閑話 お団子作るの 二 ※挿絵あり
第八位階下位
チョコレート部門が数万人規模の盛況を見せる中、次に見たのはアイス部門。
「ユキ!」
「ご苦労」
「えへへ♪」
僕の視線を受け、早速とばかりに白雪が持ってきた桃のソルベを受け取り、褒美に撫で回してやった。
白雪と氷白、アランを筆頭にしたアイス部門は、甘い物や果物が好きな連中から意外と熱烈な支持を受けている。作業員は妖精と獣の群れ。
念力の操作は最低限出来る様に指示している為、手足が人で無くともサイズが小さくとも、アイス作成には支障がない。
アイスの権化足る白雪は、その力を存分に操り、数多のアイスを生産しつつ消費もしていた。
一方の獣達は、此方もアイス作り体験を楽しみ、その工程を学んでいた。
色んな形のアイス作りは、ほぼ戦いで塗りつぶされ様としている彼等の生の中で、かけがえのない記憶の一つになるだろう。
他方、妖精達はと言うと、休憩所で1日程の休息と勉強を済ませたプラリネとドラジェ、ローシェの三士族が大量生産に励んでいた。
なんでも、ローシェの一族では今、凍らせた果物を使ったフラッペに凍らせた花の蜜を掛けるフローラルでフルーティーでフレッシュなスイーツが流行っているらしい。
花の蜜をぺろぺろ舐めて満足していた時代と比べれば確かに高尚な嗜好ではあると言える。今後は果肉をゴロゴロ入れたり砂糖を入れて煮上げたフルーツソースなんかを入れたりするんだろうな。
甘味の衝撃波をまともに浴びた元来お気楽種族妖精種のプラリネやドラジェの民も、必死にアイス作りに励んでいる。
物とは裏腹に熱気を見せるアイス部門。
一方で、すぐ側にある小さなブースも、熱量……と言うかエネルギー量に溢れていた。
桃花のきび団子専門店である。
総指揮者桃花。
工場長白羅。
破壊神禅鬼。
摘み食いの空華。
合計僅か4人で展開されるそのお店は、主に雑すぎる猿と5個作り9個食べる鳥のせいでデッドーヒートを繰り広げていた。
「ギンイロ! コレウマイ! クウカ?」
「ハニー! 私が作ったきび団子、はい、あーん」
「あーもがもぐ」
口にきび団子を突っ込まれつつ、そこはかとなく考察する。
やっぱり桃太郎だからきび団子に神話的、親和的補正が入っているのかもしれない。
まぁ、桃花と白羅に限って言えばグンハの話を聞いた上での事だろうが。
ともあれ、好きな事をやっている様で何よりだ。
クウゲも飽きて他の物を食べに行くだろう。仲間だから甘えてるんだよね。
更に続けて視線を向けたのは、焼き物部門と大雑把に分類されている巨大ブース。
作業員は悪魔とドール系達が主だ。
悪魔達はうちでは研究者達が多く、主に半生菓子や干菓子の類いを手当たり次第に作っている。なんか一定以上の質で種類を作ると技術点がプラスされるらしい。
一方サキュバス達は、やってる事は悪魔達と同じだが、エンジョイ生産活動に励み、他にも幾らかがサキュバス達に混じってエンジョイしてる。何故かそこにコックコートをビシッと決めている白夜がいるが、瑣末事である。
他方、人形系達はと言うと、此方はその器用な手先により、複数種のケーキの大量生産を行なっていた。
特に手先が器用なクラウと細かい事が得意なオルメル等は見事な作品を次々仕上げており、基準は分からないが評価は高そうな気がする。
また、人形組が見事なケーキを作っている一方で、その中に異様な光景が一つ。エヴァだ。
エヴァは色んな材料を変質させる謎の箱を使い、パーフェクトケーキなる謎の固形物を量産しており、今は一仕事終えた様子で謎の固形物をもっしもし摂取している。
色はやや黄色っぽく、長方形をしたケーキと言うには些か彩りに欠ける固形物。
食べる様子から比較的柔らかいもののスポンジ生地と比べれば密度が高いらしく、どちらかと言うとパンにも近い物らしい。
自分で考えたのか何処かから仕入れたレシピなのかとか、何がパーフェクトなのかとか、色々と分からないが、まぁ、本人が満足ならそれで良いだろう。長期保存とか効きそうだしね。
他にも、ペルセポネの黒いドームによるジャーキー生産工場や、ディザイアの飴細工と琥珀糖の織りなす一品物の宝石箱等、幾らか目立つ活動をしている者達がいる。
一通りそれらに視線をあげてから、ちびっ子クッキングへ戻る。
砂糖やお湯を練り纏めて作られた餅と団子を、蒸したり茹でたりする時間である。
蒸しの工程が必要な方は僕が程々に蒸しておくとして、ちびっ子達がやるのは茹での工程。
ウサギUとMが小さく纏めた団子をウサギRがポイポイ大鍋に投入し、浮かんで来た物をヤギが掬い上げ、サイとヒツジが水気を切りながら小皿に盛り付けて行く。
然ながら工場の様なコンビネーションで提供用の団子を作って行く。
それを横目に、僕はトッピングの黒蜜とキナコとあんこを用意し、暫し待って、試食という名のおやつの時間にした。
白いテーブルクロスを敷いた食卓には、三種の団子が山積みになり、それぞれの前には三種の団子が一つずつ盛られた小皿とフォークとトッピングが並ぶ。
僕が制作に関わっているせいか出来ている長蛇の列は取り敢えず子供達には隠蔽して知覚出来ない様にし、先ずは自分達で用意したおやつタイムを楽しんで貰う。
「それじゃあ、御手を拝借。いただきます」
『いただきます!』
いつも通りの掛け声と共に、子供達が団子を食べ始め、僕も今や意味を無くした空腹ゲージの回復を行う。
「もぐもぐ、もちゃもちゃ、なの」
「ぷちぷちするな!」
「団子と言うか……なんでしょうね」
「きび団子は、美味しい、です」
「ひえ団子はおかず系の味ね」
「……あわまろ」
それぞれの感想を要約すると、きび団子はもちもちとした食感と甘味で団子らしいが、あわとひえは粘り気が足りずにぷちぷちと千切れる。
あわはまろやかと上品に言うには些か薄味だが甘味がある、それに対しひえにはそれが無い、または薄く、おやつというより食事に近い。濃い味付けが似合うだろう。
「売り物にするには改良が必要ですね」
「となると、そうね……醤油を垂らして焼き団子なんてどう?」
「試してみましょう」
チビっ子達の知恵者、あーたんとウサギRことれーたんが改善案を提示し、改良を加えて行く。
正直工程の都合上どれも僕が関与しており、僕魔力が少しでもくっ付いているこの団子餅達が売れ残るとは到底思えないが、それ目的の輩は随時排除して行く所存だ。
一通り食べたり考えたり試したりした所で、販売開始となった。
◇
「この醤油の芳ばしい香りと深み、堪りませんねぇ!」
「ふぅん、こっちのきび団子も美味しいじゃない、流石ハニーね!」
「ギンイロ味! ウマイ! 全部クウ!」
「チビが作った割には中々美味いのです」
「きび団子をもう一つ、買ってやってもいいさね!」
「ますた、もうわんせっと、こうにゅう」
「どれもそう悪くない味ね。もう1セット頂くわ」
シンプルにきび団子が美味しいと言う声や、下心を隠した注文等、お客様の声を纏めてチビっ子達に提出し、今回のスイーツフェスは終わりとなった。
チビっ子達も他のお菓子を食べて周り楽しそうだったので、今回の様な馬鹿騒ぎにも多少は目を瞑るつもりだ。
尚、スイーツフェスの優勝者は、最優秀賞が今人気のアイス部門。優秀賞が見事なチョコレート細工を見せてくれた吸血鬼達と、一人で飴細工をしていたディザイア。
銀賞飛んで銅賞になったのが、何故かパーフェクトケーキ。いや、不味くはなかったけどね。寧ろ美味しい気がしないでもなかったし。なんか独創的だったし、皆何となく惹かれる物があったのだろう。
尚、パーフェクトケーキの鑑定結果、備考欄には薬菓子なる分類があった事を明言しておく。




