第9話 襲来
第四位階中位
犬の迷宮を攻略し、エネルギーの分配をして、全員の平均レベルを50まで上げた。
そのまま山の頂上を目指し進んでいると、夜が明けた。
17日目の始まりである。
そうと思った次の瞬間、それは現れる。
ザザッと森をすり抜けて、向けられたのは、木の大槍。
「森を乱す者共め! ルメール様に代わりこの私が成敗してくれる!」
木の塊の様な大きな人型が、草木を薙ぎ払いながら突進して来る。その巨大な突きをヒョイっと避けた。
「小型の癖して生意気な!」
悪態と共に放たれた地面毎破壊する薙ぎ払いを跳んで避ける。
この木の魔物は一つ気になる事を言った。
そしてそれ以前に問題なのが、この怪物がルステリア帝国時代の言語を話している事だ。
これが表わす事は、一つ。
僕は殴り付ける様な槍の一撃を紙一重で避け、ルステリア帝国時代の言語で問うた。
「ルメールの知り合いならオルメスを知ってる?」
「何!? 人語を解するだと! 面妖な!」
僕の丁寧な問いに対し、槍を振るって応えた怪物。
さっきから木々を粉砕しているが、どちらが森を乱しているやらだ。
取り敢えず、こいつの言うルメールがあのルメールである可能性は高いが、こいつがオルメスを知らない事は分かった。
人形使いオルメスはルメールの名付け親だ。それを知らないのなら、こいつに話す事はもう何も無い。
だが、一応友好的には接するべきだろう。
僕は何度目かの槍撃を避け、木の怪物に話しかける。
「僕、ルメールの知り合いなんだよね」
「これだけ森を破壊しておきながら知り合い等と! 嘘も休み休み言え!」
知らなかったけどルメールの森なら僕の森も同然と言う事にはならないだろうか? ならないか。
無駄に被害が出ると困るので、無数のボラシティスライム達を後方へ避難させる。
「僕、冗談は言うけど嘘は付かないよ」
「黙れ! 貴様等異常なスライムが結晶樹の根を喰らったせいで、ルメール様がどれ程お心を痛めたか!」
「食べてないけど」
僕が食べた訳では無いが、どうやら結晶樹の根に手を出したスライムとやらがいるらしい。
「喋るスライム等と! 貴様が首魁に違いない!」
「思い込みで動くのはやめて、一度ルメールにオルメスについて聞いて来たら?」
「貴様の様な輩の妄言をお耳に入れる等ありえん! 此処で滅ぼしてくれるわ!」
流石に話を聞いてくれないので僕も手を出さざるを得ない。
いつまでもこの子と踊っていられる程、僕も暇では無いのだ。
結晶樹の根を消化出来るレベルのスライムが彷徨いていると分かった以上、ね。
数十度目の槍撃を避け、反撃が来ないと油断しきった怪物に、僕はそれを行なう。
取り出したるは、肥大した僕等の体の一部。
巨大なそれを、相手と同じ槍型に変形させ、お手軽な金属化をして怪物の槍に叩き付けた。
「なに!?」
「驚いてる場合?」
そのままゆっくりと金属の大槍を近付けると、樹木の怪物は木の大槍を手放して離脱した。
「やはり野蛮! ルメール様のお知り合いである筈も無し!」
「失礼しちゃうな」
そりゃぁ多少木々も食べたかもしれないが、美味しいのが悪いのであって僕のせいでは無い。
木を齧るのは野蛮では無い。
そんな事を思いつつ、怪物の落とした槍をむしゃむしゃ喰らう。美味過ぎる。
中々に高質の槍だ。おそらく体の一部を槍化した物だろうが、レベルは……100近いか? 意外と大物である。
見つめ合う事僅か数秒、木の怪物は踵を返し、瞬く間に山を登って行く。
「貴様の顔、覚えたからな!」
「美しくて覚えやすいでしょ?」
そんな軽口が聞こえたかどうかは知らないが、当座の脅威は去った。
ああ言った脅威と正面から渡り合う為にも、平均レベルだけでなく僕自身のレベル上げが必要かもしれない。
僕は3個ある迷宮核の消化を急ぎつつ、僕自身にエネルギーの注入を始めた。
それにしてもルメールか、知り合いがいるのは幸運だった。
何せ、イベント等の傾向から見ると、リコードクリスタルも必ずしも同じ世界の過去とは限らないからだ。
異世界だったら異なる理を神々が課している可能性も十分に考えられるし、考察の当てが外れまくる事はありえた。
その点同じ世界なら、歴史は地続きで理は変わらず、だ。
取り敢えず現時点で集まっているワードは、ルメール、結晶樹、鬼ノ国、スライム。
そう言えば、鬼ノ国からやって来た白羅が、吸血鬼達の持っていたスキル結晶を精霊島から盗んだとかどうとか言っていた事があったな。
となると、この島はやがて精霊島と呼ばれる島なのかも知れない。




