掌話 光は舞い降りる 二
第四位階中位
ポイント回収と素材集めを兼ねた祠の集団攻略では、何体かの特殊個体との遭遇で済んだ。
上位祠のハズレ道や、街の中でも主要通路から外れた人気の無い祠なんかではちょっとだけ特殊な個体が良く出る様で、ちょっとしたラッキー気分を味わうに留まる。
実際、特殊個体の数はもっと多かっただろうが、その大半は大剣士の一派が大規模集団祠巡りをしていたので殲滅された物と考えられる。
昼を巡り、それぞれ休憩を済ませ、いよいよ下位祭壇巡りを始めた。
祠にも言える事だが、基本的に下位祠や上位祠、下位祭壇と上位祭壇は、捧げる魔力量に差があるだけで、見た目では区別が付かない。
魔力量の差というのも微妙な物で、前に入った人の残りがあれば、全く分からないのが実情だ。
それでも、お嬢によるとギルドの資料室で街中と一部街の外の物に関してはその詳細が分かるらしく、お嬢のリサーチ力で何とかなっていると言う訳である。
そんなお嬢リサーチの下位祭壇巡りと、少し気合を入れた上位祭壇巡りでは、流石に大剣士の一派に先を越されたか特殊個体との遭遇は無く、街中の祭壇巡りは波乱無く終了した。
さて、それじゃあ次は街の外のと、念の為フルメンツで探索に出向き、何度目かの祭壇で、遂にソレに遭遇してしまった。
ソレは、羊の様な形をした、何か別のモノだった。
◇
何度目かの破裂音。
スピリトーゾのゴーレムの鋼の拳と、その悪魔の様な怪物の筋骨隆々たる拳が衝突し、次の瞬間、光が弾けた。
ゴーレムの拳が一撃でひしゃげ、連撃を受けてゴーレムの胴体がボコボコになる。
そんな怪物を回り込み、牙を剥いたぱんきちに振り返り様の裏拳。
まともに受けたぱんきちは壁まで吹き飛ばされ、血を吐いて痙攣した。
「ぱ、ぱんきちー!!」
そんな叫びに怯まず、次々と一の狼達が、筋骨隆々で羽の付いた白い羊男へ牙を剥く。
まともに攻撃が通ったのは3度程か? 俺の狼や足の速い奴等も追随した攻撃はしかし、尽く打ち返され、その拳に払われた。
——間違いなく異常進化個体。
それも光の都市に見合わぬ、いや寧ろ見合うのか? 昨夜の闇神の残影で現れた様な悪魔と似た形の怪物。
「俺が行く!」
そんな叫びと共に、前に出たのは海狩、カイト。
最前線では、ゴーレムが肉体をひしゃげさせながら、その剛力で悪魔の剛力と渡り合う。
更には、僅かな隙を押し広げる様に、俺のマリオネットが矢を放ち、そして我等が希望、走る大根が悪魔の連撃を避け続ける。
戦場に飛び込む直前に、カイトはそれを振るった。
「スピリトーゾ!」
「はいぃ!!」
叫ぶと共に、ゴーレムが消滅、大根が高速で離脱し、それは放たれる。
「スパイラルッ・オーシャンッ!!」
現れたのは、前も見た巨大な渦巻き。
ただし、其処には無数の水で出来た牙持つ魚や鮫、更には巨大な龍の様な物が蠢き、悪魔へと叩き付けられた。
その瞬間、俺は真に恐ろしい物を見た気がした。
少なくとも、背筋が間違いなく恐怖の類いで震えた気がする。
悪魔は、迫り来る刃の渦に対し、拳を構えた。
その拳に光を纏い——連撃。
凄まじい速度の拳は最初に襲い掛かった魚の群れの大半を叩き潰し、続けて数限られる鮫の群れを数体迎撃、最後には龍の咬みつきを正面から受け止め、蹴り上げる事でそれを破壊した。
「はぁ!?」
「うっそだろ」
「はぇ……」
それでもボロボロの悪魔はしかし、乱れた姿勢を正し、体の各所を光らせ、僅かな傷を残しながら回復、此方へくいくいと指を曲げて見せた。
「ふ、ふふ……上等!」
消耗はしたぞと見せ付け、掛かって来いと言わんばかりのそれは、他多くの魔物と明らかに違う、武人の如き気配を纏っている。
冗談キツい怪物との戦いが、再開した。
◇
《【緊急クエスト】『それは白き武人』をクリアしました》
「はぁぁぁぁ……! 勝ったぁぁ!!」
挑み掛かったカイトがぶっ飛ばされ、蟻達が殴殺され、スライムがぶっ飛び、ついには我等が希望まで大根おろしにされて、殆どの召喚獣が撃たれて直接戦闘になった所で、奴は唐突に死んだ。
いや、もう限界だったんだ。そうと感じさせなかっただけで。
ボロボロで矢があちこちに突き刺さり、最後に俺の苦し紛れの棍棒による、受けのつもりの殴り、武器パリィもどきを受けて、遂に怪物は光の粒子へと消えた。
死を覚悟したが、幸いにプレイヤーの死者はおらず、皆後半で放つようになった妨害用の小さな光線で手傷を負った程度。
短いながら濃厚で、数時間は戦ったような疲労感。の中、目の前に現れたそれ、報酬アイテムに釘付けになる。
アイテムは4つ。
一つは、白いマフラー。
もう一つは、白いフワッとした襟がありつつもスマートで青白い線の走るコート。
次に、白に金細工の施された聖なる防具っぽいガントレット。
そして最後が、白っぽくてパールカラーの斑点が見える球体。
どれもかなりのレア物に見える。正直全部欲しい。
そんな気持ちを振り払う様に頬を張った。
「……さて、報酬……の前に皆お疲れ! 回復優先だ!」
報酬に引っ張られたが、取り敢えずボスのカイトがダウンしているのと次のナルミさんが介抱しているのでそう指示を出す。
あれこれやった後、皆が一つ場所に集まった。
喋り出したのは、お兄さん事ナルミさん。
「コヌカさんには悪いけど、年功序列で口を開くね? 報酬は、貢献度の高い順に、価値の分からない今の内に選んで、後の人にはそれぞれに分配された報酬金を分配、報酬以外のドロップ品は売価分配方式にするのが良いと思うけど、何か他に案はある?」
金額の貢献度順分配に関して少し詰め、羨ましく思う所はそれぞれあるだろう中で、アイテムの分配は行われた。
先ず最初は、何といっても海狩。
1番価値が低く見えるマフラーを選び、お嬢にあげていた。
元々美少女だったのが、夏にマフラーと言う何処となくミステリアスな雰囲気が追加され、儚さに磨きが掛かって見える。
「暑く無いか?」
「ううん? なんでだろ。寧ろ適温?」
そんな会話を聞く余裕も少し無い中、マリオネットの活躍により2位の俺。
凄く悩みつつも、なるべく素早い積もりで選んだのは……パールカラーの宝石らしき物。
続けてスピリトーゾはガントレットをドールに渡し、果敢に挑んだ狼とぱんきちの努力か僅差で貢献度4位になった一がコートを受け取った。
一も一で美少女だから、すらっとしたコートとモコッとした雲みたいな襟巻きで、なんか昔やったモンスター育てるゲームのチャンピオンとか見たいな見た目になった。
「くそぉ、大根おろしにならなければ。もしくは生身でも挑んでいれば……」
「まぁまぁ、5位で金が大量に入ったし、何とか、な?」
「ううっす、コレでドロップ品の角でも買います!」
嘆くサヨナキを悪いけど上位者の余裕で慰め、何とか不運では無く幸運に納め切った異常進化個体との遭遇は、コレにて終わった。
後に、俺が入手したアイテムは、『武人の心石(白)』と言うアイテムだと言う事が分かった。
時価200万は降らない、神の残滓級レアアイテムであり、俺の弱点、本体の防御力の低さを補う事が出来る一品。
拠点を買う為の金に手を出し、奴の毛皮を買って、一みたいなコートを仕上げて貰った。
「おそろっち!」
「いぇー」
一と片思いハートでは無く両思いグットをし、他のメンツも装備を新たに整えたりして、各準備を終えた所で、いよいよ決戦が始まる。
第一章、第1話にユキのビジュイメージを載せました。
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