第3話 楽園と改善と除染と
第八位階下位
次は、楽園の進捗確認。
早速転移した玉座で、間を開けずに現れたアムの報告を受ける。
「……我が主、報告する」
「うむ」
今日は素直に報告してくれるアムによると、進捗は順調との事。
先ず、エイミーとアンジュの手により、山に住むアダムスの民と湖に住むアダムスの民が傘下に加わった。
また、アムによって遺伝子操作された家畜や農作物が広範囲で作られ、食糧や薬の生産は順調。
その他外敵の迎撃は問題なく回せており、十分な余力で森や山、湖周辺の地図埋めを進行中との事。
そして最後に——
「……詳細不明の門、ね」
「……詳細不明の門は詳細不明」
しれっと念押しするアムに僕は何も言わず頷く。
詳しい所は分からないが調査していない門が3つあるらしく、そして詳しい所は分からないが戦力的にはアダム・カドモン2人以上推奨らしい。
また、地図は人海戦術により明日には埋まり切るらしい。結構狭い世界だな。
「……近々神気が必要になったりするかも?」
「そう」
玉座を見ながらそう言う彼女に頷く。
ただ溜まって行くより使い道があった方が良いだろう。
各種攻略が進めば、この世界の秘密もいずれ分かる筈だ。
「それじゃあ、地図埋めと開拓、各施設の整備と強化を進めてね」
「……我が主人の仰せのままに」
「あ、それと、今回から分体を置いていくね」
サキュバス分体を配置しながらそう言うと、アムは徐に首を傾げて見せ。
「……私の?」
「……僕の?」
なんかよく分からない事を言われたが、取り敢えずアムを満足するまで撫でてから楽園を後にした。
◇
除染作業をしつつ定期的に黒霧を設置する西方進行は、然したる障害もないままにエルフの里に到着した。
そこで回収されたのは、以前エルフの遺骨から作ったメッセンジャーゴーレムが独自進化した物。
負の化身との戦いで魂に多少の汚損はある物の、敵の狙いがより効率的な生命の刈り取りであった為、被害自体は少ない。
と言う訳で、僕不在時の対応テストの一環として、治療を黒霧に行なわせ、その進化の要因を研究者達に調べさせた。
間を開けず挙げられた報告書によると、メッセンジャーゴーレムは内に莫大な生命力を保有し、複数の魂に似た何かを備えているとの事。
より詳細には、ルテールの里の中枢、聖樹跡地の地中にエルフの骨製ゴーレムを配置した結果、残存した聖樹の機能と信仰により周辺で死したエルフ達の壊れた魂が掻き集められ、骨の器と言う縁に定着。進化した様であった。
そのエネルギー源は聖樹の影響範囲内にある森であり、莫大なエネルギーを操作する演算力の一部は回収したエルフの壊れた魂。
件の回収された魂は、極めて不安定で不完全な魂の装備の様な形になっており、一つ一つが錬磨されたエルフ達のスキルの断片を内包している。
それ等をベースにエネルギーを供給する事で、自立型の魔法、マギクラフト系の仮生物として稼働させる事が出来ている様であった。
その改善についても研究者達に任せた。
拡張された部分を整備する程度の事だが、良い経験になっただろう。
極めて不安定な魂の欠片達は、見込みのあるモノだけ丁寧にフェイクライフの魂魄構造を流用した擬似魂魄化が施され、無い物はアビリスキルとして魂の装備へ加工。
練度と鮮度の都合上記憶再現や性格再現は無理だが、兵士としてはそれで十分である。
エネルギー源に関しては、森から力を得ると言う実に都合の良い性質から木属性の生命力吸収スキルを構築。
莫大なエネルギーを保持する為の構造をアビリティとスキル両方に生成した。
今後の役割としては、天樹神話に組み込まれるエルフ達の……差し詰め生ける楽園の化身と言った所か。
ただのメッセンジャーだったのに、縁のある信仰のランドマークに設置しただけでこの変わり様。中々に面白いサンプルデータであると言える。
それこそ、時間があってしっかり馴染んでいれば、ザングランスの様な現神になっていた筈である。
◇
更に暫くの除染が進められ、プラリネの里に到着した。
里は戦いの影響で酷い荒れ様だったが、丸ごとティルナノーグに取り込み、整備を行なった。
永らくプラリネの民が住み、栄えたその地を取り込む事で、ティルナノーグは歴史を得る事が出来る。
まぁ、少数民族の小さな国を取り込んだ所で得られる神性は微々たる物だが、そう言った積み重ねが大切なのである。
それ以外に得られた物は、精々資材と大した事ない魔道具、後は彼等が魔法の薬の材料としてそこそこ信仰している青色の花くらいだ。
そこから少し北上し、ドラジェの野営地や隠し拠点を幾つか浚って、そう離れていない西部の最も汚染が酷い迷宮を浄化して、取り敢えずの除染作業は終了となった。
暫しの休憩後、入念に周辺サーチを行なって不備見落としの確認をしたら、いよいよアルネアのお宅訪問である。
インフルってました。。




