第15話 帰宅、出発
第八位階下位
帰宅。
する必要性があるかと言えば、ある。
分家が管理する総本山こそが自宅ではないかと言う説は取り敢えず置いておいて、他家に長期間留まると、他の分家達からラブコールが来るのだ。
勿論暇があると言えばあるが、あちこちに何日も泊まる程の暇は無いのだ。
夏には定期検診もあるし、僕は僕の仕事で忙しい時もある。
まぁ、今年に限って言えば皆アナザーで忙しいし、アナザーで会う事も出来るので、大丈夫だとは思うが、それこそ僕もアナザーで忙しいので、早めに帰る事とし、今日の予定と相なった訳である。
「ユッキー家に泊まりに行っても良いですか!!」
「ペットの世話で一々帰るんだから家にいなさい」
「くぅ、皆自分のお世話は自分で出来るけどねぇ!」
しょうがないと唸るリンカちゃん。
僕は多少の手荷物を持ち、肩をすくめた。
「ふふん、おにぇちゃんのお世話はアヤに任せといてよ!」
「くうぅ、自慢が刺さる! 生写真よろッ!」
「任せて!!」
やれやれ……生写真って何だ。
妹達の怪しい取引に疑問を抱きつつも、真っ直ぐ帰宅する事となった。
◇
帝国と革命軍の所為で帰り時刻がやや押していたが、ほぼ予定通りのおやつ時に帰宅。
何か変化が無いか一時ログインして確認してから、久しぶりの掃除を行ない、雑事を終えて、再度ログインした。
改めて、先ずはクルーエルと対話する。
形ばかりの執務室で、黒霧を横に伴い、机越しにクルーエルと対面する。
クルーエルの横にはブランことフブキが立ち、様子を見守っている。
「因みにクルーエル、どっちがブランか分かる?」
「え? ……こ、こっちよ!」
言うやクルーエルは僅かに悩み、しっかりと隣に立つフブキを指差した。
「正解」
「と、当然だわ!」
「因みにブランとは世を忍ぶ仮の名で本当の名前はフブキだよ」
「っ! フブキ……! 良い響きだわ……!!」
これで分かる通り、フブキは僅か数日で全肯定生物を生み出してしまったらしい。
元々その素養もあっただろうが、堕天した今となってはもはやフブキ専用天使である。
「実は僕、フブキの姉で天界を支配しようと思ってるんだ」
「フブキのお姉さん……!! 初めまして! フブキの夫のクルーエルです!」
もうだめだコイツ。
「夫だったっけ?」
「僕の可愛いペット、ちゅ」
「ひゃ! ダメよブラン、じゃなくてフブキ、お姉さんが見てる……」
ダメなのはお前だ。
しかしフブキも絆された物である。
「天界を支配するに当たって、君は熾天使級に成長して貰う、良いね?」
「熾天使様に……? そんなの——」
戸惑うクルーエルに、横のフブキが囁く。
「——出来るよね、クルーエル」
「……で、出来るかもしれないわ」
「出来るよ、クルーエルなら」
「そ、そうかしら」
流石の全肯定クルーエルも肯定し兼ねる内容だった様だ。知性が残っていて良かった。いや、無くても良いんだけどね。
「直ぐになれるさ。そしたら敵の天使を殲滅、魂の捕獲をして貰う」
「魂の捕獲……天使の魂を得てどうするつもり……?」
「育てたり? 目標は天界の再構築だけどね」
「成る程……分かったわ」
天界の再構築と言う部分で、クルーエルはそっと視線を下げ、頷いた。
共感したのだ。天界は再構築されなければならないと。
それで十分に、クルーエルは僕達の味方だ。
「私、頑張る! フブキと、貴女の期待に応えて見せるわ!」
彼女にとっての、天使の誇りを守る為に。
まぁ、修行と情報提供でそんな事どうでも良くなると思うけどね。
僕とフブキは、ただ微笑みながら頷いた。
◇
続けてバーチスとの対話だ。
クルーエルの去った執務室で、向き合う。
先に口を開いたのは、バーチス。
「……帝国はどうやら、教国を通して天界と取引をしていた様だ」
「ふむ、妥当だね」
少なくとも伝手と言う点においては、そうである事が自然だ。
「そして、教国は既にほぼ全ての地が天界の支配下にある様でもある」
「ほう」
それはつまり、帝国へ天使を提供したのは、やはり天界であったと言う事だ。
「街一つ一つに守護する天使、護信軍なる者達とアルケーがいるとか」
「ふむふむ」
守護とは名ばかりの縄張りか。
「天使提供の代償は?」
「研究成果だ。特に刻印兵や人造魔人に強い興味を抱いていた様に見えた」
「ふむ」
成る程。
天界は、一つの事実として、天使が増える毎に信仰のフィルターが不純化し、異形の天使が発生しやすくなる。
天界が、防衛本能により天使を消費したいと思っているのだとして、刻印兵や人造魔人の人口魔石を使った技術は、あればある程良いだろう。
いらない天使を有効に使えるからだ。
となると、目的は決まった。
最終目標は天界として、次の目標は教国シャンディリア。そしてその前に、魔界のあるエリアを攻める。
そこには、天界の事情を全て知る筈の人物、熾天使がいる。
「ルカナを」
「はっ」
第一目標、グラシアの堕天使。
後顧の憂を断つ意味でも、最初にそこを落としておこう。
魔界の様子も知れるしね。
・第十六節:第四項、帝国の支配——完
エルダ帝国の攻略 完




