掌話 神々の残影 一
第四位階中位
各教会から得た事前情報によると、今回出現するのは残影1体。
1番気になっていた光神の残影は例年ならば白騎士10、重装騎士5、獣型3、大型2、本体1であり、あれほど強くは無いどころか、他の試練よりも英傑を要しない筈なのだとか。
態々その説明があった事から、今回はそれが該当するだろうと言う、プレイヤー陣営の希望的観測だ。
粘り強い交渉……と言う程でも無い交渉の末、火神の残影には俺達だけで当たれる事となった。
勿論、全てのプレイヤーがそれに納得するかと言うとそんな事は無い筈なので、その交渉は内々にのみ有効だ。
一応掲示板で1パーティーのみで挑む旨の発言は残しておくが、そう上手く事は運ばないだろう。
他の残影に関しては、マスター同好会なる新組織が水神の残影、拳姫達が風神の残影、目立つ幾らかのハイレベルプレイヤーは残る土神や闇神、光神の残影との戦いに名乗りを上げた。
◇
準備を終え、戦場に立つ。
見回した其処には、プレイヤーの影はあまり無い。
思いの外牽制が効いたらしく、また中には壁際でエールを送られたりもした。
応援の声に応えつつバフを掛けながら戦場の奥へと歩む。
高鳴る鼓動を抑えて深呼吸をしていると、果たして、数字は0に変わった。
次の瞬間、空に赤いオーロラが駆け抜ける。
「……綺麗」
「幻想的……」
「凄い演出にゃ」
女性陣が反応する中、それは空から生じた。
——直ぐ真横だ。
赤いオーロラがゆっくりと、柱の如く降り注ぎ、そして——
——赤の巨人が現れた。
「ッ、いきなりだな」
迸る赤いオーラを噴出させ、登場演出をしている巨人。
それに早速仕掛ける。
「最初から全力だ! 俺に続け!」
フォローミーと指示を出し、直したばかりの剣を抜き放った。
接近すると共に、巨人は直ぐに此方へ向き直り、拳を構える。
「一撃だ、喰らって砕けろ!」
気合いを入れると、何となく威力が上がる気がする。
そんな迷信じみた噂に、操気法なる技術が関係していると信じて剣へ魔力を込めるイメージを行ない——
「ドラゴンッ・キラーッ!!」
——振り下ろした。
現出した竜のオーラは、巨人の拳と衝突する。
激しいせめぎ合いの末、巨人の拳が砕け、結晶が一撃で砕け散る。
そうと思う内に、横を駆け抜けたテルマとネネコが超必殺を放った。
「ドラゴンックラッシャー!!」
「フレアプレス!!」
放たれた2つの巨大なオーラが、それぞれの足に直撃し、それを大きく破損させた。
其処に迫るのは、赤の刃と炎の吐息。
「ドラゴンブレス!!」
「マルチプル、ドラゴンシュート!!」
炸裂した2つの超必殺が結晶を砕き足2本が崩れ去る。
巨人は巨体を大きく揺らしながら倒れ込み、その間に俺達は残る腕とは反対方向に回り込んだ。
マナポーションを決めつつ、モンスターカードでドラゴンを召喚して少しでもダメージを与えながら、次撃に備えていると、聞こえて来るのは武技を放つ声。
時折専用武技が放たれ、数少ない其れ等が巨人の腕を穿つ。
そんな中、それは起きた。
——想定内だ。
巨人が腕を振り上げるのは。
残った1本の腕は、空に高く掲げられ、紅く赤熱化する。
「来るぞ!」
その声に応えた様に、腕が大地へ叩き付けられた。
爆発——
——轟音。
凄まじい振動が大地を伝い、危うく転びそうになる。
流石に備えていただけあり、皆衝撃に耐えたが、戦場は酷い有様だった。
噴き上がった炎は青い粒子を幾重にも纏って吹き抜け、生きている者の方が少ない地獄絵図。
腕側に転がっている者達は軒並み気絶状態で、立っている者は誰1人としていなかった。
「ラスト、行くぞ!」
叱咤激励の声を放ち、大地を蹴る。
狙うは、直接胴体への攻撃。
接近するや、俺達は武技を放った。
「ドラゴンキラー!!」
「ドラゴンクラッシャー!!」
「フレアプレス!!」
「ドラゴンブレス!!」
「マルチプルドラゴンシュート!!」
次々と直撃する攻撃は巨人の胴体を削り、何故か腕の結晶が砕け散る。
そうかと思えば、胴体から大きく色を減じさせた結晶が現れた。
ダメージが分散したらしい。
硬直が解けるや、俺は直ぐ様被弾を無視して突っ込み、剣を振るった。
これで終わってくれよ!!
「ドラゴンックロー!!」
出現した竜の腕が、炎を纏う結晶へ叩き付けられる。
鉤爪は結晶を叩き潰さんと振るわれ、そして——
——砕け散った。
「……」
残心。
と言うか気絶寸前。
流石にもう、ドラゴンキラーは撃てない。ドラゴンクローも出来て1発。それを撃ったら気を失う。
それぐらいの疲労感の中、どうにか立ち上がる。
振り返りながら拳を振り上げ——
「——勝ちだッ……!!」
勝利の宣言と共に、目の前に木箱が落ちて来た。




