第11話 巨神、相見えん 五
第八位階下位
次の絵画は、青銅巨神と同じ様な宇宙空間に銅色の女巨神が描かれた絵画。
入ってみると小惑星の上で、目の前には宇宙に立つ女巨神。
巨神は祈る様に手を合わせ、次の瞬間、あちこちの星が煌めいた。
生じたのは、流星群。
次々と周辺の小惑星が飛来し、更には遠い惑星果てには恒星まで此方へ急速に接近して来ているのが分かる。
あまりにも分かりやすい物量攻撃。
取り急ぎ出口を確保しつつ、数多の隕石を避けていると、一番近い惑星が不意に変質した。
巨神のエネルギーが流れ込み、錬成されたのは赤い結晶。
サイズがグッと半分以下に縮み、生じた星規模の宝石は、その身に同じく変質した竜脈の化身オピオニダイだった物と見られる赤い何かを流動させ、灼熱を纏って接近する。
惑星に宿る全ての信仰を爆弾に変じさせた物であると言うのは直ぐに分かった。
感覚的には、巨神の魔力の2〜3割程度を消費している様なので、接近中の星々と巨神の魔力吸収の感覚から、4つの惑星と1つの恒星の直撃に耐えれば勝てる計算だ。
戦法は十分理解したので、巨神に1発弾丸を打ち込んで見てから撤退した。
どうやら、最低限の防御は固めている様だし、何なら元が硬いタイプの巨神の様だが、基本は攻撃一辺倒で自らへの攻撃は殆ど無視する様だった。
◇
次、巨大な鳥の描かれた絵画。
入ってみると、そこは山の上。
見上げた空にはあまりにも巨大な鳥が浮遊しており、此方をサーチするや、その翼を羽ばたかせた。
翼は一息に地平線を駆け抜け、僕の降り立った星そのものを覆い尽くす。
刹那、世界全体が仄かに輝きを放つ。
現れたのは、無数の竜巻。
地平線を覆う幾つもの竜巻が、大地や海を破壊して魔力へ分解しつつ迫る。
同時に空からは無数の風の刃が雨の如く降り注ぎ、此方へ迫る。
取り敢えず空の方が御しやすそうなので、風の刃をごっそり消して道を作り、回収して練り直した魔力で空へ螺旋を解き放つ。
大地を巻き上げながら巨鳥へ突き進む螺旋。
抵抗を忘れたかの様に浮き始めたエヴァとその足を掴む僕。
おまけにペルセポネとディザイアも僕に掴まった。横着するな、自力で耐えろ。
そんな3人組を他所に、巨鳥は僕の放った螺旋とは逆回転のブレスを放って対抗する。
星を穿つ螺旋はブレスと衝突、激しく拮抗した後、幾らか押し込んだものの放たれ続けるブレスには負け、天そのものが落ちて来る様に迫って来た。
「まぁ、こんな物か」
ずべしゃっと地面に落ちたエヴァと他2名を引きずり、絵画を離脱した。
他の巨神にも言える事だが、分解された星の魔力を巨神が吸うので、初期想定の倍以上の魔力を保有出来ると見て良いだろう。
◇
次に、広大な海とそこに潜む巨大な蛇らしき物が描かれた絵画。
入ってみると、そこは浮遊する足場の上。
見下ろした視界に広がるのは、海……と言うよりも水の星と言った方が良いか。
星そのものが水の塊であり、幾つも浮かんでいる浮遊足場は、強すぎる高濃度水属性魔力が満たされている所にそれを引き寄せる巨神がいる事によって、浮遊している様である。
そうと思った次の瞬間、深海から巨大な頭部が口を出した。
放たれたブレスを一部弾き、それらが天を引き裂いて行くのを見届けてから、改めて海中より姿を現した巨獣を見る。
それは龍の様な形をしており、ヒレの様な翼から海龍だと分かる。
最大化マレの10倍近い大きさのそれは、ブレスを防がれたと知るや、今度は噛みつきに移行した。ので正面からそれを押さえて押し込む。
爆発的な水飛沫が上がり、海龍が海に沈んだ。
「やる事が雑になって来てると宣告します」
「流石の僕も疲れたんだよ」
エヴァの鋭いツッコミに肩をすくめて見せる。
体をうねらせて威力を逃さない様に調節して魔力でぶん殴った海龍はしかし、極当たり前に復活し、今度は深海から真っ直ぐ浮上して牙を向いたのでもう一度同じ事をした。
今度は強い抵抗を受けたが、学びはあれど僕の瞬間演算速度を上回る程では無い。
途中で身体強化はブレスに置き換わり、閃光が放たれるも、それを払い除け、最後に水の星そのものを操る津波を仕掛けて来た所で離脱した。
サンプルに水を少し確保したので、後で解析しよう。
◇
最後の絵画、白い玉座の描かれたそれに入る。
見えて来たのは、そのもの玉座。
白い円盤の上の玉座と言うと、覚えがある。
楽園の玉座と同じだ。
しかし、楽園の玉座と比べると色々と豪華で装飾が多い。
その反面、玉座には色が無かった。
楽園の白い玉座と円盤には、魔覚で感じる神気によって色とりどりの輝きが見えるが、この玉座には何も無い。
ボスの姿も無く、神の宿らない神座はそれ即ち神がいない事を表しているに違いなかった。
「エヴァが座ってみると明言します」
そんな冗談と共に歩き始めたエヴァに先んじて、僕が前に出る。
「いや、僕が座るよ」
そんな事を言いながら神座に歩み寄り、何の抵抗も無いそれに腰掛けた。
「……」
何も無い。
ただ豪奢で、神に相応しき神座で、何処までも、空虚だった。
一つ確かなのは、この椅子は僕の椅子では無いと言う事。
僕が座るにはあまりに大きすぎだ。
そうと思ったのも束の間、隣にエヴァが座り、ペルセポネが座り、その横にディザイアが入り込む。
流石の空虚な神座も、4人も乗ればぎゅうぎゅうだ。
……確かに、1人用の椅子に見えるが、何も1人で座っていたとは限らないね。
神座を引っぺがせないか試して見てから、空虚な神座を後にした。




