第6話 絶望をあげる
第八位階下位
雄叫びを上げて、革命軍と帝都に詰めていた兵士達が衝突する。
帝国軍の最前線を彩るのは、もう十分にデータが取れているのか別の理由があるのか、妖精の力を宿した騎士達。
その中には、やけに強い、レベル100相当の力を宿した、おそらく精霊憑きがいる。
精霊にしては弱いと言うか、精霊と言うより霊と言うのが相応しい様な貧弱さだが、それでも自我を持ち、精霊を介在して力を強く行使出来るそれは、間違いなく精霊であった。
多分だが、ルェルァの研究結果から生まれた人造精霊だろう。
完成しているのかと思ったが、数が無い以上、どうやら人造精霊の量産は失敗に終わったらしい。
そんな革命軍のリーダーと精霊騎士が衝突する寸前に、間に合った。
——イェガが。
ズドンと重い音を立てて戦場のど真ん中に着地したイェガ。
僅かな沈黙を経て、それは刃を振るった。
——帝国軍の妖精騎士に。
ただの一撃で大地が抉れ、複数の赤が大地を鮮やかに彩る。
次の一撃は——革命軍に振るわれた。
同じ様に大地が抉れ、赤が飛び散る。
帝国軍も革命軍も関係なく、その斬撃は周囲の全てに襲い掛かった。
一振り十殺の勢いで次々と命を奪い続けるイェガ。それに立ち向かったのは2人。
方や、革命軍の旗頭。そこそこの才能があるターナー君。
方や、そのターナー君に良く似た顔の、同じくそこそこの才能があるシーク君。
「やっぱり、兄さんだった!」
「シーク、良かった。お前が無事で」
2人が何やら束の間、再会を喜んだ後、当たれば幸いと暴れ回るイェガと相対する。
武装込みでレベル100相当のターナー君と精霊込みでレベル100相当のシーク君。2人は同時に駆け出し、イェガへと刃を振るった。
その連携たるや、正しく双子の如き、何年も共に生き、戦って来たかの様な見事な連携。
これには、此処に来るまで連戦だったレベル100相当の子機イェガでは中々に厳しい戦いを強いられる。
しょぼい火と風の属性を宿し、辛うじて雷へと昇化された精霊剣。
同じくターナー君お気に入りの雷の槍による連携は、魔力の消耗と言う点で弱っていたイェガを追い詰め、それ等の戦いは、停滞した戦場の全ての視線を掻っ攫って行く。
イェガの重い斬撃が振るわれた。
ターナー君はその闘気に満ちた肉体を全力で酷使し、それを受け流す。
生じた大きな隙にシーク君は同じく闘気に満ちた肉体を酷使し、凄まじい雷撃の斬撃を振るった。
——直撃。
イェガ子機の防御に使われた鋼の腕甲が深々と抉られ、返す刃でイェガの剣を抑えた。
次の一撃はターナー君。
シーク君がイェガを抑えた事で生じた隙に、頭部目掛けて槍の一撃を叩き込む。
あまりの威力に弾け飛ぶ頭鎧、顕になる眼球代わりの単眼。
イェガは斬撃を振るい、2人を遠ざけた。
度重なる衝突。
ゴーレムの剛力に対する闘気の脈動。
果たして、その激戦の勝者は——
——双子の戦士。
敵味方問わず歓声が上がり、暴虐の闖入者が地に倒れ伏す。
流石のイェガも、魔力の供給が無ければ同格2体を相手に勝ちを拾えなかったか。
惜しむらくは、本体が動いてさえいなければ、演算力的に勝てていただろう事。
片手間の半自動ではそんな物か。
さぁ、次だ。
僕が合図するまでもなく、戦場には次々と子機イェガが降って来る。
革命軍と名の着く民全員が此処まで来れば、後はもう僕の盤上だ。
南部には戦力集結済み。
各地には黒霧派遣済み。
後はこの帝都周辺を残すのみ。
降り注ぐ暴虐の侵略者を前に、皆がどう動くのか、見せてもらうとしよう。
そうと思ったのも束の間。
帝都内から、其れ等は現れた。
——天使の群れ。
数百はいる天使は、皆堕天し、翼は黒く、髪は白く染まっている。
そんなレベル40程度の天使の群れの中で、明らかに強く、半分しか堕天していない個体と僕の視線が交錯した。
「っ、ブラン……?」
首輪の付けられた彼女の口から、絶望の吐息が漏れるのが聞こえた。




