネの超必殺技、無茶振り皮算用である。
この神話が組まれた事により、未だ支配下に無いガリオンは間接的にペルセポネの眷属神となり、それが手に入れて来た力の極一部がペルセポネに献上された。
こう言う事が出来る様にペルセポネをメイキングした訳だが、改めて見てもあんまりな能力である。
神話で直接的にガリオンを指し示していない為、その支配力は一歩劣るが……敢えてガリオンを指し示さない事や、敢えて冥界と指定しない事で、出来る事がある。
巨獣と言うのは、1つの生態系である。
ガリオンやエルバーナも、その身に生態系を有し、体内ないし体表に、世界を有していると言える。
そして彼等は悪魔獣である。
それ即ち、冥界に類似する世界。
これにより、ペルセポネはガリオンとエルバーナと言う世界に決戦神話を仕掛ける事が出来る。
——二重特効、何処までも特効神話。
その上、話はそれでは終わらない。
急激に、冥域がへこむ。
まるで海に穴が空いたかの様に、冥域以上に暗い闇色が浮かび上がる。
その上に立つペルセポネは、両腕を掲げた。
刹那、冥域を切り裂いて、現れたのは——巨大な腕。
ガリオンと伍するその腕は、30万の悪魔獣の血肉と、冥域と言う世界の混沌を吸い取って形成された、ペルセポネの新たな尖兵、何らかの不明な巨獣の腕。
漆黒の両腕は拳を構え——
『ペルセポネのガリオン』
次の瞬間、ガリオンが吠えた。
——GuOooooーー!!!!
響き渡る咆哮は魔界の大地を震わせる。
振り上げられたガリオンの両腕。
対するペルセポネは、懐に飛び込んでその両肘を抑えて勢いを完全に殺してから、ガリオンの胴体をぶん殴った。
大きくよろめき後退るガリオン。
しかし怯む事は無く、今度は腕を払う様に裏拳を振るう。
ペルセポネはそれを避け、また胴に1発打ち込んだ。
余波で冥域が津波を起こし、魔界の一部が飲み込まれる。
……ガリオン、耐久力と攻撃力に物を言わせて生きて来ただけあり、ペルセポネの急造巨腕ではまともに受け止められないだろうが……それだけだ。
生来の強者である彼がして来たのは、蹂躙だけ。
戦いはこれが初めてだと言うのなら、僕の加護を得たペルセポネに負けは無い。




