第6話 狩りを始めよう
第八位階下位
ドルス LV850MAX
ドルスを鑑定した刹那、フィールド制限の壁の向こう側から飛来してきた魔力の矢を撃ち払う。
余波で吹き荒れた突風が山を削り、大地を破壊した。
これだけでは敵の全容は分からないが、今のが小手調べの一撃だとすると、敵の想定レベルはおよそ800を越える。
即ち、今僕達はレベル800を越える個体4体以上に囲まれている事になる。
これは冥域からの突然のご褒美では無く、ディアリードの軍勢の襲撃だ。
そうと分かるや、僕は配下を召喚した。
南東、ドルスには、お望みのザイエを。
南西、不明の弓兵には、エルミェージュとエイジュを。
北西、巨人型のガリオンにはペルセポネを。
そして北東、空舞う白き鯨エルバーナには——
『グラシアは白鯨をやってね』
『我に任せておけ。因縁の相手だ』
『まったく、折角の料理が冷めてしまいますね』
『戦力過多じゃないかしら?』
『ナハトロン様の足手纏いにならない様頑張ります!』
『エルバーナ……まさかディアリードの配下だったなんて……』
『私に任せておくのだわ!』
まぁ、若干心配なのもいるが、十二分の戦力を投入しているので大丈夫だろう。
続けて、ザイエに声を掛ける。
「ザイエは単体じゃキツい相手だけど?」
「いーや、任せてくれ! 俺がやる!」
「じゃあ頑張ってね」
かなり厳しい戦いになるだろうが、ザイエなら或いは僕のゆる予測を越えてくれるに違いない。
更に続けて、エルミェージュとエイジュ。
「エルミェージュは迎撃、エイジュはフィールド制限の解除に注力して。先ずは敵が何者かを把握する所からだ」
「……それって実質一人で迎撃——」
「——行きますよエル!」
連れてかれるエルミェージュに手を振って、最後、ペルセポネ。
「ペルセポネは、ガリオンを狩る」
「全力でないと厳しい相手だ、出来るね」
「出来る、ペルセポネのガリオン。あとエルバーナ」
気合い十分なペルセポネを送り出した。
それらと同時並行して、グラシアの弱い悪魔達を、その歴史ある土地毎回収、弱点を無くした。
念には念を入れて戦力を投下したい所だが、万が一地上側に襲撃があった時にこそ備えて、そちらの層を厚く保つ。
地上部の警戒は、僕の分体5体に加え、黒霧達、シスターズ、それからサンディア、シャルロッテ、メロット、ウルル、イェガ、クリカ、ディルヴァ、アトラ、精霊神達と言った錚々たるメンツに加えて、保護者のレーベ、セバスチャン、白羅、アルネア、爺様にシスターアルメリアも居て、更にはレベル800前後の獣人3人組、空華、リブラリア、リーリウム、ヴァンディワルとかまでいるのだ。
唯一、元β島が黒霧、レベル900オーバーのマレに、神群を率いるルメール達、と守りが薄いが……まぁ、マレの実力ならば援軍が来るまで持ち堪える事は出来るだろうし、最悪……β島と共に結晶樹まで失われる事になるが、その時は引いても良い。
一方、暇になった僕が備えるのは、神の一撃。
今度こそは邪魔はさせない。
奪える物は、確実に奪ってやろう。
改めて気合いを入れ、先ずは見えている敵の深い観察を行う。
最初は、ガリオン。
ペルセポネが向かっている相手だが、その巨体たるやマレに匹敵するだろう。まごう事なき巨神の血統だ。
そのヘラジカの様な頭部には鹿の様な巨大な枝角が生え、その肉体は緑の体毛と木の葉や蔓の様な物で覆われている。
単純に体に木が生えたとか苔が生えたと言うよりも、樹木の特性も持っていると見るべきだろう。
ズシンズシンと大地を揺らしながら此方へ接近する様は、この世の終わりを予見させる程の威圧感がある。
冥域側にはフィールド制限が無く、間も無くペルセポネと接敵するだろう。
続けて、エルバーナ。
此方は、性質が光属性と聖属性である巨大な鯨型の濁冥獣だ。
体の大きさはイェガ程もあり、それが空を飛んで此方へ接近している様は、ガリオン程では無いが終末を予期させるには十分だ。
巨大な光輪と6枚の翼を持つ熾天使の様な見た目をしているが、悪魔の系譜である。
おそらく、サンディアの所のシオールの大型化進化した姿だろう。
最後に、ドルス。
以前との大きな違いは、腕が6本になっている事。
ドルスの元の腕の他に、赤い体毛で炎を纏う腕、緑の体毛で風を纏う腕、一見して普通に見えるが質量が異なる腕、骨の様な武装を纏う腕が生えていた。
おそらく、骸廟達が持っていた悪魔の宝珠を体内に取り込んだ事による物だろう。
以前と比べても格段に戦闘力が増している事は間違いない。




