第1話 山の先
第四位階上位
全員、初めての激戦だったのではないだろうか?
特にクリアなどは、後ろでおろおろしていて最後にとどめを刺しただけなのに、疲れ切った様に前衛達と一緒にへたり込んでいる。
無傷の四人は流石に疲れた様だが、座り込む様子は無い。
休めば良いのにね。
「全員お疲れ様、良い戦いだったよ」
そう声をかけ、怪我人に下級ポーションを配った。
自然回復でも十分だろうが、まぁ、アルルジュースのつもりで飲んで貰おう。
「各自休憩する様に。警戒はこの子達がする、僕はこの先を見てくるよ」
付いて来ようとしたアヤとセンリを制して配下の皆に声をかける。
リッドで完全に封鎖してしまえば警戒も何も無いが、他のプレイヤーやノンプレイヤーキャラクターが来たら困るので警戒させるに留める。
壊れた掘削機兵は、取り敢えず僕が回収しておいた。
このまま頂いてしまっても文句はでないだろうが、ちゃんと後で話し合いをしよう。
「ウルル、行くよ」
「ウォン」
「あ、あたしも行くわ!」
まぁ、万が一があっても白雪なら足手纏いにはならないだろう。
風の中に混じるのは土と草、そして水の匂い。
洞窟の中に人工的に作られた朽ちかけの階段を登り……。
「むぅ」
「ウ?」
「塞がってるわね……」
出入り口が大岩に塞がれていた。
ウサギ穴くらいの大きさの隙間から風が吹き込み、外に繋がっているのが分かるが……。
「どうする? 壊す?」
「崩落すると面倒だから錬成で穴を開けようか」
大岩に手で触れて、錬成を使う。
適当に弄って後々に壊れると殊更面倒なので、しっかり洞窟と繋げ、それなりに装飾をつけて出入り口っぽくしておく。
最後に遊び心でスノーのシンボルマークもつけておく。
洞窟が開通し綺麗に見える様整えてから、月が照らす外へ出た。
「ふむ、新ステージ、か」
「「?」」
「何でも無いよ」
出口は山の一合目程か、どれ程の間塞がれていたのかはわからないが、道らしき物が森の中へ続いているのが見える。
なだらかな坂にある森はかなりの規模があり、右、西側は何処までも続く深い森、左、東側は湿地の様な森が広がっている。
その境目付近に道があり、湿地を大きく迂回して草原、次いで大きな街へと続いている。
馬などの移動手段が無いプレイヤー達が街に辿り着くには、道の途中で何泊かする必要があるだろう。
或いは湿地を直進すれば一日で辿り着けるだろうか?
振り返って山の上を見ると、反対側よりも少し登りやすそうな傾斜になっていた。
ただし、吸血姫の服を着たまま耳を生やして確認すると、アイススピリットらしき気配を感じ取った。
それもあの島で見た奴らよりも格段に強い。今の僕なら登頂も可能だろうが、それはまた今度にしよう。
ある程度の確認も終えた、特に危険な事も無さそうなので、此処までにしておこう。
「戻るよ」
「ワウ」
「うん」
鉱山街には、山の反対側へ続いているらしいトンネルがある。そのトンネルはプレイヤーが入ろうとするとフィールド制限に引っかかって通れなかったらしい。
今見た道は、そのトンネルから続いているのだろう、そして、解除されたフィールド制限はおそらく、トンネルの出入り口と洞窟の出口だ。
まぁ、トンネルを使うには通行料がいるので、トンネルのフィールド制限が解除された事を知らないプレイヤー達が解除された事に気付くまでは多少の時間がかかる筈だ。
王城での祝宴もあるので、プレイヤー達が気付くのは早くとも3日後程になるかな?
それだけあればプレイヤーのレベルも上がって、この広大な湿地もとい沼地でもやりあえるくらいの強さになるだろう。
まぁ、足の取られる泥の中でどれ程戦えるかは未知数だが。
◇
「それじゃあ皆、今日はもう帰るよ」
空洞へ戻ると、既に全員が武装を整えていた。
時間も遅く、何時でも出発出来る様なので、直ぐに街へ戻り明日へ備えて休む事にした。
明日は午前の内に色々と片付けなければならない。
皆にも手伝って貰おうかな。




