第7話 迷宮を喰う 二
第四位階中位
全てのエネルギーを回収し、地上に這い出る。
壁の仄かな光が消えて真っ暗になり、徐々に崩れ始める迷宮からのっそり脱出し、得られた膨大……と言うには思ってたより少ない魔力を配下達に分配してレベル上げに利用していく。
新たに10体のレベル50を迎えて、暴食の一部を割り振るボラシティスライムに変化、僕の負担を軽減させて行く。
そんなこんなで、再度山の頂上を目指して木々を伐採抜根しつつ北上していると、またもや強い魔力の気配を感じ取った。
迷宮である。
作業しながらのろのろと進んだ16日目のおやつ時。
僅か半日程度で次の迷宮が見つかるなんて、配置としてはそこそこの密度である。
偶々と言う可能性も十分あるが……誰かが意図して配置した可能性もありえる……まぁ、そう言う事もあろう。
僕は今もころころ転がして食べている迷宮核の旨味に思いを馳せながら、木々を回収しつつ、迷宮方面へ直進した。
◇
しばらく進み、見えて来たのは、小さな崖に空いた洞穴。
ちょうど良く、迷宮から数十匹の猪が溢れ出す所だった。
何故このタイミングで放出を行なったのか分からないが、軽度スタンピードである。
この猪の群れは、暫し周辺の生き物へ攻撃を行ない、後に迷宮の支配から脱却、自然へ適応して行く。
まぁ、美味しく産まれた事を嘆いてくれ。
僕はヒュージスライムサイズのボラシティスライムを13匹放ち、小さな崖を包囲した。
それを狭めると、猪達は全員まるで火に入る兎の様にボラシティスライム達に突っ込んだ。
スライムの中でジタバタもがく猪達は、少し後にゴボッと泡を吹き、力尽きた。
まぁ、流石にレベル差があるからね。
そんな感想を抱きつつ、迷宮の薄暗闇に踏み込んだ。
◇
敵の想定レベルは6。
一層に出て来たのは、蝙蝠とスライム、ウリ坊だった。
例によってスライムは眷属として迎え入れ、それ以外はレベル30のバトルスライムに駆逐させる。
そんな中に、変な者が混じる。
『拙者サンゾーと申す! いざ尋常に勝負ー!!』
飛び掛かった小鬼の様な見た目のサンゾーは、ぷよぷよした刀の様な物をウリ坊にバチンッと叩き付け、ぶっ飛ばしている。
まぁ壊れてたのを多少直しはしたが、今の僕に細かい魂の調整は出来ない、暫くはこの小煩い状態が続くだろう。
まぁ、仲間に攻撃しない分別があるだけで十分である。
程なくして、一層の攻略も終わり、続けて第二層。
現れたのは、成長した猪。推定レベルは9と少し高いが、構わずバトルスライム達で蹂躙。
第二層は大した事もなく殲滅を終え、第三層。
此処に現れたのは、土属性の黄色の猪だった。
「ふむ」
どうやら、この土地は土属性の気が優勢らしい。
偶然という可能性もあるが、概ねその判断で間違いないだろう。
黄色い猪達を駆逐して、向かった第四層では、黄色い大猪が現れた。
想定レベルは15と高めであり、サイズも大きい。
それなりの苦戦を強いられるも、これを殲滅。第四層を駆け抜けた。
続けて第五層。
現れたのは、土の鎧を纏う大猪と猪の群れ。
想定レベルは15と18で、防御力に秀でたタイプだった。
勿論、バトルスライム達の数の暴力でこれを殲滅した。
更に続けた第六層。
現れたのは、土砂を射出してくるタイプの大猪と猪の群れ。
想定レベルは19と21で、流石のレベル30バトルスライム達も時折引いて僕の元で補給しながらの戦闘になった。
此処まで来ると、レベル50のスライム達も出動させ、闘気スライムとして参戦する。
第六層は今までで1番時間を掛けての攻略となった。
向かった第七層。
其処は、想定レベル26の超大型猪が散見される階層だった。
群れだったら多少危険ではあったが、単体なら話は別だ。
レベル50の闘気スライムが相手を抑え、数の暴力で囲んでめった撃ちにすれば良いだけの簡単な話である。
そんなこんなで第七層もあっさり終えて、新入り達の平均レベルも30に揃えた所で、ボス部屋である。
入ったその場にいたのは、槍持つ猪頭の人型。
双角を持つ、鬼だ。
『おぉぉ! 遂に門が開いたか!』
さっき聞いた様な声に僕は微笑む。
此処らの迷宮は何かを飼ってるらしいな。
『儂は刀ヶ丘の衛士、ゴン……何であったか……ゴンスエ、いや、そう、ゴンスケと申す——うぬわぁ! 体が勝手に』
『ぬん! 此奴やりおる! 拙者は鬼斬りサンゾー! いざ尋常に勝負!』
『ぐぬぬ、戦いとう無いでござる! どうかお逃げくだされ!』
今回の奴は割と知性が残っているが、記憶は殆ど無さそうである。
唯一刀ヶ丘とか言うのは興味が引かれるが、収穫はそう多く無いだろう。
およそ推定レベル30の猪鬼。その闘気宿す槍の突き込みに対し、サンゾーは刀の様な物で受けようとするも、当然受けきれず、体を貫かれた。
『ぐはっ……我が鬼生に一片の悔いも無し……』
『あぁ! 何と言う事か! 童を殺めてしもうた……!』
死んで無いが、まぁ良いや。
『スライムになーれー』
『ぐぼぁッ!? 無念……』
『……は! せ、拙者、生きてござる』
色々と大惨事だが、気にせずゴンスケの体をボラシティスライム達に喰らわせる。
宝箱から出て来たのは、石塊の散弾を放つハンマー。
此方もボラシティスライム達に宝箱毎喰わせておく。
良い物なら残しても良いが、生憎と石を放つ程度の術なら、喰った魂や魔石から回収済みである。
僕は僕の仕事をすべく、迷宮核を引っこ抜いた。




