第19話 宝の山
兎にも角にも避難して、負傷したパイア達の命脈を繋ぎ、およそ1日程度の休憩所、僕が帰って来るまでの15分間を皆に最大限警戒して貰い、無事に15分を切り抜けた。
敵の襲撃があるなら此処だろうと思ったが、どうやら杞憂だったらしい。
弱い者は敢えて異空に避難と言う形を取ったが、特段その必要は無かった様である。
まぁ、直接的に霊験門を越えた戦場の空気感を感じられるのも得難い経験であるし、良しとしよう。
警戒はしつつも、早速入手アイテムの確認をしよう。
クリアしたクエストは、世界クエストの『大罪の試練:憤怒の試練』に、大陸クエスト『神鉄の魔将』。
それから探索クエスト41個、迷宮クエスト24個、クエスト7個。
おまけに、アルネアの家に安置されていたお宝の山。
先ずは総合的な獲得ポイント。スキルポイントが584P。ロジックポイントが390P。
次にアイテムだが……探索クエスト以下72個のクエストは、ボスレベルが最大114、平均60程度で、当然報酬アイテムも大した事ない魔道具や武具の類いだった。
その中で特段気になる物と言えば、粘鋼糸と言う名を与えられた形状自在の糸型武器と、マナ注入により稼働する硬化系金属の犬、マナ注入により木質の妖精らしきものを生成する妖精の種という名の涙滴型ネックレス。
後者に関しては、傭兵やモンスターカードとは違うアプローチとしてプレイヤーに提供しても良いだろう。
次、ドルスの撃退報酬。
腕甲型装備不壊の拳は無骨なデザインでプレーンな構造の武器だ。ザイエに丁度いいので、幾らか機能を盛り込んで渡す事とする。
同じく腕甲装備真紅の腕を灼炎に、風牙の腕を嵐刃に、落星の腕を崩天に、深界の腕を骸廟に与える事とした。
後は、パイア達分用意されていたプレーンな腕甲に、研究者達が術式を組み込んでパイア達に渡す事となる。
続けて、ウルリエの捕獲報酬。
大罪の試練と仰々しく提示されたそれは、正しく大罪の神性を宿した神器級の一品だった。
名前を憤怒の爪痕。形状が腕甲型なのは偶然だろう。
この武器は、オルダナをベースにアボイタカラを要所に重ね、ヒヒイロカネやカーレフランで術の補強と装飾が為された武器だ。常態では禍々しい籠手でしかないが、励起すると任意のサイズの鉤爪が生える仕様である。
程よく悪性で気が強い装備なので、ラース君の修行相手には丁度良かろう。
勿論、能力は自在に爪を操るだけでなく、憤怒の性質に見合った爆発力のある、身体強化や攻撃方法を持っている。
中々に強力な拾い物の次は……数々の準神器級や神器級ですら本命になり得ない大本命。
アルネアの家が、悪魔達から白き墳墓と呼ばれ、アルネアが黒き墓守と言われていた理由。
僕はソレを見下ろした。
「……ふーむ」
触れたソレは暖かく、柔らかい。
確かな命の鼓動を鳴らしているのに、動く気配は一切無い。
——生ける屍。
ソレは死んでいないだけの肉塊であった。
「ふむふむ……成る程」
数千の肉塊全ての状態を確認してから、僕は頷いた。
成る程、コレが——永遠の眠りか。
ソレ等、かつてのマレビト達は、静かに鼓動し、終わりの時を待っていた。
その中には、見知った顔も幾つかあった。
クラン『黎明旅団』の機士達だ。
カンナカムイのシン君に、イセポカムイの四つ葉ちゃん、それからオーバーロードを使うkinakoにジョン2号と田中さん。
アルネアは少し悲しげで、諦めた様に笑って言った。
助けられたのは、安全な中央都市と決戦の場に居た者達僅か数千で、後は偶々運良く発見出来た者以外全てが、敵の攻撃に晒されたり、発見出来ずに居なくなってしまったと。
おそらく、永遠の眠りに付いたマレビトは、HPが0になった時点で、青い粒子に分解され、2度と復活しないのだろう。
攻撃を受けて死んだ者は勿論、空腹ゲージの限界に至って死んだ者も多そうだ。
そんな中で、数千ものマレビトを確保し、生命力を注ぎ込んで延命して来たアルネアの手腕足るは、実に見事だ。
命を繋ぐ糸は地脈と繋がり、幾重にもそれを濾過してマレビトへ注ぎ込まれていた。
アルネアがそれ等を放置して新たなマレビトのいる地を訪れたのは、旧友を追ってとも言っていたが、他にももう戻らないマレビト達と決別する様な意図もあったのではないだろうか?
まぁ、彼女なりに背負ったモノと捨て去ったモノがあったのだ。
そんな事より僕にとって大事なのは、黎明旅団含むマレビト達の、体の随所に付けられたある装備品である。
そう、それは個人認証型のストレージ。即ち——
——宝箱の山である。




