掌話 神々の残影 四
紫がかった光が空を覆い、5つの闇色の柱が出現すると共に、現れたのは闇神の残影。
狼頭、獅子頭、鴉頭、蜥蜴頭、そして山羊頭の大型悪魔。
偶々その柱の近くにいたカナタは、即座に超必殺級武技を放った。
「ギガシザー!」
「イーグルサイス!」
出現した巨大な蟹爪が獅子頭の悪魔の胴を両断し、同時に出現した巨大な緑の鷲が、その鉤爪を頭部に叩き付ける。
しかし、フウカの放った巨大な鷲の鉤爪は、獅子の太い両腕を破壊するに留まった。
更に殺到する武技の数々に対し、獅子の悪魔はその能力を解放する。
「グォォッッーー!!」
響き渡る咆哮は怖気を伴い、効果範囲内のプレイヤーは背筋を震わせて動きが止まった。
通常武技は軒並み不発に終わる、獅子頭悪魔の厄介なキャンセル技。
しかしそれも専用武技には効かず、強力な武技が次々命中、結晶を破壊した。
同じ様にあちこちで武技が放たれ、巨大な回転するスパイクや、様々な動物、竜の一部が派手に炸裂する。
同時に鴉頭の放つ複数対象攻撃、鴉の群れや、狼頭の少数対象高威力攻撃、狼の群れ、蜥蜴頭のブレスや山羊頭の闇の噴出が放たれ、幾らかの青い粒子が舞った。
そんな中で、偶々人の層が浅く、最後に生き残った蜥蜴頭が、6本の闇の翼刃を放ち、また僅かに青い粒子を舞い散らせ、殺到する武技の嵐を前に塵となって消滅した。
重なる物量のウェーブさえ無ければ、最も御し易いと判断された闇の残影は、これにてあっさり終わる事となる。
◇
光神の残影に相対したのは、大剣士の一派、幹部級の面々。
ドラゴン系のアーツを揃える彼等は、レギオンを率いて、複数に別れた残影に対し、先ず遠距離攻撃を行なった。
降り注ぐのは、補給したての破石類や、ハンドメイドのアイテムの数々。
それにより先ず12体の白騎士が殲滅された。
前日と比べた手応えの無さに、昨日が余程強化されていたのだろうと、試練と言う言葉に納得し、彼等は接近戦を命じる。
目的は、確実に残影を討つ為であり、同時に指揮下にある者に富を分配する為でもある。
高確率でデスペナルティーを受ける事になるが、それよりも少しでもダメージを与える方が得になる。残影襲撃イベントはそんなプレイヤーに優しいイベントだった。
低レベルのプレイヤー達が、たった6体の重装騎士に次々武技を放ち、時に青い粒子を振り撒きながらもそれを突破する。
続けて中堅を交えた部隊が被害を出しながら3体の巨獣型を討ち、更に続けて上位クラスを交えた部隊が2体の大型ゴーレムを討ち果たす。
そして最後、1体の巨大騎士に、相対するのはトッププレイヤー達。
そのドラゴン系の武技が殺到し、騎士は抵抗虚しく数十に渡る超必殺を受けて討滅された。
闇神の残影と時同じくして、光神の残影もあっさりと討たれる事となった訳である。
◇
そんな戦いがあちこちで繰り広げられる中、土神の残影では、その硬さと苦戦の記憶、または記録故か、集まるプレイヤーの数が少なかった。
地味な土属性の人気が少なかったのも理由の一端だろう。
集まった数少ない、だが数千に及ぶプレイヤー達は、オーロラと柱の出現、土神の残影の降臨から、我先にと巨大な残影の坂道を登って行く。
大剣士の連合が三層を目指して突き進む中、大半のプレイヤーは一層に雪崩れ込み、一部はそれを見越して二層を目指した。
雑魚と言い切れない強さの敵の群れはいない、それ故に消耗はゼロ。
おまけにこれだけの人数がいる。
きっと直ぐに残影の結晶は砕け散るだろう。
そんなプレイヤー達の想定は、容易に裏切られた。
——初撃。
無数の武技や専用武技が放たれ、結晶にダメージを重ねる。
硬直したプレイヤー達。
それを後ろから押すプレイヤー。
我先にと前に出ては武技を放ち、度重なるフレンドリーファイア。
後から後から人津波。
強者も弱者も呑まれ行き、青が彩る泡沫へ。
犇めく人の群れの上——
——パッと、花畑が咲いた。
そこから先は、叫喚地獄。
降り注ぐ異常数の種の弾。
踏み潰される弱者。
背を撃たれる強者。
青が忽ちに溢れ出し、僅か一瞬の内に淘汰は成された。
後に残るのは、踏まれたくらいでは死なない強者と、運良く生き残った者達。そして何より、新たに生じた無数の魔物。
そこは開いた地獄の門の前、沙汰待つばかりの囚人に、勝利の女神は微笑まない。
英雄達を唯一退けた、土神の威光を舐めた罰。
比較的強者が揃った二層も、同じ末路を辿った。




