第9話 技術力を御覧じよう 二
第八位階下位
支配を受けたまま自刃しようとした忠の者、狂ーえるを止め、クルーエル大好きなブランが態々キスと言う形で侵食して堕天させ切る。
そんな光景を横目に帝国の動きを待つと、3度のジャッジメント号の後、それは現れた。
レベルにして、およそ下は50から上は数が少ないが80。
温存されていた、帝国の最高傑作の一つ。
——天命騎士。
潜入した僕の調査によると、この天命騎士は、カランキュラスという名のあるアンコウの様な高位魔獣。その生み出す擬似餌の人型を利用した兵士を作る計画。
——魔造魔人計画による産物だ。
少女の形をしたそれは、人と全く同じ人体構造をしているが、腰に尻尾にも似た器官が生え、背骨から全身に神経が繋がっている。
いや、繋がっていると言うより蔓延っているとでも言うべきだろうか。
その器官はアンコウ型魔獣の命令を受諾する受信機の様な役割を持っており、そこからの命令を受けて体を動かす。
一方で、脳はその魔獣に食われた少女のそれで、思考もしている。
この計画は、その受信器官に契約魔術を行使する事で隷属下におく事で始まる。
そこから、様々な実験の材料にしたり、兵士として活用している訳である。
その究極完成系とでも言うべき代物が、天命騎士。
300体は現れたそれに、同じく300の兵士を割り当て、戦闘を開始する。
流石に戦闘用に特化して調整されているレベル80ともなれば、此方のレベル100ともタメを張る戦力だが、50前後の方がボリュームゾーンの為、特に問題なく戦闘は進んで行く。
そうこうしてる内に、次が来た。
次の帝国戦力は、魔造魔人計画の前に存在した計画、人造魔人計画の産物達だ。
レベルは、此方も50〜80と高めで、数は100程度。
殆どが支配を受けた兵隊であった。
人造魔人計画は、その前身となる魔人計画の失敗から作られた計画である。
魔人計画とは、魔石を利用した魔獣の力を持つ人を作る計画であり……何と言うか、失敗するべくして失敗する、ただの実験であった。
それと言うのも、両者特に調整などせず、そのままの魔物の魔石を埋め込んだ結果、魔力性質が合わず、当たり前の拒否反応により被験者死亡。
その後どんな方法を用いても、強力な魔獣の魔石を定着させる事は出来なかった為、この計画は凍結され、次の計画に移る事となった。
僕から言わせて貰えば、その魔石で強力な装備を作れよと言う所な訳だが、それ以上を求めた結果のありさまである。
そして、その計画の経験から新たに産まれたのが、人造魔人計画。
弱い魔獣の魔石を埋め込んだ場合、即死せずにある程度受け入れる事が出来ると分かった事から始まった計画である。
コレは、イヴの結晶化魔術をある程度盗み取った技術を用いて、術式を書き込んだ上位金属を結晶に埋め込み、それを人体に取り込ませて魔法を自在に使える人を作る計画へシフトした様だ。
確かに、弱い魔獣の魔石の抵抗力と、このレベルの人口魔石に宿る抵抗力は、概ね同じくらいだからね。
実験は成功するも、コストの割にメリットが少ないと言う事で、凍結される事になる。
そんな人造魔人達は、実質上の天命騎士の下位互換であり、所詮はちょっと特殊な人。
……とは言え、人造魔人計画は数十年前の計画であり、その成功例達は数十年に渡って酷使されている。
ちょっと特殊な人達の中の歴戦の猛者だ。
だがまぁ同じ数のゴーレムを割り当てれば、十分相手取れるだろう。
さぁ、次だよ次。まだあるでしょ!
出て来たら分体と情報共有をすると言う手前、ワクワクを胸に抱きながら、僕は次の出現を待った。
◇
目を回すクルーエルに、ブランもといフブキと共に左右から、どちらが良いか囁いてみたり、腕を組んでみたりと暇を潰す。
押したら鳴くおもちゃみたいで、そこはかとなく面白い。
「うむ」
僕の頷きと共に現れたのは、刻印兵。
レベルは此方も人造魔人と同じくらいかやや上回る程。
そんな刻印兵達は、そのまま刻印兵計画の産物である。
人体に魔法を刻み、現れるスティグマを利用すると言う企画で、案の定成功率は低く、皆激痛に耐えられずに死ぬ。
何百もの実験の末、個人の適性に沿った術式を刻むと成功率が高くなる事を突き止めたものの、やはりコスパ、特に人の消費が多い為、計画凍結となった様だ。
何気に僕がゴブリンでやってたの同じ事をしてるが、やはりモルモットは人の方がその後に転用しやすいと言う判断なのだろう。
此方も、人造魔人同様歴戦の猛者だが、100人程度の生き残りに、100体程度のゴーレムを当てがった。
続けて、魔人薬計画。
元は、竜人計画と言う物で、手に入れた竜素材と薬草類を混ぜた錠剤を作成し、誰でも英雄になれる薬を作る計画だ。
その性質から、他の強力な魔獣素材でも代用可能であり、魔人薬計画に転向される事となる。
強力な魔獣のコアなどと薬草類、もといポーション類を混ぜ、魔造魔人、天命騎士の少女に投与する実験で成功すれば、人に投与していた様である。
錠剤一つの投薬による変異である為、個人差はあれど成功例も多い様であった。
レベルは50前後と低いが、数は2000近く、割と新しい計画の産物故に歴戦と言う程では無いが、完全に押さえ込むには600程度の数のゴーレムを動員した。
そして、最後に、最後に……最後……?
……ええ、魔装兵計画。
魔法を組み込んだ武器を量産し、全体の質を向上させる極単純な兵器開発。
属性金属の錬成が出来る事や、魔石の汎用的な軍事転用が出来る事が前提で、高度な技術力が必要だが……まぁ、普通に何処の国も、強力な武装を安定的に生産、供給する為の技術研鑽は当たり前に行われているので、計画と言う程の事ではない。
レベルは30前後と低く……いやまぁ、ルベリオン王国では将軍レベルだが、他と比べて低く、軍団の数は3,000と、帝国の花形メイン軍団らしい。
武装込みならレベル60にも通ずるので、強いと言えば強い軍勢である。
何ならコレを王国へ差し向けるだけで下手したら制圧出来るレベル。
しなかったのは、王国に異常な強者。爺様や猫爺様がいる事を知っている人物が帝国にいたからだろう。
帝国の様々な計画に関しては、それだけ。
それだけ……?
ある程度成功例が出たのはそれだけだったらしい。
他にも、死霊兵計画とか、魔獣兵計画とかあった様だが、制御出来ない代物を制御出来る様にするより、制御出来る物を強化してみる方が良かったらしい。
僕の期待は早々に裏切られた。
そうこうやってる内に、革命軍がほぼ壊滅し、軍団魔法を使う一般兵や他の軍勢も次々と塵芥に変わり、滅び行く帝国。
次の瞬間、本当の最後の最後、バーチス・アルディの最高傑作は現れた。
バーチス・アルディ LV384
ナインヘッド・ケルベロス LV358MAX
——鬣付けるのやめろ。
頭近くて前見えてないのがいるだろが。
「ほう、これはこれは……参りましたね」
本当に参ったと言った調子で、天空を舞うイェガを見据えるバーチス。
黒い軍服に身を包み、帝国最高権威として裏で帝国を牛耳っていた偉才の術師。
凡ゆる逃亡ルートは今の内に埋めておくので、逃げられるとは思わない事だ。
「ナインヘッド、行きなさい」
鬣を撫で、突撃を命じる。
参りはしたが、ナインヘッドならばどうにかなるかもしれないとの結論だ。
所詮はレベル300代と言った判断。知覚力の不足。
悲しきかな。無理な物は無理である。




