第1話 より強く
第八位階下位
31日目、朝。
難民保護を終えた今、最初にやるべきは吸血鬼達のその後の確認だ。
差し当たり上から順に見ていこう。
先ずは新参から。
最初はリーリウム・サングレイス。
月煌宮に形成された神話で白月の王に組み込まれたリーリウムは、教育を終えた後、パンデモニウム内の白月宮整備を行なっていた。
宮殿の内部構造はそれぞれの王で自由にさせるし、幾らでも作り変えは出来る様にするが、信仰の強化補正を受ける為にも名前と見た目の変更は受け付けない。
整備が終わり次第、基礎訓練に戻る様である。
他、ヴァンディワル・ドラクル。カルミエラ・ヴァーリン。ウェンザード。フォーレン。アンテの5人も、リーリウムと同じ様にそれぞれの宮殿を整備しており、それが終わり次第基礎訓練に戻る様である。
また、それ等の配下は宮殿の周囲に住居を構え、一つの町を形成する。
そこらへんの管理は、黒霧を副官としたそれぞれの王が担い、宮殿の整備の一環としている。
その他の吸血鬼の町は黒霧が整備し、主に修行用の施設を充実させている。
新たな月の王を輩出する為の町規模施設と言う訳だ。
まぁ、王の平均値が上がるからと王の条件も上がる訳では無いし、神話構築の一環として、今後は王を帝王に繰り上げ、弄月の女帝は神帝へ、亜神へ、引いては神へ繰り上げて行く予定なので、月王は星の数程増えて行って欲しい。
規模感で言うなら、王の指標はおよそレベル750程度、帝王は亜神級の使徒を目指す為にも850程度が理想値である。
同、ダンピールはと言うと、此方は町を吸血鬼達の町とは少し離して置いてある。
やはり、罪に正当な罰を与えても、それが彼等にとってやり過ぎと思える程だったとしても、奪われた大切な人を取り戻しても、凍り付いた憎しみが溶けて消えるには時間と慣れが必要だ。
取り敢えずダンピール達の意向としては、結果的にロードクラスの吸血鬼に一矢報いるどころか、相打ちではあるが勝利を手にした若き英雄達を誇りに、それと同じ道を歩みたいと言う事で、血竜人への進化ルートを提示した。
他方、古参……と言う程でも無いが、サンディアの元からの配下達。
レミア、アスフィン、セバスチャン、リアラの4人は例によって宮殿の整備中。
あくまでも宮殿は信仰を受ける為のランドマークであり、そこに住む必要は無いので、中をどうしようが自由である。
他、6体の魔獣は、月王に倣って鈴王の称号を与えられた。
しおるんこと汐流无が白の鈴王、怨翳虎が黒の鈴王、猛冥導が灰の鈴王、崩天稜が青の鈴王、塞鋼凱が茶の鈴王、大焦僧が赤の鈴王。
それ等は神話に取り込まれ、此方も霊石等に変わる模倣βコアとして、特別な鈴を与えた。
黒霧が鍛えた神霊金属の鈴に、僕が息を吹き掛けて鳴らした神器の類い。
それを髪留めにしてサンディアの頭に括り付け、ハイツインテールにしてやったら僕の髪もハイツインテールにされた。
後の鬼化魔獣達1万は、月煌宮内にて急速に鈴月姫の眷属化を進めているに留まる。
内何体かは鈴王麾下の幹部候補として育成していく事になるだろう。
これで吸血鬼達は問題無い。
後は血が馴染むのを待ちながら修行を付けて地力を上げて行けば良いだけなので、弱点の謂れは返上としよう。
続けて、新たな弱点、森海の主の神話群の一部、妖精達について。
此方は、西方の侵略と除染作業に同道させており、その成長と教育に関しては取り敢えず妖精達に一任してある。
現状では、注視して見守りだ。
西方侵攻を楽観視するには些か未知の部分が多過ぎるきらいがあるが、それでもそう危険度は高くならないだろうと踏んでいる。
簡単な理屈だが、負の化身がいてそれを潰せる戦力があるなら潰している筈だし、これだけ騒いで来ないならいないと見るのが適正で、仮に様子見していたのなら高が知れるし、負の化身の追加がいたとしても底が知れている。
妖精達は暫し放置で良い。
その代わりと言っては何だが、保留していた他の面々の強化を本日より開始する事とする。
先ずは、森海の主の戦力、1,111体のプラントゴーレム達。
神話の補強という意味合いが強いそれ等はしかし、所詮は自我の薄いゴーレム。レベルは相応に上げて行かないと意味が薄い。
数自体も、サンディアの持つ神話を基本とするなら少ないと言わざるを得ない。
そこで、この1,111体に天殻人と言う種族名を与え、ルメールの神族として新たにデザインする事とした。
見た目はゴーレムからエルフの様な容姿に変え、肌の色は薄い緑。頭部には枝角の様に見える枝を生やした。
その能力は、莫大な生命力と防御力を活かす物。
性質は、木の属性の神霊金属、イロミツタマに準ずる物で、伐られた神木に立つ機神、アルカディアの相似形と言える戦法を基本とする。
強大な生命力を元に肥大、圧縮し、圧倒的な防御力と重量で戦う戦士達である。
頭部の枝角は重力操作系の魔物が持つ角の機構を改造した物で、天殻人はその重量を自在に増減させる事が出来る。
また、肉体の肥大は基本巨人化する様な物だが、それ等も自在に操る事が可能であり、形状を変えつつ肥大化させ、それを切り離す事で木製の武器を作る事も出来る。
戦闘以外での役割は、枯れた地にバケツで水を与える様に生命力を流し込む恵みの分配。それから災害時の救助や治療。後は……木造建築だったら割と自在か。
ルメールの直属配下として使役される予定のそれ等は、ルメールの保有する複数世界の中でも中枢に棲まう者達。各世界の調停の役割を担う白血球……軍勢の不足を補う戦力である。
それ等の強化に利用したのは、ルメールに付与した特殊なスキル、マジックツリードロップを使って作った、高質なエネルギー結晶化スキルで生成された結晶だ。
名前を付けていなかったそれ等に、折角だから神話と関連付けて名を与える事とした。
世界へ恵みを齎らす偉大なる大樹ルメール、その使徒、スカラリウムを生み出すには、相応の特異性が必要だ。
与えられるキーアイテムは、天樹の涙石。
スカラリウムの種族限界値はレベル600を想定しているので、それより上に至る場合は儀式的に天樹の涙石の上位互換……と言うかまぁ劣化させた物が涙石なので通常版、天樹の涙晶を与え、新たな種族天樹人とする。
是等をもって、天殻なる者は枯れ地を憂う天樹の涙、天覆う葉から滴る雫から産まれ出る事とし、葉から零れ落ちた恵みから産まれた彼等は、やがて天樹なる者となって大樹の世界を押し広げる。
与えたスキル名は天樹の慈雨。
まぁ、ルメールが枯れた地を憂いて涙を流す事は無いだろうが、もし流したとしたらそれは酒だ。
体液まで酒、ベルツェリーアとはもっぱら飲み友達である。
ルメール傘下の他勢力、エルフは妖精同様まだ放置で良いし、ユース神性の手前勢力に入るアニスも同じく。
一応アニスの同輩である天武六仙はルメールの傘下に入れて良いだろう。
対して、エイジュの同輩である五大賢者、爺様やザイエ、ミシュカに、エルミェージュの同輩である七聖賢、レイ君やノーレル、ミュリアは、現状保留。
と言うかミシュカに至っては既に竜寝殿に内定しているので、鞍替えには相応の条件が必要だ。ルメールではまだ荷が重い。
……これで賢神が生きていたならば、賢仙達全員がその傘下となり、その卓越した技量、術理をもってサンディアの軍勢にも劣らぬ一大勢力となっただろうに……言っても栓なき事である。
また、天武六仙の加入に伴い、マハーカとカーナシアの弟子60名の強化を行ない、他の仙人、ナーヤ、グルガス、ビアジーヌ、アニスに30名ずつ弟子を取らせる事とした。
彼等六仙は、アニスがユース神の神性を持つ手前、それに匹敵する神性と神話、世界を与えられる事になるだろう。
当然その直属配下である30名は彼等の使徒となる。並大抵の努力では至れぬ地平へ挑む覚悟と意思とセンスがある者を選抜しよう。
いなかったら鍛え上げれば問題無し。




