第18話 不可解な神
第八位階下位
ドルス麾下、トップ4体以外では、同じく二つ名を与えられたパイア4体も気になる所。
それぞれの二つ名は、貪鉄、繁呑、触飽、睨視。
能力は、貪鉄が喰った鋼ないし固い物の力を得る類い。
繁呑は樹木操作系で樹木の鎧を纏うタイプ。
触飽は魔力の腕を伸ばし、食べた物の力を得る、貪鉄に似たタイプ。
貪鉄と違って様々な物から力を得やすいが、一方で硬い物や金属類の吸収は遅い様だ。
最後の睨視は、魔眼系統の力の使い手。目は基本2つだが、力を発揮した際には額に第3の目が開く他、基本の目の側下に目の模様が現れ、威力の低い2つの魔義眼と3つの魔眼を使える様である。
目の模様による魔眼の発現と言うと、蛾系魔蟲や絵画型ゴーレム等に見られる発動形式だが……中々珍しい事をするね。
応用が効かないと言う明確なデメリットがあるし、上位に行けばなんなら目を増やす方が色々と楽だったりするからなぁ。
ともあれ、それら4体とグオード、ドーラ、ファニエ、リェニの副官が激しく戦闘を繰り広げ、間も無く決着と相なろうとする中、大将戦で動きがあった。
幾度もの衝突の中で、不意に距離をとったドルスが吼える。
『ザイエよ! やはり貴様は強い……!』
『そりゃどーも』
『故に! 我も出来得る限りを尽くして応えようッ!!』
言うや、ドルスは咆哮する。
『我が道に、阻む物無しッ!!』
次の瞬間、生じたのは、神域の降臨。
ドルス自身が持つ神話の顕現だ。
コレにより、ドルス自体が一段と強化された他、配下のパイア達も高位の者程力が増大する。
強力な神性だ。
立ち塞がる物尽くを粉砕して来た事実をベースにした神性。
同時に、唯一粉砕出来なかったザイエへの、決戦神話。
紡がれる詩篇の終末を賭けた、大戦の続き。
よくもまぁこうも特化型に組み上げた物である。
まるで一発の弾丸の様に、使い捨てで致命的。
流石のザイエを持ってしても、一段と力の質を上げただけに留まらず、特効性質まで付け加えられたドルスでは、苦戦どころか犬死にだ。
一段ギアを上げて初めて互角。
『ならこっちも、全力だ……!!』
言いながら、ザイエは戦と武、拳の3つの神権を降ろした。
自分用にカスタマイズされた神話ならともかく、神権を3つ同時に降ろすのは中々に無茶だが……まぁ、どれも振り分けの少ない神権なので、縁から見てコントロール出来る量も少ない。必然消耗も少ない訳である。
一段と激しさを増した衝突、一瞬に数千の手が打たれる中、一手を奪い合う激しい闘争。
時に捨て身となり穿つ一撃が互いに大きなダメージとなりつつ、争乱は決着へと歩み寄る。
ほぼ互角に見えるその戦い、果たして勝者は——
◇◆◇
神話を降ろすと言う手を打って、格を出来得る限り上げ、ザイエの奴もまた神話を降ろし、格を上げた。
それでも未だ質では此方が上、だと言うのに、武術で押し負けている。
時に被弾を覚悟して打ち込んだ拳は、ザイエに確かな損害を与えたが、やはり神話を宿す拳は重い。
この身にもまた大きな損害が残る。
それでも。
それでもだ。
挑まねばならぬ。
——何故に?
破壊の為——
何物をも打ち砕き、我が道を行くのだと言う証明。
——誰への?
己への——
ほんの微かな疑いすら無く、己が破道を行く為の。
あぁ、だが、しかし……——
幾万の衝突。
どれ程拳を交えたか、最早幾星霜の彼方。
歓喜する——
我が道を塞いだ、ザイエの強さに。
狂喜する——
それを此処まで追い詰めた己の強さに。
——……最早此処まで。
出来る限りの事はした。
天命の限りを尽くし、果てに倒れると言うのなら、それは正しく運命であろう。
——なれば。
——なればこそ。
最後の時まで、戦い抜くのみッ……!!
「ザイエぇぇッ!!」
「ドルスぅぅッ!!」
渾身の打ち合い。
最後の一瞬を、せめて火花が散る様に。
我が道に、ただ一度の悔いも無——
刹那、それは響いた。
——汝、道を示さん。
◇◆◇
並び立つ龍虎が雌雄を決算とするその時、それは起きた。
『汝、道を示さん』
「……ほう」
魔界から響く声と共に、神域が顕現した。
そうと思うや、敗北へ刻一刻と近付いていた4体のトップパイア達から、そこに根付き始めていた宝珠が、周辺の魂とスキルの一部毎抉り出された。
そんな、生きたまま臓器を貪られる様な惨い行ないを見守ると、次に行われた惨い事は、過剰な神性の付与。
莫大且つ高質のエネルギーの流入は、容易く4体のトップパイア達の魂を粉砕し、更には他のパイア達も含めて爆発し、アッセリアやファニエ達に致命的なダメージを負わせる。
……くらいの勢いだったのでそれを全て不備なく収め、おまけに魔界より生じた神気の壁を粉砕、ザイエを確保した。
僕がそれをやっている横で、魔界より生じた力に襲い掛かったのは、ウルリエとペルセポネ。
彼女等が神気の腕に喰らい付き、激しい闘争を繰り広げるのを横目に、僕もドルスを確保しようと動いたが……逃げられた。
巨神戦と様子見が仇になったな……まさかこのタイミングで自ら手を降すとは……。
「ふぁ……」
一目散にドルスを掴んで逃げ、魔界の門を閉じた魔神。
消耗していたとは言えこの僕を一瞬でも留める高質の神話。
やはりディアリードは化け物だ。
化け物だが……。
「ふむ……」
……おかしい。
コレ程の力を持つなら、ドルス程度、見捨てて然るべきだ。
態々決戦用の使い捨て神話を組んだのに、打った弾丸を拾いに行く不手際。
ディアリードの策にしてはあまりにお粗末。
実験として使い捨てにするのが奴のやり方の筈。
だのに態々僕相手に消耗をしてまでドルスを回収する謎多き一手を打った。
頑張って宝珠を回収したのも妙だ。
魔神の神話を整備しているディアリードにとって、悪魔の宝珠は確かに生産コストは高いがそれでも貴重な消耗品程度で済む筈。
それ等が現す答えは……ドルスをその配下で強化した宝珠4個で強化し、亜神級へ至らせる…………のはディアリードからしたらそれなりの労力だろうか……?
一つ言えるのは、ディアリードは亜神級のマレを捨て札にしたと言う事。
それが亜神級を手札に加える為に自ら手を降す等……僕を困惑させる一手と言うなら見事だね。
取り敢えず防備を固める事と、致命傷を負ったパイア達の治療、戦利品の整理をしようか。
《【大陸クエスト】『神鉄の魔将』をクリアしました》




