掌話 光は舞い降りる 四
第四位階中位
俺達の出る幕無く、中ボス2体は討たれた。
まぁ、順当と言った所だろう。
浮遊する5つの結晶が近付くのを遠目に、戦場を見下ろす。
超必殺級の武技を放った者達は、念の為下がってマインドヒールで精神の消耗とやらを回復しておく。
それ以外の者達は、白いオーラの騎士や天使の様なシルエットのゴーレムを、そう苦戦なく倒して回っている。
——NPCの援護が無いのは初めての事だった。
正確な所は分からないが、余力は十分と見られている様で、必殺級の攻撃と軽々ぶつかり合う様な超強力NPCが動く様子は無い。
そんなこんなで殲滅は進み、大ボスの出現前に全ての雑魚を倒し尽くした。
後は、数の暴力でボスを倒すのみ。
そんな中で、それは起きた。
結晶が光を放ち、いざ何かが出現するかと思った次の瞬間——爆発。
「何っ?」
束の間、声が響く。
『異界より来たれし英雄の子等よ、試練を与える』
よく聞く黒霧さんの声だった。
しかし気が抜けると言う事も無く、寧ろ威圧感溢れるその声に気が引き締まる。
果たして——現れたのは、複数体のゴーレムの群れ。
何が試練かは良く分からないが、数がやや多い様には思える。
『白騎士50、重装騎士25、巨獣型ゴーレム12、大型ゴーレム6、ボス1でござる』
『そうか』
やはり多いが、少なくとも数の上では倒せない様には見えない。
皆が試練と言う言葉に身を固める中、真っ先に動いたのはやはり拳姫だった。
「要は一当てしてみろって事でしょ!!」
言うや飛び込み、強力な一撃で騎士型のゴーレムを破壊、次の瞬間、左右から騎士の連撃が放たれ、拳姫はそれに対応して拳で剣を払い、離脱した。
あの拳姫が、後退を余儀なくされるだとッ……?
その一瞬。
拳姫のいつも通りの突出と、いつもと違う後退に、場にいた全員が、試練の意味を理解した。
おそらく、強NPCが動かなかった報酬の様な物だろうか。
現れたゴーレムの全てが、技量において相当に上位設定されているのだろう。
温存していた全てを消費するしかあるまい。
サスケに指示を出す。
『おそらく全て残影指定! 一撃でも当てれば光神の残滓の判定内でござる!』
そんな苦し紛れの人参に、乗るのは超必殺を持たない者達だろう。
『遠距離攻撃、全弾容易! ……放て!』
次々と、様々な攻撃が放たれ、騎士や重装の騎士、獣型や大型ゴーレムにダメージを重ねる。
騎士型が何体か倒れた所で、敵の耐久力のヤバさを理解しつつ、突撃を指示した。
『全軍、突撃!』
見事に意図を汲み、超必殺や必殺を温存した仲間達。
比較的弱いプレイヤー達は突撃の指示に従い、騎士型や重装騎士型に詰め寄り、武技を放ちまくる。
僅かな時間で数万もの死者を出しながら、騎士と重装騎士を突破、此処で必殺級の武技を持つプレイヤー達が突撃に参加し、弱者の壁を盾に必殺武技を連発、獣型と大型のゴーレムに壊滅的な被害を出しつつ、また数万の犠牲が出る。
——未だかつて無い被害。
たったの100にも満たない敵集団に、僅か5分も無い戦闘で何万ものプレイヤーが死んで行く。
その分の戦果が本当に出ているのか、最早分からなかった。
『俺に続け!』
フォローミーと突撃と言った手前騙し討ちの様な声を響かせると、超必殺級武技持ち達が動き出す。
これが最後の戦いだ。
突出したのは、やはり拳姫。
「ネコシェイプ! こっ、れっ、がッ! 私の! 全力よッ!!!」
そう叫んだ拳姫は、全身にオーラを纏い、地面を粉砕しながら歩みを進める。
放たれたのは、拳。
それもただの拳では無い。ネコシェイプによって生じた全身のオーラが、拳一つに纏まり、その小さな拳が大きな光を放っている。
果たして——殴り付ける様な光る盾と拳は衝突した。
次の瞬間、拳姫が吹き飛び、水切りの様に地面を跳ね、途中で青い粒子が散らばった。
盾は光を失い、ボロボロと崩れ去る。
全てが消え去るその前に、俺は刃を振るった。
「ドラゴンッ、キラーッ!」
吹き上がる竜のオーラ。
それは白く光る剣と衝突し、次の瞬間、まだ残っていた盾が投げ付けられたのを、吹き飛びながら把握した。
地面を何度もバウンドし、止まる。
HPバーがミリだった。
「ゴフッ」
血を吐きながらもポーションを取り出したが、次の瞬間、視界が黒く染まる。
《あなたは死亡しました》
《犠牲の羊を使用しますか?》
《YES / NO》
YESを選択し、ログボのポイントで貰っていた希少な蘇生アイテムを使う。
視界が色を取り戻す。
状態異常は全回復しており、HPも半分程度まで回復している中、ポーションでHPとMPを全回復させる。
そうこうやってる内に、視界の中では、巨大な渦巻きや青い龍、蟹の鋏の様な物や、巨大な鷲、白い拳やら竜系武技やらが次々と殺到し、その尽くと白い剣や拳が衝突、防がれて行くのを見た。
それだけじゃ無い。
白い巨大な騎士は、専用武技の隙を突き、超必殺を持つ戦士達を次々と屠って行く。
俺は急いで戦場へ戻るや、再度、武技を放った。
「ドラゴンッ、キラーッ!!」
気合いの二撃目。
果たして、竜のオーラは組み合った光る剣を粉砕し、更には防御に使われた拳の片方を粉砕、胴体に多少のダメージを与えた。
次の瞬間、再度吹き飛ぶ。
今度は剣による防御が間に合ったが、他の武技をスルーした拳の一撃だ。
吹き飛ぶ途中で落とした剣をアポートで引き寄せるも……だめだ。
「いったた……」
両腕がへし折れて満足に動かせないし、足も折れてる。何なら剣も曲がっていた。
防御に使った手と踏ん張りに使った足に全ダメージがいったらしい。
思いっきり痛い中腕を動かして、ポーションを飲む。
曲がった剣を頼りに立ち上がり、止まった。
これ以上は何も出来ん。
何せ武器が壊れるのは想定外。
後出来る事があるとすれば、防具系武技ドラゴンスキンを纏って突撃して死んででも敵を削る事だけだろう。
とは言え、そこまでするまでも無い。
前線を駆ける戦士達は次々に死して行く物の、放たれる武技の数々が、既に武装を失った騎士の体を確実に削っている。
程なくして巨大な騎士は、戦士達の物量を前に破壊された。
《【緊急クエスト】【都市クエスト】『光り輝くは光神の残影』がクリアされました》
今回ばかりは俺も終わりかと思ったし対して活躍も出来なかったが、プレイヤー達が順調に育っている証だろう。
報酬として出現した木箱を取り敢えず仕舞っていると、再度、その声は響き渡った。
『異界より来たれし英雄達よ、試練を与える』
《《【緊急クエスト】【都市クエスト】『舞い降りるは神々の残影』が発令されました》》
「はっ」
笑いが溢れた。
神々の残影だって?
しかも開始時間がおおよそ24時間後と来た。
——同時だ。
全ての浮遊都市に、同時に残影が出現する。
これは、運営が全プレイヤーに与えてくれた、チャンスだろう。
誰もに、神の残滓系激レアアイテムが手に入るチャンスがある。
「はははっ」
だが、それにしたって過剰だろう。
「くくくっ」
火神だ。
それをうちのパーティーだけで狩る。
入念な根回しが必要だな。




