第12話 強化する
第五位階下位
この山の頂上に転がるルメールの木片は、それはもう酷い物だった。
殆どが焼け爛れ、生きている部分はそう多くない。
それでも当時のルメールの力の大半を継いだ木片なのは確かだった。
おそらく、コレも推測だが、アルバ大陸のルテールの里にあった大樹は、ルメールの砕け散った木片がルーツだろう。
さっきまでのルメールは、自らが生き残る為、偶々運命的に近くにあった結晶樹へ乗り移る作業を進めていた。
少なくとも、神樹スカラフは、乗り移りが完了するまで枯れないだろう。
そう言った長期的な作戦だったのを、今のルメールは完全に乗っ取り吸収に方針転換している。
取り急ぎ元本体の木片から生命力とか魔力とかを全て吸収させ、ルメールには完全な精霊化をして貰った。
その上で、コレからやるのは、一種の星辰炉、やがては神核すら形成出来るであろうもう一つの神樹、結晶樹の形状変形である。
差し当たり行なったのは、既に成っているスキル結晶の回収だ。
回収できたのは、剣術、槍術、鎚術、操気法、鍛治、水属性魔法、採掘の7つ。
僕にとっては無意味に等しいそれを、剣術をサンゾーに、槍術をゴンスケに、鎚術をマツシローに、鍛治をシンベーに与え、エネルギーを注入、レベル200まで持って行く。
同じく、木の怪物である彼女に操気法を与え、レベルも200まで上げておいた。
僕自身も、水属性魔法と採掘と言う要らないスキルを貰っておいて、魔水晶のエネルギーを注入してレベル200まで上げておく。
重要なのは、此処からだ。
取り急ぎ、島の西部、敵の領域まで伸びている結晶樹の根のエネルギーを回収した。
敵に利する物だからだ。
続けて、島の全域に伸びた根のエネルギーを回収しに掛かる。
不要な物だからだ。
敵に利する根の急ぎの回収には、僕を消耗した。
それ程に重要案件だったからだ。
確保した莫大なエネルギーは、全てスライム達の平均レベルを上げるのに使い、スライム達をレベル150まで強化した。
「結晶樹の分解、頼んだよ」
「はい、なるべく早く復帰してくださいね」
軽く言葉を交わして、休憩に入る。
休憩と言っても、寝る必要のない体故、やる事はただ何もしないでじっとするだけ。
僕は山の上からじわじわ増大する敵を見つめ、せめて眷属達の指示だけはする事とした。
◇
スライム達に指示を行い、島の東部と山岳を禿げ島にした。
その頃には敵も山裾に到達しており、餌を求めてじわじわと蠢いている。
斯くして18日目が始まった。
早速、ルメールがある程度やってくれていた、結晶樹の分解に取り掛かる。
島の全域に伸びていた残りの根を魔力に分解し、吸収する。
確保した莫大なエネルギーで、僕のレベルを300まで上げ、眷属達を200まで引き上げる。
後は、結晶樹のコア化だ。
残った結晶樹をレベル300の魂を存分に利用し、純結晶へと加工して行く。
それを錬金術で合成して欠片、晶珠の段階を経て、宝珠を完成させた。
出来た結晶樹の宝珠に、ルメールと名も無き木の巨人の魂を登録して、全工程完了。
後は、何も知らずに捕食を続ける敵に仕掛けるのみ。
猶予はあるので、宝珠作成で消耗した分を回復するまで、じっくり休む事とした。




