第8話 迷宮を喰う 三
第四位階中位
新たにゴンスケを味方に加え、迷宮核の支配権を強奪、迷宮を解体した。
その頃には日も暮れて、16日目も終わりを迎えようとしていた。
通常であればそろそろ休む場所を探す所だが、レベル50もあればその心配もなく、取り敢えず迷宮核や溜め込んだ獲物を皆で消化しつつ、飢餓や暴食を宥める。
増大するエネルギーは、眷属達の平均レベルを上げるのに消費して行く。
流石に眷属達の規模が増して来たので、新たな手札を使う時だ。
大きさと頭数に物を言わせてほぼローラー作戦で、木々を伐採し、時たま現れる獣を狩り北上して行く。
とても1日では食べ切れない量の資材を確保しつつの進行は、遂に山裾にまで到達した。
其処で再度、魔力の気配。
——迷宮だ。
やはり距離感としては結構な密度で密集していると言えるだろう。
大分余裕ができて来た今だからこそ分かるが、大気中の魔力濃度もやや濃い様であるし、地脈がより濃く、そして近く存在している可能性は十分考えられる。
迷宮が密集する条件が整っているのだろう。
そんな考察をしつつ、ローラー回収をしながら迷宮へ直進した。
◇
踏み込んだ迷宮に出て来た魔物は、犬の魔物。
鼠、猪、犬と来たら、次の迷宮は鶏でも出るのだろうか?
ともあれ、例によって出現したスライムは眷属に頂き、蝙蝠と子犬は殲滅、第一層を抜けた。
向かった第二層は、犬が蔓延るワンワンパーク。
特段強い魔物が出る気配も無いので、平均レベル40に迫る皆に殲滅を任せた。
僕の方は、レベル50のメンバーを全員ボラシティスライムに変化、飢餓と暴食を受け渡し、早速ゴンスケの解析に入る。
そうこうしてる内に二層の攻略は終わり、三層の黄色い犬達の殲滅が終わる頃、ゴンスケとついでにサンゾーの解析を終えた。
結論から言うと、情報は殆ど得られなかった。
刀ヶ丘には期待していたが、刀がいっぱいある所くらいの情報しか得られず、結果的に唯一得られた情報は、この島が鬼ノ国付近にあるであろうと言う予測のみ。
まぁ、何も得られないよりはマシである。
つまらぬ解析を終えて、第四層。
石を飛ばす犬の群れを突破すると、第五層に現れたのは、石を飛ばすタイプのコボルトの上位種。
推定レベル17のそれ等も易々突破し、第六層。武装の整ったコボルト達を越え、第七層に入った。
出現したのは、推定レベル26、最早人並みのサイズに成長した上位魔法戦士コボルト。
戦闘力は、今までの雑魚の中で最も強く、また取り巻きに武装魔法戦士コボルトを従えたそれ等は、危険度も今までで1番高い。
だが、生憎のレベル差と練度でそれらを圧倒、殲滅した。
新入りも含めたレベル平均が40になった所で、ボス戦である。
門を押し開くと、其処にいたのは大型のコボルト。推定レベル35。
『っ! 門が……!』
やはり何やら飼われていたらしい。
開かれた扉に反応したそれに僕は微笑んでみせた。
『名でも聞こうか?』
『っ! お、俺は、村1番の力持ち、マツシローだぁ』
『ふははは、拙者鬼斬りサンゾー! 推して参る!』
『儂も戦うと言う事でよろしかったか?』
『ぐおっ? 体が勝手に!? 逃げてけろ!』
軽々と振り下ろされたのは、ゴツい金棒。
それをサンゾーはヒョイっと避け、ゴンスケが全身を使って金棒を抑えにかかる。
『すらいむぼでいはこう使えば良いか。サンゾーよ、斬って参れ!』
『言われずとも、参る!』
今度こそ、硬質化された刀と言うより鈍器の一撃が、マツシローのガードに使われた腕に入る。
『いでぇっ!? いでぇよぉー!』
そんな嘆きの声を上げながらも、迷宮の敵意にコントロールされたマツシローは止まらない。
サンゾーへ、折れていない方の腕で殴りかかった。
それは見事にサンゾーの顔面に直撃する。
『ぐぼぁ! 拙者の鬼生に一片の悔いも』
『やっている場合か!』
何故か死ぬと思って辞世の句を残そうとするサンゾーに喝を入れ、ゴンスケはマツシローへ立ち上がり様の突きを放つ。
硬質化されたスライムボディの槍は、マツシローの腕を貫いた。
『いでぇ!! や、やめてけろ!! 俺死にたくねっ! 誰か、誰か助けてけろ!!』
マツシローの悲痛な叫びも、僕以外には聞こえていないので無意味である。
でも可哀想なので此処までにしておく。
僕は戦うゴンスケとサンゾーの前に出た。
僕目掛け拳を振るったマツシローの懐に入ると、一撃でマツシローの首を刎ねる。
『スライムになーれ』
『見事、鮮やか!』
『流石は主様』
マツシローの肉体をボラシティスライム達に捕食させつつ、開いた宝箱の中にあったのは、石を飛ばす魔法が記録された水晶玉。
勿論要らないので、これもボラシティ達に消化させる。
時刻は夜を超えて、もう暫くすると朝日が覗くであろう時間帯。
僕は3個目になる迷宮核を引っこ抜き、じわじわと迷宮の解体を進めた。




