第2話 説得をしよう
第八位階下位
最近良く来る病院施設で、パイア達の中でも特に頭の切れる個体と話を行う。
腕を組み、警戒した様子の骸廟。
彼女は微笑む極めてフレンドリーな僕を睨み付けた。
「わち等を捕らえた所で、ドルス様への人質にはならんのぢゃ」
「うん、まぁ、ドルスはやがて捕まえる予定なんだよね」
さらっと言っておく。
今回は逃してしまったが、敵がドルスを再利用するのは明らか。
それを餌に何かを作ろうとしている場合は最早どうしようも無いが、そうで無い事を祈るとしよう。
「ふん、貴様がわち等のドルス様を? ……、……、……まぁ、可能ぢゃろうの」
目の前でぶんぶん彼女用の骨の武装を振ってみると、その鋭い獣の目がそれを三度追いかけ、彼女は深く頷いた。
まぁ、餌が無くとも当然の判断だろう。
「ぢゃからそれを寄越せ! 後生ぢゃ!!」
ばっと両腕を伸ばし、後生だからと訴える骸廟に、パッとそれを差し出した。
「あげる」
「お、おう? か、返さぬぞ。もうわちのぢゃ!!」
骨の装備、深界の腕をその小さな胸元に抱きしめる彼女に、僕は変わらずの笑みを浮かべて言う。
「君が僕の物だからね」
「ぬ、ぬぬ」
暫しぐぬぐぬ唸った後、彼女は諦めた様に頷いた。
「致し方あるまい。どの道わち等に先は無い。軍門に降るかこの場で潰えるのみ。しかし努努忘れぬ事ぞ、わち等の忠誠はドルス様にのみある事を!」
「それで構わない。必要とあらば謀反でも企てるが良い。それで僕に勝てる程の力を付けてくれたまえよ」
それが出来るならこちとら苦労はしていないのだ。
現状最強の手札であるサンディアでさえ、あの時感じた魔神の力には及ばないのだから。
ウルリエは兎も角ペルセポネまで、力の余波を抑えるので精一杯だったのは記憶に新しい。
力はあればある程良い。
「ふんむ、嘘は無さそうぢゃの。皆もそれで良いか?」
そう言って彼女は周りで口を閉じて聞いていた3人に問うた。
彼等は、交渉役を担える者が彼女だけである事をしっかりと認識出来ているのだ。
「拙者に異論無し」
「俺様も構わねぇぜ! いつでも謀反してやらぁ!!」
「破壊! 燼滅! 殺戮!!」
「謀反する時は言ってね。程よい相手を用意するから」
僕がうんうん頷きながらそう言うと、灼炎と崩天の2人はノリ良く頷いた。
「おうとも!」
「壊滅!」
「それで良いのか……?」
「知らぬ、そんな謀反は放っておけば良いのぢゃ」
これにて取り敢えずパイア達は仲間入りと言う事になった。
後は、暫し成すべき事を成そう。
「それじゃあ各員に装備の分配。それから基礎訓練の履修に、施設と現状の通達。黒霧」
「はっ」
命じると共にパイア達が眠りに着く。
「う、何だこの眠気は! ね、ね、寝る! すやぁ」
「は、破壊ぃ……すやぁ」
「何かされるんぢゃなぁ……地味に抵抗出来そうなのが不愉快ぢゃぁ……」
「軍門に降ったならば仕方あるまい、拙者も眠るとしすやぁ」
「寝付きの良い事で」
抵抗出来そうな気がしてるの何なの。するな。寝ろ。
取り敢えず、彼女等はこれで良いだろう。
謀反をすると言っているが、その実、あの時の戦力差と言う物を皆良く理解している。
ドルス級が複数控えていたのにも気付いている。
だからこそ、彼女等に関しては問題は無い。
それよりも明日から始まる帝国との戦いに向け、領内の色々な整備とか確認を進めるとしよう。
「さてさて」
帝国の謎多き技術の数々、精々見せて貰うとするかね。
……まぁ、例の魔神のせいで僕はこの地から動けないから、分身を放つ形で帝国攻めは進むだろうが。
大して動けないまでも、人々の積み上げた技術の数々が見られる事に、僕は胸を躍らせた。




