第7話 死の拳、生の拳
第八位階下位
先ず最初に衝突したのは、ドルスとザイエ。
『我が道に、阻む物無しッ!!』
最初から全力のドルスはザイエ特効の神権を降ろした。
同時に、その身に悪魔の神権も宿った。
ディアリードによる神降ろしだ。
おまけにドルスは悪魔の宝珠を4つ持っている。
これはあまりに不公平なので、僕もザイエの手助けをする事にした。
先ずザイエに貸し与えたのは、至福の星珠。
ニコラパワーで悪魔の宝珠4つ以上の演算力強化が掛かる。
更に神降ろしで僕の固有神権を降ろした。
本来であれば敬虔な信徒や巫覡、または性質が似通った者でないと激毒となるそれも、僕の無限の愛属性神気を込めれば万事解決。
ザイエは銀をその身に宿して銀髪に変じ、その瞳はニコラカラーの赤金へと変わった。
これでかなりの強化だが、おまけにザイエは戦と武、拳の3つの神権を降ろした。
そもそもザイエが強いが為に、ザイエには神権をあまり振り分けていない。
降りた神気は少量だが、これでドルスと互角に持って行った。
まぁ、僕の神降ろしで細かく調整した訳だが。
僕の手を伸ばしておくと言う意味でも、この神降ろしは有効だ。
ディアリードに邪魔はさせない。
◇◆◇
神話を降ろし、その身に神を宿して思う。
この戦い、もはや己の物では無いだろう。
——あの日、我は死んだのだ。
ザイエもその身に神権を降ろし、神を宿した。
これはもはや、神々の代理戦争。
一敗地にまみれた我には意味の無い戦い。
だが、それでも戦意は途絶え無かった。
——何故か?
……うるさい仲間達の声が、妙に懐かしい。
静かになって初めて、同じ方向を向く仲間達がいたから、破道を邁進出来たのだと気付いた。
今、我が拳を振るうは——弔いが為。
死んで行った仲間達の主として、相応しき戦いの末の死を求めんが為……!
その拳に己が死を込めて——
◇◆◇
1対1だと思ったら違ったらしい。
その相違点を埋める為と、それは唐突に現れた。
『ニコラが来たよ☆』
「おおう」
『神気の操作を手伝うから、好きに戦ってね☆』
そう聞くや、体に力が満ち溢れる。
スフィアとやらに触れたのは初めてだが、大した力だ。
だが、本当の驚きは次の瞬間に訪れた。
『ザイエ、加護を与えるね』
「っ!?」
気軽な言葉に反して、それは段違いの強化だった。
力が溢れかえり、世界を何処までも見通せる様な、異常な全能感。
今なら何でも出来そうな気がする。
……これがユキの感覚だってのかよ。
敵わないのも納得だ。見えている物の量が違う。
いや、そもそも、ユキに追い抜かれていたのは理解していた。
俺達が師であれた時間など、数日と無い。
つい、振り返りたくなった。
でも、きっとユキは変わらず、あの微笑みを浮かべているだろう。
——辿り着きたい。
この高みまで。
——進まねばならない。
今は、前へ。
その拳に己が未来を込めて——
◇◆◇
ザイエとドルスが衝突した。
初手、交わるのはお互いの拳。
ただ一撃でそれが止まる筈もなく、互いの操魔を見切り合い、一瞬の内に幾度も拳撃が交錯する。
その激突の余波は、強固な魔界の大地を易々と破壊し、山々を砕く。
魔界にプレイヤーはいないので派手にやってくれて構わない。
僕程にもなると、この一瞬の交錯でも多くの事が分かる。
——ドルスは死ぬ気だ。
それ故に魂の力を解放し、真気を操れているのは怪我の功名か。
それと同時に、増えた拳を補助的に使い、武術と言う点でもザイエと互角へ持ち込んでいた。
その戦いは、真気と神気が交錯し、僅かにマテリアル的に優れるドルスが優勢を維持していた。
まぁ、ザイエが負けたとしても構わない。それもまた経験である。
その時は、ザイエの彼女候補に立候補し、固唾を飲んで戦いを見守っている禅鬼に仇討ちをさせよう。
だが、ドルスがザイエとの戦いの末の死を望む以上、ザイエには是非勝ってほしい所。
何にせよ、ドルスの魂だけは何が起きようと奪ってやる。
それが出来なかった時が、僕の敗北である。
ディアリードに邪魔はさせない。
こう何度も念じる事で、僕の中にディアリードとの決戦神話を形成して行く。




