掌話 頂きを見上げて 十二
雷が世界を覆う。
迸る雷撃が大地を穿ち、炸裂した紫電が大地を這い回る。
この世の物とは思えない光景、それが映し出される画面を、全員が食い入る様に見詰める。
『逃げ足の早いこって』
『弾丸形成・集雷弾』
『……リフレクションシールドはぱーぺき』
『それはずるでしょ〜?』
『……なら構築から維持修理までやってみるべき』
雷鳴に掻き消される様な呟きが広場に流れる。
雷となって高速で移動する化け物に、その移動先を予測して置き弾丸する化け物、魔法を自分で作ってるらしい化け物、雷を斬る化け物。
相対する敵の、やっている事の、そのあまりの次元の違いに、向けられるのは羨望の視線。
聡い者達はどうすればその領域に近付けるのか当たりを付けていた。
「ほんとにすげぇな」
「ね」
カナタとフウカも、2度目となるその邂逅に釘付けになる。
あの戦いを目撃した後、強くなる為にある程度調べを付けていたからこそ、以前分からなかったより多くが分かる。
「闘気法……の発展の魔纏術、それに雷っぽいから……属性変換をしてる、のか?」
「術式補完の分野かな、物質形成って感じじゃないし、構築したマナ製の半物質を維持してる?」
まだ初歩を履修しただけの2人に詳しい事は分からないが、その足跡だけは見えている。
その2人だけでなく、あちこちから考察の囁きが漏れ出でる。
それが、この塔の周辺に集まった者達の練度の高さを明確に表していた。
◇
コウキは塔の最上階から空を見上げる。
最上階に立つ12名全員が、戦利品を捨て置き、それを見上げていた。
——当主は化け物だった。
一度の交錯で分かる、異常な練度。
人とは思えぬ反射神経。
正確に人を配置する鋭い先見。
その威風堂々足る立ち居振る舞い。
武力、智慧、美貌すらも、その全てを持つ化け物。
我等が偉大なる鈴守の当主足るに相応しい、どれか一つ取っても万民を傅かせるに値する怪物。
仮に天が人に二物を与えぬと言うのなら、全てを持つ彼女は正しく、天そのものだった。
そんな彼女が育てた彼等が並大抵である筈がない。
まるで技の全てを見せ付けるかの様に、空舞う英雄達は大技を使わない。
降り注ぐ雷を避け、撃ち払い、飛翔する雷の獣を斬り捨てる。
冴え渡る技の数々は、その大半が既知の道の果てだった。
あの技は極めればこれ程の威力に、あれはこう使えばこんな効果を。
見れば、見るだに、技の果て。
数十分も続く激戦の最中、たった一度のミスも無い。
刃が閃けば雷光を引き裂き、抜ける様な涼やかな響きが雷鳴を追いやる。
暗がりを乱舞する雷の森は拓かれ、最後に残ったのは、かつて雄大だった巨鳥。
「……終いだ」
そんな誰かの小さな囁き。
次の瞬間、逃げ道を塞ぐ様な矢と弾、斬撃が降り注ぎ——
——巨鳥は青い粒子となった。
不意に日が差す。
雲に覆われた空が切り裂かれる様に裂け、死した巨鳥が天に登ったかの様に空を青く染め上げる。
差し込む日差しに照らされた29の武器は、まるで太陽そのものの様に輝いていた。
それは未だ遠い道標。
それぞれの道の果て。
遥かな29の輝き。
湧き立つ思いに奮い立つ心。
輝きは遠い、されど成せる事はただ一つ、遥かなそこを目指して邁進するのみ。
コウキはじっと空を見上げた後、振り返り、我が道を見据える。
例え同じ道でなくとも、辿り着くべき場所は見えた。
一歩、前に出る。
変わらない一歩。
ただ踏み出すだけの一歩。
それでも、確かに意義のある一歩。
——遥かに遠い、空の頂きを見上げているが故に。
気付けば7周年目。
これからもごゆっくりお楽しみ頂ければ幸いです。




