第1話 新たに一歩
第八位階下位
天界を落とす為にその犬である教国を落とす。
その為に、熾天使級堕天使がいると目されるグラシアの悪魔達の宮殿に向かう。
更にその為の、鹵獲した戦力の安定化等を考慮して出発予定時刻を明日に決定した。
凡ゆる準備を入念に行ない、僕が出来る多くの事を済ませ、早めの夕食も済ませた所で、遂にやれる事が後2つになってしまったので、選択の時だ。
1つは、万象のチケットに挑む事。
いつでも挑んで良いだろうが、戦力的に僕の本体と精鋭が挑む事になるだろうし、もう少し待機担当黒霧の全体のレベルを上げてから挑みたい。
2つ目は、リコードクリスタル。
既に鍵も2個確保している為、良い加減に挑まないと、奴の主張が激しくなるかもしれない。
戦力の確保がある可能性があるので、準備期間が伸びるかもしれないが、それも一晩あれば問題なかろう。
と言う訳で、僕は追憶結晶に挑む事とした。
◇
所変わって、外と同じ、相変わらずの黄昏れの舞台。
遠い空から斜陽が降り注ぎ、視界は赤く焼けている。
一方で、沈む日の反対側は青に染まり、世界は赤と青で二分されていた。
「……」
特に奴等が発生する事も無い様なので、早速リコードクリスタルのキーを取り出す。
少し悩み、ここは敢えての、リベリオン・リコードの隣を選択した。
結晶は明滅しながら光を放ち、やがて青い粒子を振り撒いて、派手に砕け散った。
割れた結晶は、空で寄り集まり、一つの水晶玉を形成する。
追憶結晶 品質? レア度? 耐久力?
備考:『飢餓の追憶記』 其処にはなんでもある、何もない君と違って。
相変わらずの派手な演出に、未だに見通せない水晶玉。
《追憶結晶を起動しますか?》
そんないつぞやにも聞いた問いに、僕はYESと答えた。
◇
果てなき白の世界に降り立ち、少し待つ。
《解析が完了しました》
《飢餓の追憶記は『魔粘体』型種に固定されています》
魔粘体とは。
《持ち込み枠に登録するアイテムを選んでください》
《登録はいつでも可能です》
当然そんな質問に答える筈もなく、先を促される。
《飢餓の追憶記は3つまでに固定されています》
《また、指定された魔典の持ち込みに制限がかけられています》
なんだと。
そう思うのも束の間に表示されたリストへ試しに金の本を入れてみるも、弾かれた。
持ち込み枠も少ない中で、これは中々いやらしい手を打って来る。
取り敢えずはどうしようもないインベントリのスキル結晶を入れ、後の2枠は必要に応じて使う事とした。
《スキルポイントを30P配布、スキルを選択してください》
これは勿論、錬金術。
全ての基礎が詰まったこのセットは、最初から最後までお世話になるので、意外と重要である。
《飢餓の追憶記を開始しますか?》
僕はその問いに、YESを選択した。
◇
暗闇から意識が浮上する。
意識がはっきりとしたのに、依然視界は真っ暗だった。
そういえば魔粘体とか言っていたが……やっぱりこれは——
「……」
体を動かすと、直ぐに分かる球体ボディ。
……スライムだなぁ。
そう思った次の瞬間、僕の意識はまた途切れる事となる。




