第10話 敵を知る
第五位階下位
考察をしつつエネルギー注入のレベリングで、レベルを100まで引き上げる。
高熱を帯びた体は光を放ち、僕はマスターヒューマンスライムに進化した。
核は相変わらず健在だが、複数のスライムの魂が込められたそれは、最早宝珠の様な物である。
厳密なオーブとは全く異なる物だが、演算補助装置と言う意味では並のオーブに負けず劣らずの代物である……贔屓目に見て。
また、保有エネルギーの残りほぼ全てを消費して、スライム達の平均レベルを80まで引き上げた。
通常行動可能な限界まで飢餓と暴食を付与した義体のスライムは、ボラシティスライムからグラトニースライムと言う名前になり、一段進化した様である。
消化分解能力の付与可能レベルも向上するお得形態なので、皆には常にその形態で活動して貰う事とし、そして遂に僕は——
——飢餓と暴食から解放された。
ある程度は残っているが、平均レベル80の総数およそ300匹をグラトニースライムに変化させてようやく鎮められる飢餓と暴食を付与されて、良く頑張った物である。
以降はエネルギーを僕の強化に用い、レベル300程度を目指すのが良いだろう。
それだけあれば、万一邪神級と相対する羽目になっても、地脈のエネルギーを引っこ抜いて討滅する事が出来る筈だ。
まぁ、単純な地脈のエネルギーと言うかオピオネウスやオピオニダイを仲間にしてと言う意味合いが強いが。
さて、此処までレベルを上げ、飢餓と暴食から解放された事で、僕はある事実に気が付き、配下の皆をあちこちに解き放った。
完璧な僕に擬態した僕は、皆に声を掛ける。
「それじゃあ皆、急ぎでお願いね」
言うや、皆は直ぐに四方八方に散らばり、木や草、土を丸ごと飲み込んでは消化し、エネルギーに変えて行く。
一方僕は、急いで山を登り始めた。
目指すは山の頂上、ルメールの元。
◇
道中また迷宮の気配がした為、少し考えた末に自力で殴り込みに掛かる。
全八層からなる迷宮は、やはり鶏の魔物で構成されており、途中から土属性に変異した。
この事から、この地の事実上支配者である結晶樹が地脈に働き掛け、迷宮に影響を及ぼし、星の信仰を大地に接続してこの地の力を増大させようとしていた事が分かった。
より正確には、月や太陽とは逆に回る木星の運行、それを月と太陽の運行に直した仮想星の運行を示す十二支。
それが12と言う数字を持つ故に結果的に得た月の神性をこの三日月の島に降ろし、土属性を宿して大地に固定する事で、この地に月の持つ神性、繁栄や再生を齎そうとしたのだろう。
もっと正確には、繁栄等を齎らす為に手繰り寄せられたのが月の神性で、それを降ろす為に手繰り寄せられたのが十二支だったと考えられる。
まぁ、100%の裏取りが出来ている訳では無いが、迷宮が地脈から情報を得て行動を決定している手前、同じく地脈に接続して情報を得る迷宮の上位存在である結晶樹と関係が無いと思う方が不自然である。
そんな訳で最深部。
『スライムになれー』
『吾輩ぐぼぁっ!?』
諸々省略してぶっ飛ばしたのは、人型の鶏鬼。
そんな吾輩君の名前はシンベーと言い、これまたそれなりの使い手であった。
何故それらを捕らえていたのか、また捕らえる事が出来たのかは不明だ。
結晶樹が関与しているのは疑いようも無いが、そんな結晶樹すらも神樹の幼木ルメールと接触したならば色んな想定外の影響が出る事は間違いない。
まぁ、雑破な予想だが、神性を強く固定する為に、手っ取り早く近場で確保した強い魂を利用、配置したとかそんな所だろうとは思う。
ともあれ、そんなこんなで迷宮も無事攻略し終え、速攻で回収を終えて、消化に掛かる。
レベルを急速に上げつつ、山を登って行く。
猶予はあるだろうが、早い方が良い。
そうこう山を登っていると、次第にそれは見えてきた。
遠い、三日月の島の真反対。
僕が発生した地点とちょうど反対側に、蠢く巨大な影。
先日の海岸では見えなかったが、間違いない——
——スライムだ。
それも、ギガントクラスの超巨体。
それでいてギガントスライムとは違う妙な這いずる様な動き。
おそらく、地面の草木や土を優先して消化しようとするが為の這いずり行動だろう。
同時に、異常肥大しているから体を持ち上げるのが不得意とみた。
結構な速度で木や大地を吸収し肥大化を続けている為、あと1日もすれば山裾に到達するだろう。
この這う様な動きを見るに、2日もすれば、この山の頂上以外の島全体を覆うだろう。
それ程までに増大速度が早い。
つまり、今回の遊技神が設定したミッションは、奴を止める事に相違ないだろう。




