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【書籍化】錬金術師ユキの攻略 〜最強を自負する美少女(?)が、本当に最強になって異世界を支配する!〜  作者: 白兎 龍
第一章 Another World Online 第十六節 エルダ帝国の攻略

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第3話 とある過去

 



 帝国北辺、山岳付近の村に、シークとターナーと言う双子がいた。


 2人に両親はいなかった。


 亡くなったのか、引き離されたのかは本人達も知らない。


 ただ割り当てられた薄ら寒いボロ小屋で、子供ながらの労働の日々を生きていた。



「兄さん、ただいま」



 そう言って、2人分の配給を持って帰ってきたのはシーク。

 ターナーは部屋の隅で静かに横たわっていた。



「……ちょすい、何とかって言うの早く完成しないかな。毎日何か混ぜたり流したり石を並べたりで……」



 申し訳程度の木製テーブルに、置かれたのは蒸した芋に、少々の野菜が入った塩スープ、僅かな量の小さな穀物。

 配給担当に配置された女衆が作った物で、ただ苦しいばかりの労働の末に生み出されたそれは、温かさだけが唯一の救いだった。


 ターナーは今日、既存の貯水槽への水汲みの仕事に配属されていた。

 冷たく重い水を背負って何度も往復する、大変な仕事だ。


 暫し愚痴った後、シークはターナーからの反応が無い事を訝しみ、声を掛けた。



「兄さん……?」



 反応は無い。



「兄さん……!」



 慌てて横たわるターナーを引き寄せ、心臓に耳を付ける。

 聞こえて来たのは、笑い声。



「く、くく」

「…………兄さん……!」



 シークはターナーの肩を強く掴み、怒りを表す様に揺り動かした。



「いや、ごめんって死んだふりじゃ無くって! ちょっと寝てたんだって、何の話だろって考えてて」

「はぁぁ……」



 本当か嘘か分からないが、とにかく深い息を吐き、シークは強く掴んでいた兄の肩を離した。


 改めて、話の続きをする。



「新しい水を貯める所、早く出来ないかなって話」

「あぁ、うーん。水汲み怠いからなぁ。ちょっと休むとこすい奴等が直ぐチクるからな」



 そう言って背中を摩るターナーに、シークも頷いて背を摩った。

 真新しい鞭打たれた傷痕と古い治り掛けの痕が交錯し、でこぼこした背中。それをしかし大した事でも無いかの様に軽く撫で、チクる奴等を思い出す。


 何でも、指導官と懇ろにしていれば、飯が奴等が食ってる物を貰えたりするらしい。


 あんな奴等と一緒の物なんてと思いこそすれ、育ち盛りの2人の腹の虫は素直に鳴いた。



「はぁぁ」

「食うか」





 2人がぼそぼそと粗末な夕食を食べ始めて間も無く、それは訪れる。



「あぁ? ガキじゃねぇか」



 乱暴にドアを開け、入って来たのは複数の男。



「コイツだよジェイゴの兄貴」



 そう言ってジェイゴと呼ばれた大男の後ろに隠れた奴に、ターナーは見覚えがあった。


 今日、ひ弱そうな男を蹴って転ばし、鬱憤晴らしをしていたゴミ野郎の一派だ。

 ボコボコにしてやったのに、懲りずに仕返しに来たらしい。


 そうと察したターナーと、何かしたなと察したシークは、即座に飯を掻き込んだ。



「おぉい、今日うちの弟分が世話に……っておいテメェら、聞けよ!」



 ガシャンっと机が蹴られるのと、シークとターナーの反撃がジェイゴを襲うのは同時だった。


 世の中悪い奴ばかりで、悪い奴は自分より弱い奴から順番に貶めて行く物だ。

 良い奴で生きて行くには、強くなければならないのだ。


 舐めていたガキ共の回し蹴りと正拳突きを頭と鳩尾にくらい、ジェイゴは開いていたドアから転がり出る。



「テメェら懲りずに来やがって」

「悪いけど、相手を間違えたね」



 そんな言葉を合図に、喧嘩が始まる。


 複数の大人相手に、2人は流石双子の連携を見せ、拳や足を振るう。

 そこには、我流にしては堅実な、技の数々があった。


 それどころか、その肉体には僅かに練気を循環させてさえいた。


 それは、2人が生まれ持った、類い稀な技の冴え、才能であった。


 しかし多勢に無勢。


 時に掴み掛かられ、シークは腕を取られる。



「おらっ!」

「ガキが!」



 ここぞと集って来た大人達に捕まえられ、子供である事なぞ関係なく、その拳が頬を撃った。



「ぐっ」

「舐めやがって!」



 更に追撃の拳を握った男に、ターナーが迫る。



「ぶっ飛ばすぞクソがッ」



 回し蹴りが男の腹部に直撃し、それを吹き飛ばす。



「なっ!?」



 シークを抑えていた男は驚き隙を見せ、それをシークは全身を使って投げ飛ばした。



「ごほっ、ぺっ……助かったよ兄さん」

「なぁに、気にすんな」



 2人はバキバキと拳を鳴らし、まるで狼の様なギラつく瞳で男達を睨み付ける。





「ひ、ひぃ」

「化け物だ!」

「に、逃げろ」



 這々の態で逃げ出した厄介者を見送り、2人は地面に座り込んだ。



「はぁはぁ、くそ、余計な疲労を」

「まったくだね、はぁ、ふぅ」



 荒い息を整えた2人は、明日の労働に備えて家に引き返す。



「さっさと寝るかぁ」

「アイツらも流石に今日は来ないだろうね」



 そう言って2人は荒い布を被り、寝床へ横になった。



 指導官の元、終わりの見えない労働をし、最低限の飯を流し込み、時に喧嘩をして、寝る。


 いつの日か、こんなゴミクズの様な日々を脱しようと誓い合い、助け合いながら生き抜いていた。



 そんな2人の運命を別つ日は、唐突に訪れた。



 

 



 とっつきやすい様にタイトルを追加しました。



 

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永遠未完『魔物解説』……ネタバレ含む。

よろしければ『黒き金糸雀は空を仰ぐ』此方も如何?
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