第20話 遺産
第八位階下位
旧マレビト、マギ・ロジック・クロニクルの戦士達の宝箱は、個人認証が働き、他者が開封する事は出来ない仕様だ。
そして例外なく換装されており、所持者の死亡と共に死に戻りする。今回の場合は消滅する仕様となっている。
そんな個人認証をさらっとすり抜け、幾つか開封すると、出るわ出るわ準神器級と神器級の魔導鎧の数々。
正確には、レベルにして下限300、上限600、平均値400程度の王級魔導鎧と、レベル700相当の覇級魔導鎧である。
現状では、僕が保有している覇級魔導鎧は、およそ2個のみ。
1つは、覇級魔導鎧・神装弓騎兵。
もう1つは、魔宝玉ゴーレム達の王級魔導鎧が合体した姿、覇級魔導鎧・覇王武である。
それが新たに、覇級を13個、王級をピンキリだが980個も手に入れてしまった。
様々な武装の機械達が並び立つ様は中々に壮観な眺め。
コレがマレビトの消滅と共にロストしたら莫大な損失なので、神々はマレビトの死後の所有物は報酬として再利用しているであろうと予測が付く。
取り急ぎ全て所有権を塗り替え、中には試練の踏破報酬で出る御霊の名を関する涙滴型の結晶が12個あるのを何となく確認しつつ回収すると、それは起きた。
《【天命】『天霊門の解放』が発令されました》
「お?」
回収した12個の涙滴結晶がインベントリから出現し、光を放ちながらゆっくりと回転を始める。
華美な演出の中、結晶は回転しつつ浮上し、徐々に光を強めながら集束。
やがて衝突し……虹色の鍵になって僕の前に降りて来た。
僕はそれを握り……放たれていた光が消えるのを見届けてから、首を傾げる。
「……」
解析しつつも、試しに鍵を捻って見たが、特に反応は無い。
楽園の鍵と違って、門が何処かに存在しているタイプの物らしい。
場所に心当たりは無い。
「……保留、かな」
コレだけ渡されてもどうしようも無い。
ただ考察くらいは出来るのでざっくり考察すると、おそらく天霊の試練の完全踏破イベントと目されるのが、今回の天霊門の解放とやら。
天霊の試練は、かつての魔導鎧の活動分布が、此処アルバ大陸に集中している点から、アルバ大陸内でのみ課せられた試練であると推測できる。
この事から、天霊門はアルバ大陸の何処かのランドマークに存在している可能性が高い。
具体的にはマレビトの最初の配置地点か、大陸の中心、もしくは神獣の御座所のいずれかだろう。
これは、リコードクリスタルの世界で、田中さんが言っていた『選定の門』と言う言葉からも、周知または既知の物であると予測が出来る。
つまりは、旧ドランクール王国王都の存在した北部か、中央か、神獣のいると目される最西端の何処か。
取り敢えず大陸の中央を目指しつつ、帝国を沈めたらそのまま北西の調査、それが終わり次第神獣に会いに行ってみるのが良さそうだ。
差し当たりの方針を決めた所で、入手アイテムの確認に戻る。
先ずは、試練級の13の装備。
白い兎型で物理特化の、覇級魔導鎧。
大仙白兎。
表裏一体の黒と白の9本尻尾が目立つ、覇級魔導鎧。
黒白九尾。
犬っぽいデザインで攻撃特化の、覇級魔導鎧。
皇帝狼。
モノクロで重力操作の角が生えた、覇級魔導鎧。
圧壊鯱大王。
やや派手な火属性特化の、覇級魔導鎧。
業火鷲王。
青白いスタイリッシュなデザインに大きな角が付いた、覇級魔導鎧。
水天牛王。
緑色に流線形の速度特化型、覇級魔導鎧。
嵐鼬帝。
重量級の超攻撃型、覇級魔導鎧。
震鳴熊王。
雷属性特化の龍角持つ、覇級魔導鎧。
雷古龍。
スタンダードな火属性と身体強化に特化した竜型、覇級魔導鎧。
火古竜。
紫がかった液体っぽい半透明の物質を纏う、覇級魔導鎧。
魔王。
黄色みがかった半透明の物質を纏う、覇級魔導鎧。
勇者。
コレ等カムイ系は、僕の見立てによると天霊の試練の報酬であり、その想定敵レベルはざっくり650程度。
今の試練が750以上なのを見ると、かなり甘い試練と言える。
また、コレ等全ての武装には、おそらくkinako氏が手を加えたと見られる改造が施されており、それが無かったら覇級には一歩及ばない装備であったと予測が付く。
……その反面……いや、先に最後の1つの覇級を確認しよう。
様々な武装が盛り込まれ、未来的なデザインの黄色っぽい覇級魔導鎧・Canary。
Kinako式V7と名の付く、レア度7以上の武装で固められた決戦兵器であり、全ての魔導鎧の中で最強の鎧だった。
材料の選定に始まり、丁寧で混じり気の殆どない見事な加工、深い理解の見られる術式の組み込み。
この武装を見れば、Kinako氏の技術力が現時点でのルカナとタメを張るレベルである事が分かる。
やはりと言うか、その時代において、Kinako氏は特異点とでも言うべき異常な才能を有していたらしい。
さて、そんなKinako氏の手が加えられた試練産覇級魔導鎧にある唯一の問題は……手を加えた事により、設計されていた真の最終形態に至れなくなっている点。
凄く簡潔に纏めると、全ての魔導鎧は王級の頂点クラスの性能に揃えられていた。
魔王と勇者はそれ等の試練産王級魔導鎧と合体する事が可能で、1つでも取り込むと覇級になる設定だった。
そして、全ての試練産魔導鎧が合体する事で生じるのが、コレだ。
神級魔導鎧・神威 品質SSS レア度9 耐久力M
備考:全ての試練を越え、天霊に至った者達の力を合わせた、天霊の真の姿。
流石に12個も鎧を組み合わせるとサイズも随分大きくなっている。
何なら余った要らないパーツを組み合わせて無理やり12体の自動攻撃ユニットが作られていたりするが、12個のコアが光背や後光の様に後ろで回っていたり、スカートの様に末広がりに武装が展開されていたり、センスは良い。
まぁ、コレじゃ無いといけない訳でも無いし、試練産の割にコアはやや弱めなので、コアが成長すれば覇級もいつかは神級に至るだろうから、カムイである必要は無い。
取り敢えず元に戻し、それ等の運用に関しては保留としておく。
王級魔導鎧に関しては、その上限に到達している物も幾らかあるので、少し改良を加えれば最低限の覇級に到達出来そうな物もある。
覇級程重要度は高く無いので、魔導鎧関連の参考資料として研究者達や黒霧に貸し与えよう。
それ以外の雑多なアイテムは、一応インベントリに個人のフォルダを作って保存しておく。
コレで、残す戦利品の確認はパイア達だけ。
致命傷を負った彼等が程良く回復するまで、暫しの時間を待つとしよう。
第十六節:第三項、魔神の残香——完




