第7話 吸血鬼戦乱
第四位階上位
事件現場に到着すると、救護活動は概ね終わっていた。
多少の擦り傷切り傷は放置していたので、冒険者達の仕事はそれらの治療や血を失って動けない人を運んだりする程度だ。
その中に、ヴェルツさんを発見したので付いてくる様に声を掛け、身内の皆と合流する。
そのまま、人気のない崩れた建物の中に入り、現状を説明する。
「——はっ、それ本気で言ってんのか?」
街の外にヴァンパイアが複数おり、それをここに居るメンバーと僕の召喚獣で迎え撃つ。と言う話をすると、ヴェルツさんが声を荒げて問うて来た。
「何かご不満でしょうか?」
「は? 不満? 馬鹿言え、サイッコー!! にっ! 楽しそうじゃねぇか!!」
これだから戦闘狂は……まぁ良いか。
とりあえず今回の目標を定めよう。
先ず前提として、ヴァンパイアは一体も逃さず一体も街に入れない。
余裕があれば、僕、白羅さん、シスターアルメリアでさっさと一体ずつ屠り、他のメンバーの実戦による成長を促す。特に僕の配下。
要はさっさと倒して利用してやろう、と言う事だ。
ヴァンパイアは、街から少し離れた草原にいる。
騒ぎが有り、仲間が死んだ事に気付いて警戒したのだろう、全員が同じ場所におり、気配を探りにくい様に幾重にも隠蔽魔法が施されている。
僕の元々の察知能力だけだと、その違和感に気付くにはそこそこの時間が必要だった事だろう。
服を着替えて耳を生やし、意図して探りを掛けなければ気付かない程度には強力な隠蔽である。
そして……それに素で気付くのが白羅とシスターアルメリアである。
それはともかくとして、やる事は単純だ。
最初に強めのを一当てして、ばらけさせて各個撃破する。
強めの一撃には血刃を使うつもりだ。
血刃は操るのに魔力が必要で、量を増やすには生き物の血が必要だ。
しかしそれだけでは無い様で、試しに僕から血を抜いてみた所HPバーがガリガリと削れて行ったが、半分削れるまで抜いた時点で明らかに僕の血液量よりも多く血が抜けていた。
それでフラリとすら来ないのだから驚きである。
HPバーの元になるエネルギーが血液の代わりになっていると考えるべきだろうか?
少なくとも今回、体力を回復させても血が足りなくて真っ青な人が何人か見受けられたので、この効力はプレイヤーだけの能力か、或いは血刃の能力なのだろう。
この血刃を使って、連中の頭上から血の滝を降らせて分断する。
勿論、倒せるならこの時に全て倒してしまっても良いだろうが、それでは成長に繋がらないので一体だけをミイラにするに止める。
その後は、血刃を操って壁を作り、退路を塞ぐ。
まぁ、操血能力に優れたヴァンパイアがいれば離脱される危険性もあるが、その時は氷魔法とアイシクルオーブで氷像にしてくれよう。
今回は逃さない事を第一にするので、感覚が鋭敏になる吸血姫の服で行く。
全員を引き連れて門から出た。
途中、アスィミさんが護衛と人手を連れて来たので、ヴェルツさんは冒険者達にその指揮下に入る様言い付けていた。
無用な混乱を控える為にも、詳細は伏せてアスィミさんに伝えて、ゴーレムソルジャー達は街の外に配置する事に決めた。
門から出ると早速配下の皆を召喚し、やる事を伝えてからウルル以外を送還した。
軽く準備を整えてから出発だ。
僕がポーションを使いながら血刃を用意している数分の間、共闘者同士仲良く話をしていた。
シスターアルメリアには、双子を筆頭にろりーずがわちゃわちゃしており、楽しそうだ。
白羅は、同じ武人同士惹かれ合う物があるのか、センリやマガネ、ユリちゃんと、軽い運動をしていた。
一方ヴェルツさんはと言うと、タク、アラン、セイトの四人で荒く激しい運動をしていた。
ブンブンと武器を振り回し、その顔はキョウアク……楽しそうで何より。
そんな戯れを見つつ血刃を増やしていると、しばらく経ってようやく必要量になったので、早速出発しようと思う。
「さて……そろそろ出発しましょう」
各々がそれぞれの返答をし、完全武装の集団がヴァンパイア目指して動き始めた。
ヴァンパイアがいるのは街から東へほんの少々進んだところにある草原。
更に東には、枯れた森があり、南には絶壁、北にはワイルドドックの森がある。
察知能力の高いヴァンパイア相手では、どう動いても察知されるので、堂々と真っ直ぐ向かうつもりである。
血刃が届く位置に入ったら仕掛ける。
しばらく、風が吹く長閑な草原を進むと、視界に僅かな違和感がある場所が見えて来た。
見た目こそ何も無い草原だが、魔力の流れを見て気配を察すれば、其処に何かがあると言う事は良くわかる。
攻撃が可能な範囲へ入ったので立ち止まる。
配下の殆どはその違和感に気付いたらしいが、タク達やヴェルツさんは違和感すら感じていない様だ。
急に立ち止まった僕に、ヴェルツさんとセイト、クリア、ケイ、ミサキの五人が困惑顔である。
シスターと白羅さんは最初から敵の存在に気付いているので、武器に手を伸ばしていつでも戦闘に入れる様にしている。
対するヴァンパイア達はと言うと……完全に油断している。
一番偉そうな服装のヴァンパイアが、先頭に立つ僕を指差して何やらニヤニヤと笑っており他のヴァンパイアに僕を捕まえる様に指示を出している。
他のヴァンパイアも、口元に手を当てて涎を啜っている者や、偉そうなヴァンパイアに媚びを売って分け前を貰える様に頼んでいる。
正に取らぬ狸の皮算用。
仲間の準備が整った様なので、さっさと仕掛けてしまおうか。




