第12話 試練
第八位階下位
水瓶の試練の報酬は、おおよそ4つ。
先ず、海淵魔殿のと付く鍵と壺のアイテム、永遠之宝瓶。
内部の操作が自在で、浮遊都市並みの空間を用意できる住居型のアイテムだ。
水系統に相性が良いので、そのままクリカ行きである。
変容させてクリカの背中にコーティングして出入り口を複数作れば、クリカの背中に地下が作れる上に防御力も増す仕様である。
次に、盾型装備、悠久之宝扉。
決して開く事の無いであろう扉である。
左右対称の二枚貝の殻型で、所々に真珠の様な煌めきが着いており、アクセントにサファイアの様な青い輝きが見られる為、盾と言うより飾りの様だが、物凄く硬い。
平たい盾だが表面と裏面には二枚貝らしき開閉部がある。
一応壊れる時はそこから2つに砕けるだろうが、概念上決して開く様には出来ていない扉である。
次、久遠之宝棺と言う名の鎧。
此方も盾と同様のデザインで、アクセントはブルーの宝石。
肩当てや腕甲、膝当て等、所々でゴツイ荒っぽさが見られ、全身を完全に覆い尽くす仕様だが、実際には形状自在の鎧であり、動きに阻害は無い。
それでいて外部からの衝撃には極めて頑丈と言う……まぁ、鎧として必要な要素は満たしている。
満たしている上で、ただひたすらに硬いという装備である。
そして最後に、不壊不滅と名の付く魔導鎧の外装。
ゴツゴツした貝の盾、パーフェクトリーとは違い、螺旋を描く貝の盾が2つ浮遊するパーツだ。
水の膜を張ったり硬化したり、大きくなったり小さくなったりと、防御に特化したパーツである。
不壊と言うだけあって硬いが、不滅と言うだけあって破損しても直ぐに再生する効果を持つ盾だ。
コレら3種の装備は、全てが殻系統の性質を持つので、少し悩んだが、イモータリーをマルボレアスの防御力強化の為に与え、後の2つはサラナギアに取り込ませる事とした。
サラナギアならば、貝殻の盾と鎧をそのまま本体の一部に出来るから、単純に生存率が爆発的に上昇するだけで無く、それこそやり方次第では誰かの鎧に転身して、パワードスーツよろしく誰かの戦闘力を爆発的に高める事が出来るだろう。
それこそ、流動する龍身、オルケニウスの攻勢鎧となれば、クリカにすら匹敵する力を発揮出来るかもしれない。
最後は、例によって海淵魔殿の御霊と、魂と名の付く涙滴結晶、鍵の欠片。
これで星天の試練は5つ目だが、天霊の試練の様に既にクリア済みの物もあるかもしれないので、案外試練を探すより鍵の欠片を探す方が手間かもしれないね。
そうこうやってる内に帝国もクライマックスへ刻一刻と進んでいるが、それを気にしつつも、捕らえた巨大アンモナイトの詳細調査を行う。
トロイの木馬みたいな時限爆弾はごめんだから、帝国には悪いけど仕方ないね。
詳しい調査の結果、分かったのは、この魂がほぼ三重以上の魂魄で魂を構築していたと言う事。
例によって迷宮核に宿る魂は勿論の事、代表的な魂は3種、ビルグ、カルース、クレースの蟹三兄妹の物に近い魂だ。
それらに付随して、複数の寡黙な蟹達の魂も混ざり、それを礎に強固な魂魄を形成していた。
やはりと言うか、事故的とは言え一度記憶を持って転生した個体は、もう一度記憶の一部を引き継いで転生するケースが多い様に思える。
転生経験を経たからだろう。中々に貴重なデータである。
マルボレアス君は、余程永い時を経たか、魂の整理はきっちりしており、全ての魂はほぼ一つに纏め上げられている。
徐々に仲間達が自分に浸透して行くのは、彼にとって孤独では無かった様だ。
最後のイマジナリー2票は、せっかくなので彼に浸透させず、人格を固定した演算装置を2つ付ける事にした。
まぁ、既にだいぶ浸透が進んでいるし、ほぼ自分に等しい演算補助装置が2個付いただけの事だ。
この事は特段ビルグ達にも彼にも言わない事とした。
また、体内に存在した迷宮核はと言うと、機能だけ全て分離させて黒霧処理を施し、拡大して物が増えたクリカの背中の管理を任せる事とした。
これで、クリカとマルボレアスは一蓮托生のコンビとなった。
頭数と言う意味の規模を考えるとクリカ軍団にはもう少し手を加える必要があるだろうが、それは帝国攻略後にでも考えよう。
◇◆◇
幾重に、剣を交える。
衝突の度に、単純な力の差を感じる。
足りないのはおそらく、質では無く、量。
そうと分かれば、大気から魔力を吸収し、それでも尚、届きはしない。
気を強く練り上げ、出来得る限りの闘気を纏い、可能な限りの技量を込めるも、鋼の騎士には傷を刻むのが精一杯。
その膨大な魔力の壁を貫き、鋼の身体を断ち切るには、単純な力の量が足りていなかった。
……この試練、どうやら、越えられる物では無かったらしい。
やはり、神罰は正しい。
死こそが、私の罪を贖う唯一の手段なのだろう。
そう思い、振るわれた刃に身を晒した次の瞬間、血飛沫が舞う。
私では無い、師の血が。
「っ、何故!」
「神は言った、試練を2人で越えて見せよと」
「何ッ?」
「戦えメルス! 生き延びるのだ!」
生きよと、そう吼える師。
振るわれる斬撃に杖を合わせて弾き、防御魔法で次撃を払う。
防御をしつつ治療もこなす、その魔術と武術の技量足るは、やはり卓越していた。
「1体は仕留めた、もう1体にはお前の力が必要だ」
「っ」
この偏屈な師から、生きろと言われるのも必要だと言われるのも、初めての事だった。
驚きつつも鋼の騎士と剣を交える。
「暫し保て、術を組む」
そう言い、師は残りの魔力の限りを練り上げ、魔法を組み上げて行く。
何と言う事も無い、石槍の魔法。
尋常ならざる力で練り固められたそれが、私と剣を交える鋼の騎士に叩き付けられた。




